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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
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やがて山車が神社の向こうに到着したようで、上に乗っていた小さな巫女達が

神楽殿に登り舞った。何を収める舞なのだろう。

とてもかわいらしくて、とても美しい光景だ。

その途中、携帯が震えた。桃さんからだ。

隣の神流川さんに宮田さんから電話なんでちょっと抜けるね。と人混みから抜け出た。

どうしたの?

「おう理緒君?小室だよ。」

「桃がぐずってさー。ちょっと迎えに来てくれないかなー。神主の家には行った事あるだろ?」

と切れた。

ぐずって?何?迎えって何だ。神流川さんに「ちょっと行ってくる」とだけ言って

今朝紹実さんと来た家に行くと、先程の姫と呼ばれた神巫さんが出迎えてくれた。

「どうぞ。あがって。中に居るから。」

はい。お邪魔します。ぐずってって言ってましたけど。

「見れば判るよ。」と微笑んだ。

賑やかな大広間を横目にどうやら居間に案内されると

中には小室さんと先程の巫女さん。

そして浴衣姿の宮田桃。

「ほら来たぞ桃。」

「ホントに呼ぶこと無いでしょ。何やってるんですか。」

真っ赤になった宮田桃はともてかわいい。

「どうよ理緒。」

え?あ、はい。

「それだけ?」

いやあの、ちょっと見惚れて。

「おおう。判ってるなお前。」

「んっにゃに言ってやがるお前までっ。」

お祭り行こう。

僕は右手を差し出した。

桃さんは中々手を取ってくれなかったが出し続けた。

小室さんがポンと彼女の背中を押して、ようやく手を取ってくれた。

握手と言うより手に手を乗せるくらいの軽さ。

「いいなー桃。」

「いいなー。」

「いいわねー。」

「や、止めてくださいお二人も。」

彼女は慌てて僕の手を振り解く。

それでもお祭りには一緒に行ってくれる事になった。

「歩き辛い服だな。」

とボソリと聞こえた。薄暗い道だったからまた僕は手を差し出した。

「あ、うん。」

今度は素直に手を乗せた。彼女の手を取り、ゆっくり皆の元に戻った。

まずは桃さんの浴衣姿の破壊力に皆が褒めちぎった。

それから「で、今度は桃が手繋いでんのか。」

夜道で僕が転ぶと危ないからって宮田さんが。

「お前がそれ言ってやれよ。」

「じゃ、じゃあ次はワタシがアンタの手取ってあげるわよ。人混みで迷子になったら大変でしょ。」

「良かったですね桃さん。リナさんがお手手繋いでくれるそうですよ。」

「ちがうっ。」


3人の舞は素敵だった。素晴らしかった。

どうしてなのか、涙が零れそうになった。判らない。

それから階段を降りて、公園で屋台を楽しむ。

とても不思議な気分になったのは、おそらくその参加者達による。

露店に立つ者のその殆ど。参加者の中にもたくさん。

何とも言い得ぬ、悪く言うと「不気味」な雰囲気。

いや恐怖や嫌悪感ではない。

ただ「違う」。違和感って言葉がいちばんしっくりくるかもしれない。

「魔女」ではない。だからってクラスメイト達のような「人達」とも少し異なる何か。

宮田桃と初めて会った時に感じた違和感と同じ。

そしてその理由は三人の女性に出逢い判明する。

魔女に囲まれて屋台を堪能していると突然1人の女性が

「おうっ桃。」と声をかけた。

「あ、姉ちゃん。帰ってたんだ。」

「さっき着いた。てお前浴衣かこのやろう。色気付きやがって。」

「って事はその子が紹実の弟か?」

え?ああはい。

「よしこい。」

と、返事も待たずに手を取られた。

魔女達も慌てて後を付いて来てくれた。

屋台の一つの裏手に回ると女性が2人ベンチで休憩していた。

「梢っ椿っ。見ろっ紹実の弟連行してきた。」

獲物を捕まえた猫が飼い主に見せびらかせて自慢しているような。

「また誘拐かよっ」

「そういやあの時もそうだったなぁ。」

誘拐犯かこの人達。

「で貴女達が魔女っ子ね。」

「魔女っ子って。」

「いやいやゴメン。やっぱり本物は雰囲気あるわ。」

「ホント、でも紹実ちゃんみたいにはなるなよ。」

この人達も三原紹実を知っている。

「お前の姉ちゃんには随分と酷い目に合わされたんだぞ。」

そ、そうですか。

「おう。だからちょっと待ってろ。」

宮田さんが「姉ちゃん」と呼んだ女性が数分姿を消す。

「まったく杏ちゃんはいくつになってもコレだ。」

「ホント、アレだ。」

どれだよ。

「あれ?桃じゃん。」

「こ、こんにちは。」

「なんでそんな後ろでこそこそしてんだよ。」

「浴衣かお前っ。」

「い、いいだろ別にっ。」

どうやら知り合いのようだ。桃さんが改めて皆を紹介している。

雪女の栄椿(さかえ つばき)

絡新婦の柏木梢(かしわぎ こずえ)

この人達か、紹実さんの言ってた相手って。

「皆かわいいなー。イイナー女子高生。やり直してー。」

「おばちゃんみたいな事言わないの。」

「で、理緒君はどの子が本命なんだね?」

はい?

「皆はどうなん?この子の取り合いでバトルとか勃発しないん?」

「魔女の戦い見てぇ。」

「何かホントちょっと前の私達見てるみたい。」

「ねー。」

小室さん達も同じ事を言っていた。

時代がどうあれこんなおかしな状況が有り得たのだろうか。


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