表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Kiss of Witch  作者: かなみち のに
136/141

136

バレンタインデー翌日。

教室の中は「何事も無かった」かのような空気。

あの一日だけの特別な日なのを改めて感じた。

態々やり直す必要があるのかな。

「あるに決まってるでしょ。ホラ先に席に着いて待ってなさい。」

あ、ちょっと待ってて。先に職員室に

「後にしなさいよ。」

はい。

いつ打ち合わせをしたのだろう。

下駄箱で靴を履き替えると、1人教室に行かされた。

そう言えば1人で教室に入るなんて珍しいな。

相変わらず誰にも気付かれていない。

大きな保冷バッグを抱えているのに誰も見向きもしない。興味も抱かない。

しかししばらくしても魔女達は現れない。

何やってるんだろう。

これなら先に職員室に行けたな。

すると委員長が1人教室に入る。彼女はもうとっくに登校していて

委員長として一仕事こなした後だ。

「おはよう。」

おはよう。

「昨日は大変だったね。何か罰とか言われた?」

ううん。大丈夫。お咎めなしだって。

「良かった。停学とかなったら大変だもんね。」

そうだね。ただでさえ出席日数ギリギリだから。

せめて三年生になるまで何事もないように願うよ。

「ちょっと待っててね。」

栞さんは自分の席に戻り、鞄から何かを取り出して戻って来た。

「これ。昨日渡せなかったから。」

あ、ありがとう。

昨年同様、教室が一瞬静寂に包まれ、ザワつきが起きる。

「ひぃっ」と悲鳴のような声も聞こえたが関係あるのだろうか。

「去年も一日遅かったのよね。」

と言ったその笑顔にクラリときた。

僕からもあるんだ。

と、保冷バッグから出そうとする前に予鈴が鳴ってしまった。

魔女達はまだ現れない。桃さんも居ない。

碓氷先生が向かってきた。殆ど同時に皆が慌てて廊下を走って来た。

「あーっもうっ。」

「カオルンちょっと早いですよ。」

「てめぇこんな場所でカオルンて言うなっ。」

てめえって。

「藍ちゃんもリナちゃんもまた後でね。」

2人は隣のクラスに駆け込む。

「理緒君。HR終わりよ。動いちゃダメよ。」

「ったく。何やってんだ。HR延長してやろうか。」

「そんな事したらまた黒板燃やす。」

「するなっ」

何をバタバタと。

「桃ちゃんが来なかったのよ。」

「仕方ないだろっ。昨日帰ってから気になって包みなおしとかして。」

「あーっ栞ちゃん何渡してるのっ。理緒君も何で受け取ってるのよっ。」

「ああっうるせぇ。黙って席着けっHR始めるぞっ。」

「またお前か?またお前が原因の騒ぎなのか?」

なんでだっ

HRが終わり、碓氷先生も「1時間目始まる前に済ませろよ。」と呆れる。

「判ってるわよ。」

「いっその事自習にしなさいよ。」

無茶な事を平気で言うな。

隣のクラスからリナさんと藍さんも来る。

グレタに、桃さん。そして魔女5人。

「間に合った?ねえ間に合った?」

友維が走って現れた。このゴタゴタを眺めに来ただけだろうか。

「じゃあ始めましょう。」

と、全員が廊下に出た。何だ?結局人の居ない所で渡すつもりか?

立ち上がり付いて行こうとすると

「お前はそこに居ろ。」と制止される。

なんなんだ一体。

カナさん1人が教室に戻り、僕の席の前に立つ。

「えっと、理緒君。」

はい?

「あの、これ。」

と、包みを差し出した。受け取ると照れた様子で廊下に戻った。

あ、ちょっ

だから何なんだ。

と、入れ替わるように桃さんが僕の席の前に来る。

「あー、理緒。そのー。なんだ。これ。良かったら。あー。うん。」

と、ぶっきらぼうに片手で包みを差し出す。

あ、うん。ありがとう。

「おう。」

と、同じように廊下に戻った。

そして入れ替わるようにグレタが教室に入る。

何だろう。物凄い茶番を演じている気がする。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ