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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
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「ちょっと冷やした方がいいですよ。腫れてきました。」

藍さんが冷凍庫から氷を取り出した。

僕も台所に行って氷袋を用意する手伝いをする。

頬が痛い。

僕はこの後蓮さんにキスをされる。


その前に葵さんと蓮さんとの間でちょっとしたやり取りがあったらしい。

「しかしまあキレイにヒットしたな。」

「あんなに無防備だなんて思わないじゃない。受けるか避けるかするでしょ普通。」

「あれじゃ簡単にキスされるわけだ。今でも簡単にされるんじゃないかな。」

「さすがにそれは無いでしょ。狙われてるの判ってるんだし。」

「多分私や蓮が迫っても逃げも避けもしないと思う。」

「そんなバカな。」


そんな会話があった。

蓮さんは僕に近寄り、腫れた頬を見て手をあてがうような仕草(本当に触ったりはしない)をして

「ごめんね。痛かった?」

まあ。うん。でも蓮さんの手は大丈夫?少し冷やす?

その手を取って確認すると少し赤い。

「え?ああうん。大丈夫。」

ちょっと赤いよ。冷やした方がいい。

彼女は一瞬僕を睨むように見て、それから顔を近付けた。

頬の具合でも見ているのだろうとかそんな事しか考えていなかった。

彼女が僕にキスをするなんてどうして考えられよう。

本当に一瞬、唇が重なる。同時に僕を突き飛ばす。

「なっ。」

蓮さんは袖で自分の口を拭いながら

「何でキスさせんのよっ。」

ええっ。

「避けるか逃げるかしなさいよっ。何やってんのよっ。」

そ、そんな事言ったって。

「こんな事でファーストキス使っちゃうなんてっ。」

うわあごめん。

もう殆ど泣きそうだった。

理不尽な言い掛かりに対してではなく、何も考えない自分が情けなくて。

突き飛ばされた僕を受け止めてくれた藍さんが包むように僕の頭を撫でてくれた。

「今のは理緒君悪くないですよ。」

「ホントにする奴があるか。」

葵さんも呆れていた。

「だって避けるとか思うじゃない。なんでされるがままなのよ。」

「その前に思いっきり殴ってるのよ?普通警戒するでしょ。」

「この子がそんな事考える筈ないじやないですか。」

「ほら泣いちゃったじゃないですか。」

実際、ほんの少し涙ぐんでいた。

僕は何てバカなんだろう。

こうして2人の女子高生のファーストキスを奪ってしまったのも

僕があまりに無警戒で無防備だからだ。

こんな事だから彼女達は僕を守ろうと大変な思いをしなければならない

「私とキスするのそんなに嫌だった?」

違うよ。そんなんじゃない。これからはもっと注意するよ。もっと警戒する。こんな

と言い掛けたところでもう一度蓮さんが僕を抱きしめた。

さっきより強く。

「何も変わらないで。警戒なんてしなくていい。」

どうして。

僕がもっとしっかりしていれば蓮さんのファーストキスは守れたんだよ。

「ううん。私、本当は理緒君とキスしたかったの。だからいいの。」

「警戒なんてされたら次からできなくなるでしょ。」

本当に素敵な人だ。

それが本心でない事なんて僕にも判る。

僕が迂闊に人を信用しなくなることを抑えようとしているだけだ。

「まったく何イチャコラやってるんですか。本当にイヤらしい人達ですよね。」

僕は何も言っていない。

「何よホントは藍ちゃんだってしたいくせに。いいのよ別に。たまになら貸すわ。」

「何ですか自分の物みたいに。それは私のオモチャなんですよ。」

「全くお前らは。」

「葵ちゃんも借りたい?」

「いや、私は。」

「何よ遠慮しなくていいのに。」

「私の体はとっくに理緒のものだから。」


葵さんの一言に二人とも言葉を失った。

僕も失った。

3人で真っ赤になっていた。

「いつの間にたらしこんだんですかっ。ほんっっとうにイヤラシイ。」

なっなっなっ何もしてないっ。

葵さんも早まった事言わないでっ

「何を言ってる。あの日指輪に忠誠を誓ったんだ。」

「所有者のこいつに従わなくてどうする。」

主である僕に向かって「こいつ」とか言っている時点でもう。

「ああびっくりした。」

「このタイミングなら誰でもそっちかと思うじゃない。」

僕があまりに無警戒なのが露呈しただけの日だった。

殴られ損だ。

変わるなと言っておいて「だらしない」とか言い出して

結局「私達がしっかりしましょう。」と話がまとまる。

それにも関わらず、翌日僕はあっさりと一人の少女にその身を捕らえられる。


その日、僕達は朝から出掛ける事にした。

夏休みももうすぐ終わってしまう。無為に過ごすのはやめようと。

でも何処に行くとも決めていない。

「とりあえず涼しいところで休みましょう。」

とか家を出る前から言う。

思い起こせばその時点で気付くべきだったのだ。

じゃあ出掛けなくてもいいような。

なんて思ってしまうのは悪い癖なのだろうかくらいにしか思わなかった。

家を出てすぐだった。いや多分家の前で待ち伏せしていたのだろう。

他所からは見付け辛い筈の家の前で待ち伏せ。

中学生くらいだろうか。それとも高校生か。

一人の少女が仁王立ち。

「魔女だ。」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 理緒君は(も)ほんとにいい子だ…… それは殴られもしますし惚れられもします。 それは本心だよ、と言ってあげたい! 蓮さんの不器用っぷりにキュンキュンしてしまいました。
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