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紹実さん。いやさお姉さま。
「いやさ?」
僕は貴女に「騙された」と思った事なんて一度も、いやあれ?
何度かあるかも知れません。
でも、でもですね。
僕にとってはずっと素敵な姉です。
最初から、自己紹介で「姉だと思って」と言ってくれたあの日から
僕はずっと紹実さんが本当のお姉さんだったらどんなに素敵だろうと思っているんです。
それは本当です。
でもですね。僕は子供の頃からずっと他人だと思っていた人と過ごしていたんです。
祖母が本当の祖母だと知るまで、僕の中ではずっと他人だったんですよ。
いや祖母の愛情は判っています。ちゃんと感じていました。
でも僕はその人を愛する事は出来なかった。
この人は他人で、きっとすぐに捨てられる。多分そんな事を考えていたんです。
母の事もそうです。
僕は勝手に自分が捨てられたのだと思い込んでいた。
ずっと愛されていたのに、僕は1人でそう思い込むことで自分を守ってきたんです。
紹実さんが僕の姉だと言ってくれるだけで僕は本当に嬉しかった。
でも、だからこそ、僕が紹実さんをお姉ちゃんと呼ぶのは
とても重たいと思わせてしまうんじゃないかと。
「えーっとちょっと何言ってるか判らない。」
なっ
「いや言ってる事は判ったけど、私が重たいって何?」
いやいや紹実さんの質量とか興味な、いやまあ無いですよ。
「あ?最近ちょっと太ったんじゃないかと思ってんなお前。」
誰もそんな事、そうなんですか?
「変わってねぇよっ。」
何もしないのに体重変わらないのもどうかと思いますよ。
仕事忙しいのは判るけどもう少し運動した方が
「うるせぇよっだから魔女っ娘共相手に遊び倒すんだろうが。」
ええっそれでこの前僕の頼みをすんなり受け入れてくれたの?
「他に何があるってんだ。」
「ナニソレ。自分のダイエット目的で私達残したの?」
あ、蓮さんいつきた。
「この前のハグは何だったんだ。私ちょっと感動してたのに。」
葵さんも。
「この人最初からこうじゃないですか。本当に姉弟揃って。」
「ホント良く似た姉弟よね。」
「離れて暮らしていたとか嘘だろ。」
「本当に嘘かも知れませんよ。この人平気で嘘吐きますからね。」
「嘘なんて吐かねえよ。言わないだけで。」
「うわっでた。ホント姉弟揃って救い難い。」
救い難いって酷いな。
「でも安心して。私達がいるから。」
「そうだ。私が面倒見てやる。」
何で上からなんだ。
「お前達今の内にせいぜい言いたい事言っておけ。」
ほら怒った。
「言っていいなら言うわよ。だいた紹実ちゃんは」
止めて。
「何やってるんだよっ食事運ぶだけって言った姉ちゃんが戻って来ないから様子見てくるって。」
友維。
「もうお前も来い。」
「そうだ来い。」
だって女子会じゃ
「理緒君私達の妹じゃない。」
なんだそれ。
三原家の広間には本当に女子だけが集まっていた。
揃って美少女で危うく勘違いしてしまいそうになる。
いや僕も女子なんじゃないかって意味ではなく。
カナさんとリナさん。そしてグレタ。
桃さんと、今回は委員長もいる。そして佳純ちゃんまで引っ張り出した。
「もう結姉も参加したいって大変だったの。」
「止めて。全部持って行かれるっ。」
「絢姉ちゃんが止めてくれたけど何だったら2人で行きましょうとか言い出して。」
「ギャーッそれはダメだ。それだけはダメだ。あのツートップ来たら何もかも終わる。」
「そんなに凄い人なの?」
委員長は知らないんだ。今度紹介するよ。素敵な人だよ。
「それは嬉しいんだけど。そもそも私がこの会に参加して本当に」
「まだ言ってるのかお前。」
桃さんがちょっとイラっとした。
「栞はずっと理緒を守ってただろ。アタシ知ってるんだぞ。」
僕があらぬ疑いを掛けられてクラス中からハブられかけた時の事。
「理緒だけじゃない。この魔女達にだって。」
「ちょっと桃ちゃん。」
「いやこの際だ全部話す。」
「あの時だけじゃない。お前がチョイチョイ学校休んだり。」
「薫ちゃんと仲良さそうにしてたり。魔女共に囲まれてプチハーレム作ったのだって。」
「全部この委員長が理緒達と他のクラスメイトの間に立ってくれたんだからな。」
「知ってるわよそんなの。」
「にゃにぃっ。」
「大体誰が委員長をこの会に誘ったと思ってるのよ。」
「うっ」
「栞ちゃんが学校内で理緒君を守ってくれるからこそ、私達はそれ以外に集中できたんですよ。」
え?それじゃ事情はある程度知ってるの?
「さわりだけね。」
「理緒君が魔女の王子様で、世界中の魔女からその唇を狙われているって。」
うーん?何か違うぞ?
「違わないな。」
「うん違わないわね。」
グレタまで。
「でも狙っているのは今や魔女だけにあらずっ。」
何だ?
「妖怪猫娘やら何と神の子までもがその身を狙うのであった。」
どうして友維がノリノリなんだ。
「だって私は何がどうなっても妹って立場があるからな。ふふん。」
「どんな勝負するにせよ妹の私を味方にすると何かとお得よ?」
「アレだよ。私甘いものとか好きだよ。あと猫グッズ。」
こいつ買収する気か。
「まだ秘蔵の女装写真とかあるし。」
「何それ。全部見せなさいよ。」
「女装?理緒君て女装するの?それを写真撮らせてるの?」
ひぃっ。