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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
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鏑木華奈。

彼女が得意とするのは「結界」の魔法。

それは必要に迫られた結果でしかない。

鏑木カナは「読心術」の出来る魔女。

極めて稀に「魔女の家系」に存在する「技術として以外」の伝承。

本当に「心が読める」のではない。そのイメージが伝わるだけだ。

紹実さんや橘結が僕の頭を撫でる事で読み取る映像(のような何か)を

彼女は手を触れる事無く読み取ってしまう。

「読み取れて」しまう。

意図せずとも、他者の強い感情が彼女の中に流れ込む。

幼い鏑木カナは、それが「どちらの声」なのか判断できず

やがてその事実が周囲に知れ渡り、鏑木カナは孤立する。

「させるわけないでしょ。」

双子の妹、鏑木莉奈。

彼女が肉弾戦や、言葉による誘導魔法を身に付けたのは

ただ姉を守りたいから。

鏑木カナを「悪しき魔女」呼ばわりする連中を残らず叩きのめした。

自らを「恐怖の対象」として目を向けさせ姉を守った。

小さな妹は傷だらけだった。姉の自分は泣いているだけだった。

鏑木カナか結界魔法を習得したのは自らを守るためではない。

大好きな妹にこれ以上傷を増やして欲しくないから。

結果的に、この結界の習得の応用によって

「イメージの流れ込み」の軽減に成功する。

それでも彼女が他者とあまり積極的に関わらないのは

「対面での会話はどうしてもその情報が流れて来るから。」

「でも理緒君は読みとらなくても考えている事顔に出るから。」

鏑木カナは、ずっと僕の体調を心配しているのだと思っていた。

彼女はずつと僕の「本心」を見抜いて声を掛けていてくれた。

僕が「良からぬこと」に思い馳せていると、

彼女は体調を心配するフリをして「止めて」くれていた。

自ら暗い淵に落ちようとする僕に、彼女が手を差し伸べてくれていた。

「多分皆気付いてるよ。言われた事ない?」

そう言われるとそうだね。昨日は蓮さんに怒られた。

僕達2人の会話を聞いていた鏑木リナが

「アンタに気を使って言っているわけじゃないわよ。」

否定した。

「いえ、心配はしているわよ?でも体調の心配をするフリはアンタのためじゃないわ。」

「カナ自身がそれを打ち明けて恐れられるのを恐れているのよ。」

「ちょっとややこしいけど判るわよね?」

判るよ。桃さんが「猫娘」である事を隠していたのと同じ理由。

でも僕はそれも含めて彼女の思いやりだと認識している。勝手な思い込みだろうとね。

「ふん。」


渡良瀬葵は初詣に現れなかった。

1月5日になってようやく三原家に戻る。

メールで「家族と出掛けるから」と連絡を受けていたので

その時はただそれを信じていた。

週末、彼女が頻繁に「ちょっと実家の手伝いで。」と帰っても

「(実家の)お店が忙しいのは結構な事」くらいにしか思っていなかった。

もっと詳しく話を聞いてさえいれば。と思わなくもないが

同時期、いよいよ日本の「委員会」が動き出していた。

とうとう、利根先生以外の「何者か」による魔女狩りが起きてしまった。

碓氷先生はいつになく真剣だった。

「私達の知らない魔女が委員会についた。」

指輪の力がなくても魔女を見付けたのは相手も「魔女」だから。

「ヨシノ、利根先生の立場ってどうなってるの?」

「一応委員会側の魔女だよ。」

利根先生は「対指輪」の専門要員的な扱いにされているらしい。

教師であり、自由に動き回れない事もあり、魔女狩りに手間取っている。

それが本人の言い訳にもなったが、とうとう「別の魔女」の協力を得た。

おかしくはない。僕も以前襲われた。

日本には魔女は少ない。

今まで僕を狙い、事情を知っている魔女以外そう多くは無いはずだ。

「これで理緒君の心配は減るわね。」

どうして?

「ヨシノンが指輪奪う事になってるなら奪われる事は無いじゃない。」

「いや待て。本題はその指輪の事なんだ。」

碓氷先生は恐ろしい事を言った。

「ヨシノ、ンンっ利根先生は指輪を狙ってお前達を襲う。」

「だがこれはそれほど大した問題じゃない。」

何を言っている?

「あの吸血鬼が理緒を襲う。」

プロレスをしろって事?

「いや異種格闘技戦だな。いいな。本気でやれよ。あの吸血鬼手加減なんてしないから。」

「あいつに敵意を見せろ。じゃないと指輪が反応しないから。」

「指輪の力なんか使わせませんよ。」

「今度こそ何があっても守ってみせます。」

これは魔女同士の闘いではない。

ちょっと確認。ロゼ吸血鬼先生は欧州の委員会に雇われていて日本の委員会とは関係無いって。

「さすがだなお前。」

「あの吸血鬼は製薬会社本体に雇われた。」

欧州の委員会は事実上壊滅した。が、その時のコネクションから

委員会から製薬会社に紹介され、雇われた。

僕が夢にうなされた件で顔を見て「宣戦布告」してから三カ月も音沙汰が無かった理由。

「魔女狩り」ではない。その目的は「指輪の略奪」。

「所有者の生死は問わないと言われた。て言ってたわ。」

「覚悟はしておけよ。」

「もう一度魔女と本気で戦いたいと思っていた。って言ってたからな。」


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