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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
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製薬会社の日本支部において「内部告発」が発生する。

「占い」や「まじない」を根拠とした新薬の開発が政府主導で行われている。

告発者が1人だけならば「馬鹿馬鹿しい」と一蹴されただろう。

複数の部署から同様の告発。いつくかの点が繋げられ、噂がやがて真実としして伝わる。

「スイス本社の人事でゴタゴタがあった。」

「役員数人が日本支部の乗っ取りを計画している。」

「政府の監視組織が天下り先になっている。」

「その天下り先に本社役員が流れた。」

「その団体は本気で魔術を信じ研究している。」

「開発に口を出すようになった。」

ただの噂だ。だが全てが事実だった。

日本支社において出向してきた役員に対する照会が行われる。

本社もその不可解な偏った人事を不審に思う者も現れる。

碓氷先生の指示と、母や縁伯母さんの手回しなのだろう。

巧妙なのは、本社内において一部の社員、役員が

「反社会的な組織」と何らかの関係(資金提供のような)にあると囁かれる。

これらの事案を受け、スイス本社では一斉調査が行われた。

調査結果が日本支社に送られ、来日した役員達は全員強制帰国を命じられた。

だが帰らない。帰れば糾弾される。法的な責任も社会的な制裁も受けるだろう。

選択肢は一つ。

「賢者の石の実証」

証拠を掴み、自分達が正しかったと証明する。

所有者が魔女であるならば

魔女の脅威を世間に知らしめる役目を持つ組織である委員会を利用するしかない。

が、日本の「委員会」は彼らを必要とはしていない。

日本の製薬会社で問題が表面化したきっかけが

「渡良瀬葵の母親の転院」にある。

碓氷先生の言った「渡良瀬を利用した」と言うのは

製薬会社が経営する病院への転院が正式な手続きを経ずにされた事実を

転院前の病院と医師会の機関に報告する。

その上で「委員会」の名前を挙げる。

国(政府)の関係者が便宜を図って転院させたのではないか。と、疑いをかけさせた。

恐ろしい魔女だ。何が恐ろしいって、彼女は事実を語ったに過ぎない事。


日本の委員会って、独自の組織なんだよね?

どうして魔女を狙う?日本人でしょ?

製薬会社の連中が「指輪」を狙うのは判る。

「そんな事言ったら本場の委員会だって何で今更魔女狩りなのよ。」

それは歴史だろう。

人種問題がなくならない。宗教が異なるだけで人を殺すような。

だからこそ、この日本でどうして。

「お前の悪い癖だ。」

何?

「相手に事情があったら黙って滅ぼされるのか?」

あ、いやそんなつもりじゃなくて

葵さんは僕のその悪い癖を見抜いて指輪を奪おうとした。

僕のその隙が葵さんに最低な選択肢を与えてしまった。

「葵ちゃんが怒るのも判るわ。」

「でも理緒君はその事情を聞いて、何とか別の道は無いかって考えたいのよ。」

蓮さんは突然抱き付いてきた。

「私は理緒君のそーゆーところが大好きなの。」

「ええっ」

「何でどうしていつからっ」

「いつからかなんて判らないわよ。私の中で理緒君の存在゛かどんどん大きくなって。」

「何だその三流ドラマの台詞みたいなの。」

「また蓮ちゃんの悪い冗談ですね?そうなんですよね?」

まったくこの人達は本当に。話を逸らす天才集団。

それは多分。僕が真剣になり過ぎないように向きを変えてくれている。

と思い込む事にする。

理由や動機はどうあれ、委員会が魔女を敵視している事実は揺るがない。

そして自分達の正当性と今後の生活を守るために製薬会社の人達は

どんな手段を用いて「指輪」を狙ってくるか判らない。

「理緒はちょっとだけ勘違いをしている。」

碓氷先生は「目的と手段」を実に明確に理解し行動している。

尊敬と言うか、感心するばかりだ。

「結局日本の委員会は製薬会社の連中を受け入れたよ。」

その理由はセンドゥ・ロゼ」

彼は「製薬会社に雇われた身」

碓氷先生がどこまで計算して、あの吸血鬼を利用したのか判らないが

僕の指輪と、そこに集う魔女達を「一網打尽」「一石二鳥」とばかりに標的にすることで

僕達から見た「敵」を一本化してしまった。

「ここへ来て急にシンプルになったわね。」

「これでソイツらブチのめせば終わるんだな?」

「まあそーゆー事だな。」

「理緒君はまだ何か不満なんです?」

顔に出てるのか。

不満。不満はあるよ。

指輪の事はともかく、どうしても魔女を狙う理由が知りたい。

誰かの個人的な恨み?昔魔女に何かされたとか。

それともただの勘違いとか思い込みとか。

それならそれを正さないとまたいつか同じ事が起きてしまう。

ただ僕が考えるくらいだ。碓氷先生がその辺りを調査しない筈が

「してないよ?」

「私のしている事は動機とか心情とか持ち込むと計算できない事があるから。」

「私は相手の事情なんて一切無視するよ。」

「じゃないと私の大切な人達を守れないからな。」

「そうじゃなきゃ渡良瀬の母親だって利用しようなんて思わない。」

グサリと刺さる言葉だった。

「ちょっと止めてください。」

「そうですよ。理緒君はちょっと甘ッチョロイくらいでイイんです。」

「そうだ。それで危なくなったら私が守ってやる。」

「達って言いなさいよ。私達って。」

「知るか。これは私のだ。」

「何です。何なんですか。コレは私のですよ。蓮ちゃんも葵ちゃんも今更ダメですよ。」

「今更って何よ。早い者勝ちなんて認めないわよ。」

また逸れた。

教室に戻って鏑木姉妹に今後の方針について話をした。

2人は「魔女狩り」の対象として狙われる可能性と

僕の所有する指輪の人質として狙われる可能性がとても高い。

グレタ。君もね。

「私も?」


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