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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
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「ちょっとバカな事聞くけど。」

猫娘の宮田桃の至極真っ当な純粋な疑問。

「魔法って、そもそも何なんだ?」

現代科学の粋を超えた超常現象を巻き起こす力。的な?

「なにそれ。私達天変地異とか起こせないわよ。」

「空中に魔法陣現れて怪光線とか出せないからな。」

「ヒラヒラの服着せてステッキ振り回させるとか変態ですね。」

違うの?できないの?できて欲しいな画的に派手じゃないか。

呆れる三人の魔女の横で

「簡単に言うと、知識と技術。」

珍しく紹実さんが真顔で答える。

「魔女が空を飛ぶのも、見えなくなるのも、習って慣れるを繰り返す。修行って言われるあれだよ。」

実際僕飛べないし。

「魔女ってな、昔から伝えられてきた知識とか技術をそのまま使い続けている一族の事なんだ。」

「知識や技術を教えるのは自分の子が一番早いだろ。だからそうなるってだけ。別に血縁者じゃなくてもいいんだよ。」

「他人にあまり教えないのは、その精神も大切だから。」

「精神?」

「そう。悪用しないこと。まあ若いうちの無茶はよくあるのだけど。」

3人の若い魔女達を見ると

彼女達は目線を逸らしてニヤニヤしている。

「まあ私も若い頃は相当いろいろとなぁ。」

「姉ちゃんからイロイロ聞かされたよ。」

「雪女を震え上がらせたとか。」

「絡新婦から男を奪ったとか。」

「あと吸血鬼燃やしたって。」

何それコワイ。


宮田桃が「魔女」と聞いてもさほど驚かなかったのは

紹実んさわ知っていたからなのだが

良くも悪くも「魔女」の観念が固定されている。

トンガリ帽子に箒に的なビジュアルや

大鍋にトカゲの尻尾的なイメージも抱かずにいる。

魔女と黒魔術は切り離せない。

魔女が黒魔術を使うのではない。

魔女に黒魔術を使う一派があるわけでもない。

本来、魔女と黒魔術は切り離されて語られるべきなのだ。

魔女は、他に呼び方が無かっただけであり

黒魔術を使う者を誰かが「魔女」と呼び混同されたに過ぎない。

やがて魔女とはそのような者達の総称となってしまう。

それはフィクションでありファンタジーでありファッションとしての魔女。

僕の目の前にいる四人の魔女こそが

本物の魔女を継ぐ者達。


「悪魔と契約してとかじゃ無いんだよな。」

「できらたしてみたいわ。」

「いやですよ。魂よこせとか冗談じゃありません。」

「魔法使うとマジックポイントが消費するん?」

宮田桃のこれは明らかな挑発。ただただからかっているだけ。

「うん。じゃあもう、そう。」

神流川蓮は面倒になって語るのを止めた。

代わりに渡良瀬葵が説明する。

「体力と一緒だ。」

動けば疲れる。

活性酸素と酵素の関係を無視して簡単に言うと

負荷のかかった細胞が壊れて

脳がこれ以上の負荷をかけさせないようにする。

これが疲労。

身体を動かす力が体力。

渡良瀬葵の説明は実は魔女としての「一般」とは異なる。

いや勿論カロリーの消費はある。

魔法によっては「30分程度のジョギング」から「50mダッシュ3本分」程度のカロリー消費もあるらしい。

「勉強すると疲れますよね。あれと一緒ですよ。」

藤沢藍の補足説明こそが魔女の本質と言っていい。

魔法の種類や性質にもよるのだが

その殆どは「計算」によって成り立っている。

つまりは糖分は「魔力」の源なのだが

これを言うと目の前の魔女達は決まって

「判っているなら何か持って来て。今すぐ。ほら早く。」


宮田さんがあの時僕を助けられたのって魔女が消えるのを知っていたからなの?

「あの時?ああ入学式のか。いや知らないよ。アタシも始めて見た。いや見えてないけど。」

え?じゃあただ気配感じたから?

「そう言ったじゃん。人が消えるとか普通思わないだろ。」

宮田桃のこの指摘こそが前提となっている。

魔女の「不可視」は光学的な要因ともう1つ。

意識への働きかけにある。

普通、人は「人が消える」事態を想定していない。

突然目の前で人が消えたとしても「最初から存在しなかった」「気のせい」程度で片付ける。

(本当に最初から消えた状態なら探しもしないし)

魔女は経験則と、その特殊な訓練によって消えたと見える(?)姿を認識する事ができる。

目標物から目線をほんの少しズラすだけなのだが詳しくは知らない。

とにかくつまり「魔女は消えた魔女を見付けられる。

僕にそれが出来るのは母と祖母がそうなるように教育していたからだろう。


「ところで。」

渡良瀬葵が聞いた。

「宮田はどうするつもりだ?」

「どうするって?」

「理緒の言い草じゃないが極端に言うと騙されただけだろ?」

「今更何言ってやがる。」

宮田桃は呆れて答える。

「最終的な目的ってのはその「魔女狩り」する連中をぶっ倒す事じゃないのか?」

「話し聞いていたらそのために仲間を集めているのだと思ったんだけど。」

紹実さんは笑った。

あまりに漠然とした「敵」に対して、恐怖や躊躇もあった。

だが魔女ではない彼女の簡単に放った一言が全ての状況を変えた。

「ま、ファーストキスの相手だしな。」

力尽くで奪っておいて。


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