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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
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予想外なのか予定通りなのか少々歪んで広まった噂のために

1人の剣士が犠牲になってしまった。

何が何処でどうしてそうなったのか必要な部分が削られた。

個人名が明かされていないだけマシだと思うしかない。

問題は、その噂が街を飛び出し

相手が魔女に限定されていない事。

最初の犠牲者である宮田桃でさえも

「最近お前とキスすると強くなるって噂が半端ねぇ。」

何だそれ。ちゃんと否定してくれた?

「いや、聞かれてないし。」

ぐっ

「それに多分信じたい奴は多いと思う。」

はい?

「全国優勝できるならキスくらいするって奴はいる」

宮田さんみいに?

「そうだ。しかも武道に限らないからな。」

喧嘩でもいい。スポーツでもいい。具体的にどうって事が無いから余計。

「しかもだ。」

これ以上何。

「相手は女子とは限らない。どうするオッサン来たら。」

ひぃっ。

「心配するな。私達が守ってやる。」

渡良瀬葵の言葉には不思議といちいち説得力がある。

彼女がそう言うならきっと守ってもらえるのだろうと思わせる力。

「そうよ。私達だってキスした仲じゃない。」

「ホントイヤらしい人ですよね。」

「何だお前、アタシが初めてじゃ無いのかよ。」

3人がキスしたのは指輪だからね。

「でもねぇ。私達相手が魔女なら手を出せるけど相手が普通の人だとダメなのよね。」

何で?どうして?ガチムチ野郎に僕のこの唇が奪われてもイイと仰るか。

「非魔女に魔法使うと魔女の資格剥奪されるんですよ。」

暇女とか資格とか知らんがな。

忠誠誓ったのと違うか?

「指輪にはね。付属品の保護は契約に含まれてないわ。」

酷い人達だ。

「ふっ」

宮田桃が吹き出した。

「心配するな。魔女以外の相手だったらアタシが守ってやる。」

イイ人だ。宮田桃はイイ人だ。

もうまるっきり気分は正義の味方なのだろう。そうする事で彼女の正義感が満たされるなら喜んで。

「あらいいのよそんなの。宮田さん巻き込んだら悪いわ。」

「魔女以外に奪われたら自業自得よ。」

なんだと?

「大体簡単に奪われ過ぎなんですよ。」

と藤沢藍が言いがかりを付けた。

「とは言っても要は魔法を使わず倒せばイイだけですよ。」

ああイイ人だ。実はイイ人だ藤沢藍。

「正確には魔法を使った事がバレなければイイ。」

「一緒に住んでるんだから夜襲掛けられる事も無いでしょうしね。」

「どどどど同棲しているのか?」

「ええ。一つ屋根の下。」

「ホントイヤらしい人ですよね。」

「何をやってるんだお前は。」

だから何もしてないっての。


宮田桃は「紹実ちゃんに呼ばれた」と付いてきた。

紹実さんが帰宅すると

「おう桃。悪いな。」

「いえ。絢さんからの頼みですから。」

宮田桃が入学式の日に僕を助けたのは偶然だが

僕を助けるのは偶然ではない。

宮田さんの通う道場の師範が紹実さんの教え子。

紹実さんは碓氷先生にだけではなく、同時にその人にも話をしていた。

「今度高校1年生になる子で、強くて面倒見のイイ子。」が条件。

「1人正義感も剣道も強い子がいる。紹実ちゃんもよーく知ってる子。」

「ああ、あいつか。」

つまり宮田桃は、最初から僕を守るためにそうしていた。

そして次の日から、登下校そして校内でも

ずっと少し離れて見守ってくれていたと言うのだ。

声かけてくれればいいのに。

「いやだめだ。」

どうして?

「私が竹刀担いで近くにいたら誰も近寄らないだろ。」


今日紹実さんが宮田桃を呼んだのは

全てを語ろうと決めたからた。

「明日からは一緒にいてくれ。」

「いいんすか?」

「魔女は魔女しか相手にしないよ。」

宮田桃は魔女以外の相手をする。

竹刀担いで隣にいてくれるだけで予防効果を期待できる。

「わかりました。ちょうど良かった。さっきそんな話していたので。」

後々判るのだが宮田桃の存在はそれほど関係無かった。

僕の存在そのものが魔女以外から認識されないのだから。

宮田桃は「事前に知っていた」からこそ

そのおかしな噂に振り回されただけだ。

「それで。お前の事は皆に言ったのか?」

紹実さんの言葉に宮田桃は返事を詰まらせた。

困ったように僕と、3人の魔女を見渡し、

「アタシは普通の人の子じゃない。」

神流川連が何か言っていたような気がする。

黒猫のノトが宮田桃に擦り寄る。

「アタシは、猫娘なんだ。」


宮田桃は正体を告白した。

「猫娘って実在したのね。」

妖怪。と世間では呼ばれている類の存在。

正体バレると何かあるの?

「なにかって?」

人の子とは付き合えない的な掟みたいなの。

「え?無いけどそんなの。」

そうか。じゃあ別に問題ないよね。

「問題?」

この街に住む彼女のような存在が人の子と交流する事に

制約とか掟とか無ければ僕達の関係は何も変わらない。

「正体バレたら憑りつかれるとか怖すぎるわ。」

「いやいや化け猫とは違うから。」

化け猫と猫娘の違いはよく判らない。

どうでもいい。

彼女が何者だろうと僕達との関係は何も変わらない事さえ判ればそれでいい。


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