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翌日。額のハートマークは少し大きくなっていた。
前髪で隠せなくはないがハッキリとハートの形だと判るピンクのアザ。
人為的にそうしたとしか思えない落書き。
気になるのは判るが皆ちょっと触り過ぎだってくらいベタベタ触る。
「肉って書かれるよりイイじゃない。」
何それ。
「へのつっぱりがいらない人よ。」
言葉の意味が判らん。
「包帯でも巻く?」
大袈裟だなぁ。誰も僕の額になんか興味ないよ。
そんな事より紹実さん。ノトさんが離れてくれないので頼みます。
登校中合流した桃さんが
「何だそれ。中学生の悪戯か?」
と額をペチペチされる。
「してたまるかい恥ずかしい。」
中学生の友維が全力否定。
「取ってやる。」
と桃さんが額を擦るが当然取れはしない。
「何だこれ。痣か?」
昨日の夕方くらいに付いて朝になったら大きくなっていた。
「何それ大丈夫なんか?怖いやつじゃないのか?」
桃さんが実はオカルト系にとても弱いのを知った瞬間。
本人猫娘で魔女と一緒に過ごしていながらオカシナ話だ。
桃さん曰く
「竹刀で叩けるかどうか」
で怖いか怖くないかを判断するらしい。
「紹実さんは何て言ってたんだ?」
「ほっときゃ消えるでしょ。って笑ってた。」
姉がそう言うから僕も安心して何もしていないわけだが
彼女が笑ったのは別の意味があったのだった。
それは通学途中から僕自身は勘付いていた。口に出さなかった(出せなかった)が
すれ違いざまに明らかに僕を見る人がいる。
いるって言うかみんな見る。
顔を向けて凝視するのではないのだが、目線だけコチラに向ける。
見られているなんて自意識過剰にも程があるなと思いながらも俯いて学校に着く。
だかやはり勘違いではない。クラスの皆が一斉に僕を見た気がした程だ。
普段誰も気にも留めないのに。僕は指輪の影響で影が薄い筈だ。
碓氷先生も教室に入って教壇に立ち全員を見回しながら
僕と目を合わせて止まった。
「ふはっ」と咳き込んだように誤魔化したが吹き出しただけだ。
「さーて休みの奴いるかー」
いつものように出席簿を広げるがそれでもチラチラと僕を見た。
明らかにニヤニヤしている。
朝のホームルームが終わると、碓氷先生は
「おい魔女っ娘ども。」
「教室で魔女っ娘とか言うなっ。」
「いいからお前達ちょっと来い。」
と、3人の魔女を呼びつける。
「奴(理緒)のアレどうした?」
と自分の額を指しながら聞いた。
「昨日の夜かららしいのよ。紹実さんもほっとけって言ったから無視してるけど。」
「そうか。ならいいんだ。」
とさらにニヤニヤしていた。
「何か知ってるなら話せ。」
「さあな。お前らはいつも通り王子様の唇だけ心配してればいいんだよ。」
と笑いを止めずに去ろうとする。
が態々僕の席の前までやってきて頭を撫でながら
「お前もいろいろと大変だな。」
とニヤニヤしながら呟いて教室を出た。もうずっとニヤニヤしてるなこの教師。
胡散臭いと言うと失礼だが最初からそんな印象しかない。
美人なのに勿体ない。
「何ニヤニヤしてんの?」
さあ?
「さあじゃないでしょ。薫ちゃんに頭撫でられて嬉しかったんじゃないの?」
蓮さんは何で怒ってるんだ?
「全くホント誰でもいいんですかあなた。」
藍さんまでイライラしてる。
どうしたの2人共。
「別にどうもしないわよっ」
と蓮さんに腕を叩かれた。結構強めに。
いたっ。何で。
「ふん。」
何が何だか判らない。さらに判らないのは1時間目が終わり休み時間になると
蓮さんと藍さんが僕の前までやって来て
「さっきは叩いてゴメンね。」
「強く言って悪かっと思ってます。」
と普段では有り得ないくらいな素直さと言うか気持ち悪いくらい謙虚に謝った。
い、いや。そんな気にしないで。
「うん。」
「それで、その、あのね。」
なんだこのモジモジ。乙女か。
「あ、頭ナデナデしていい?」
はあ?
「私が先ですよ。」
「何でよ私が先に言ったんだから私が先よ。」
何揉めてるんだこの人達。
と、後ろから誰かがポンと僕の頭に手を乗せた。
葵さんだ。
二度三度軽くポンポンと
赤くなって他所を見ながら撫でるように叩いていた。
「何やってるのよどさくさに紛れて。」
と蓮さんが僕の頭を撫でる。
「早く変わってください。次私ですからね。」
と藍さんにも撫でられる。




