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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
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02

家はとても静かだった。

部屋がとても広く感じてすぐに判った。

僕は捨てられた。

何を探すでもなく、家の中をウロウロとして

夕方になって暗くなってたのも気付かずずっとフラフラしていた。

ドアの開いた音がしても、

帰って来た。とは思わなかった。

知らない人。

「遅くなってごめんなさい。」

車に乗せられ母の知り合いの家に向かうと言われた。

どれくらい揺られていたのか寝てしまったので判らない。

起こされ、車から降りると田舎の一軒家。

出迎えたのは素敵な女性だった。

「こんばんは。私は御厨絹代(オズ キヌヨ)。よろしくね。」

「あなたは今日から御厨理緒オズ リオ)。」



体育館での入学式が終わり、それぞれの教室へ。

担任が現れ自己紹介をする。

碓氷(ウスイ) (カオル)だ。これからよろしく。」

僕が頼ろうとした「薫ちゃん」。

事務的な説明と書類をいくつか渡され

高校生としての自覚をどうのこうの言われ今日は解散。なのだが

「理緒。あと宮田。少し残れ。」

僕と共に呼ばれた「宮田」。

彼女こそ朝僕を助けてくれた女子。

宮田桃(ミヤタ モモ)

薫ちゃんは「すぐに戻る」と言い残し教室から出ていった。

「お前あの先生とどんな関係なんだ?」

関係?



御厨理緒

これがその日からの僕の名前。

絹代さんは僕に「おばあちゃん」と呼ぶように言った。

母親ではなく?

「毎月病院に行って薬をもらっているような歳よ。」と笑ったが

とてもそうは見えない。

「おばあちゃん。て呼んでくれると家族って感じがして好き。」

家族。

絹代さんも魔女だったが

母の知り合いなのだからそうだろうなとは思った。

「首から下げている指輪。それは外さないでね。」

この人も母と同じ事を言う。

幼い頃病気になった僕に、母が授けたお守りの指輪。

以来ずっと、殆ど外す事なく身に付けている。

彼女は僕に「魔女になれ」とは言わなかったが

母と同じようにたくさん本を読んでくれた。

判らない事があると祖母は喜んで教えてくれた。

小学生の殆どの時間を祖母と過ごしていたと思う。

心地良い祖母との生活に対し

学校はとても退屈だった。

転校生としての興味を抱かれる事も無く、

以降も誰かららも相手にされなかった。

イジメを受けなかっただけ幸いなのだろう。


中学2年の冬休み。

年が明けてすぐ。

「薫ちゃん」が現れた。

僕の今後の進路について話をしたいと言った。

他所の県の名前も知らない土地の、知らない高校を勧めた。

何のスカウトだろう。

「そこそこレベルの高い進学校だからしっかり準備するように。」

既定路線のように話が進み、

学校のパンフレットを置いて早々に引き上げた。

祖母が親しみを込めて「薫ちゃん」と呼ぶその女性について

僕は何も知らない。

ここから通える高校と大学に行くつもりだと祖母に告げると

「それは無理ね。理緒はいつまでも引き篭もっていられないわ。」


理由は判らない。

ただ言われるままそうした。そうするしかなくなった。

半年後の6月の暑い日。

学校から帰ると祖母からの返事が無かった。

不意に、あの日が蘇ったのはその静寂が似ていたからだろう。

僕はまた捨てられた?

でも家の中は何も変わっていない。

窓は開き、出したばかりの扇風機が回っている。

胸騒ぎがした。

カバンを放り投げ裏の畑に走ると、祖母が倒れていた。

まだ息がある。

救急車を呼んで一緒に病院に行って

だが結局、その後一度も目覚める事なく亡くなった。

告別式の夜。薫ちゃんが現れた。

「絹代さんは自分がもう長くないのを知っていた。」

「だからお前の将来を考えて。」

彼女は涙を拭おうともせず

「荷物をまとめろ。」



「え?薫ちゃんと同棲しているのか?」

同棲?

いや違うよ。

「おう待たせたな。」

その薫ちゃんが戻る。

「じゃあ行こうか。」

行くって、何処へ?

「何処ってお前の家だよ。紹実さんいるだろ?」

「紹実さんて、お前紹実さんの知り合いなのかよ。」

知ってるの?

「知ってるも何も、朝言った伝説の魔女って紹実さんの事だぞ。」


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