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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
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巻き込んでしまって本当に申し訳ない。

留学期間が終わるまで何も無い事を期待していたんだけど。

「でもどうして私が気を付けるの?」

情報なんてどこからどう伝わるか判らない。

少なくともこの街の人は君が魔女なのを知っている。

センドゥ・ロゼが魔女達を個別に狙うとは考えられない。

標的は僕個人だ。

だが「委員会」は違う。

以前魔女に襲われた時に3人の男性が一緒にいた事がある。

その時僕は銃で撃たれた。まさか日本で普通の高校生が銃で撃たれるなんて。

後日センドゥ・ロゼは、その時の魔女からイロイロと聞き出して

一緒にいた男性は委員会や製薬会社と直接の関係者ではないと教えてくれた。

むしろ恐ろしい事だ。

ただ雇われただけの身。その行動は目的達成のための手段でしかない。

現状、センドゥ・ロゼ以外の誰かが雇われている可能性もある。

利根先生以外の魔女狩りはもう存在しないと考えていいだろう。

あれは渡良瀬葵が請け負っただけだ。

事実、もうかなりの期間目の前によその魔女は現れていない。

事情なり事実が伝わったのだろう。

仮に現れたとしても大した問題ではない。

むしろ魔女以外の何者かが指輪を狙い現れても、僕はそれと気付けるだろうか。

「まあ私は誰が相手だろうと問題ないわ。」

神流川蓮が胸を張る。

「そんなの皆そうでしょ?」

「魔女はね、リオが考えているよりずっと強いのよ。」

「本当は、」

蓮さんが続けた。

「本当は魔女を集めて相手をまとめてぶっ潰したいのよ。」

面倒が無くていい。魔女にはそれが出来る。

だが魔女はそれをしない。

現代の魔女は恐怖や脅威の対象であってはならない。

正当防衛を貫くのは矜持。

「そうね。多分リオはその象徴なのよ。」

「だからこそ奴らはアナタを狙うのだと思うわ。」

グレタは核心を突いていた。

僕は餌だ囮だ。

「皆がリオを守るのもそれが理由でしょ?」

「違いますよ。」

「え?」

「一緒にいる口実です。守る必要が無くなった一緒にいられないじゃないですか。」

「はいはい。」

「リオ、あなたはゴチャゴチャ言わずに素敵な魔女達に守れていればいいのよ。」

それも何だか情けないね。


紹実さんがドイツとオーストリアの魔女の協力を得て指輪を譲り受けた。と聞いた。

この指輪は長い間隠され続けていた。

「存在は知っているけど伝説とか物語とかそんなお話よ。」

チェコのグレタは「実在」を信じていなかった。

「どんなお話なの?」

「うーん子供の頃聞いただけで細かい部分は違うかも知れないけど。」

昔々、魔女がまだ黒魔術とは関わっていない時代の話。

ある魔女に子供が産まれた。その子は産まれつきの魔女だった。

強力な魔力は抑制が効かず、両親だけでなく、その村の住人までも脅威の的になってしまった。

魔女達はその子の周囲に結界を張った。

ただ放出されるだけの魔力。

強大な、とは言ってもこのままではすぐに力尽きてしまうだろう。

母親は自分の指輪にまじないを施した。

「この指輪に我が子の魔力を吸わせよう。」


「でもそれが祝福の指輪ってのもオカシナ話よね。」

「まだ続きがあるの。むしろこれからよ。」


その子は指輪の力で魔法を使えない。

指輪を外すと魔力が解放されてしまいあまりに危険だ。

結局制御方法が判らないまま、やがて年を取り、亡くなる。

強力な魔力が封じ込められた指輪は「悪用される事のないよう」封じられた。

月日が流れ、やがて魔女は「悪」と認識されてしまう時代。

魔女狩りによって「魔女」ではない人々が傷付いた。

無実の罪によって虐殺された1人の身ごもった女性。

産まれた子供は今にも息絶えそうだった。

一人の「魔女」がその子を拾い上げ、封じられていた指輪を与えた。

子供は成長し、魔女になる。

そして魔女狩りによって虐げられている人々を救い続けた。

救われた人々は、その指輪にキスをした。

感謝と、希望。そして願い。

「世界中の魔女狩りを止めてください」

しかし自分は本物の魔女ではない。指輪によって魔力を得ていただけ。

指輪の魔力が失せてしまえば、無力。

彼女の元に、1人の本物の魔女が現れる。

指輪に口付けし

「私はこの指輪に私の命を分け与える。」

それは彼女を拾い上げた魔女。

やがて世界中の魔女が彼女の元に集う。そしてその全員が指輪に口づけをし、告げる。

「私はこの指輪に私の命を分け与える。」


「少なくとも、国とか街とか集団による魔女に対する弾圧は無くなったわ。」

「でもこんな話信じられる?」

「実際に指輪を見てなければ信じないわね。」

魔女ではない子供に指輪を与え、アンチ魔女狩りの象徴に仕立てた。

我ながら穿った見方だが、僕の立ち位置と何が違う?

いやむしろ、だからこそ。

紹実んさんが告白した通りじゃないか。ただの囮。

そして歴史を繰り返そうとしている。

「それで、その、指輪を持って救世主になった魔女ってどうなったの?」

「さあ。私が知っているのはここまでよ。指輪がその後どうなったのかもお話には無いの。」

「ちょっとヘンな感じがしたのはね。」

「その物語の終わりは「やがて世界から魔女狩りが無くなる日はきっときます」だったの。」

「こうして魔女狩りは無くなったのです。」じゃないんだ。

もしかしたら魔女に対して差別主義者になるなって意味会いを途中から含ませたのかもね。

「私もそんな事だろうと思うわ。」

「差別されたら辛いでしょ?だから差別をしちゃだめよ。て意味よね。」

「ただその割にお話しの中での指輪が妙にリアルなのよ。」

「態々指輪だのアイテムなんて必要ないでしょ。」

そうだね。救世主になった魔女も生まれつき魔女でイイわけだし。

あ、でも逆に魔女ではない魔女に救われる事で差別的な発想を失くそうとしているのかな。

「あー、普通の人が魔女の力を得て魔女を救うって?」

「そうね。最初から魔女が全部背負って解決してもいいのだし。」

「ちょっと待って。ただのお話だからね?そんなに真剣に語り合わないでよ。」


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