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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
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「え?いや。え?何?」

それは宮田桃が「猫娘」だから。

だから、何だ。

どうしてそんな事で自分に線を引こうとするのか。

僕は魔女の子だ。だがその事に一切の負い目は無い。

宮田桃が自分を否定する事は、姉や家族をも否定する事にならないのか?

「まあでも確かに桃ちゃんが猫娘じゃ無かったら私達は出会ってもいないかもね。」

「だから私は桃ちゃんが猫娘で良かったと思ってるわよ。」

「杏ちゃんとトモダチになれたのだって、彼女が猫娘だからってのもあるわよね。」

宮田桃は、宮田杏を「姉として」は尊敬している。

しかし宮田杏が恐るべき存在として認識されたのは猫娘だからこそなのも理解している。

「杏はちょっとやり過ぎなとこあったけど桃はもう少し自分を誇ってもいいかもな。」

橘さんも小室さんも、不機嫌な顔を隠そうともしない僕に向かって説明している。

「だから判ってやれ。」と僕に理解を求めようとしている。

その目線に気付いた宮田桃が突然僕に抱き付いた。

かなり強く締めながら、声を押し殺して震えている。

「あら。理緒君て桃ちゃんともそういう関係?」

も?

小室母は本当に何を言っているのや。

「本当にイヤラシイ。手当たり次第にもほどがありますよ。」

藤沢藍がいつの間にか僕達の後ろで睨んでいた。

「これはアタシんだぞ。」

宮田桃は腕を取ったまま宣言?した。

「違いますね。私のですね。」

藤沢藍が反対の腕を取って言い返した。

「ひゃー修羅場だ修羅場。朝っぱらから。神社の関係者目の前にして何やってんだか。」

「でも理緒君はどっちなの?」

は?どっち?二択?

「二択?って他にもいるのかよっ。」

え?何?他?

「ダメだコイツ。判ってねぇ。」


1月2日も巫女さん達は忙しかった。

蓮さんと鏑木姉妹も合流して魔女が4人と猫娘1人が巫装束とかどうかしている。

午後にはさらに友維が加わり神社と言うよりは魔女の集いなんじゃないのか。

「どうする姫。魔女に乗っ取られたぞ。」

「絢ちゃんだって綴ちゃんと一緒に紹実ちゃんにイロイロ教わったじゃない。」

「まあそうだけど私達別に魔女じゃないじゃん。」

そうなんだ。

「え?何、魔女だと思ったか?」

いやそうじゃなくて、紹実さんに教わったって。

「ああ、まあな。イロイロってもあれだぞ?火を噴いたり壁抜けたりは無理だぞ。」

「何を教わったんです?」

「ん?んーまあ口で説明するのは難しいな。」

「絢ちゃんと綴ちゃんはね、紹実お姉ちゃんに私を守る魔法を教わったのよね。」

また「濁された」。多分、必要に迫られたからそうしただけなのだろう。

「今年は子供達が多くて本当に助かるわ。」

小室母は時折境内にフラリと現れて様子を見て戻ってお茶。

「でもこいつら卒業したらまた忙しくなるからな。」

「卒業してもバイトで来てよ。」

「私は構いませんよ。」

「アタシもいいスよ。」

「え?何2人共、いつの間にそんなに仲良くなったの?」

藍さんと桃さんが競うように返事をしたのを見た蓮さんが驚いていた。

この2人が会話をしている姿を僕もあまり見た事がない。

お互い「苦手」とまでは言わなくともさほど「得意」な間柄ではないのは僕にも判っていた。

それでも「険悪」ではないし、「仲良し」ではないって程度だから無視していた。

しかし今朝、慌ただしい神社で「何をどうしたら」が判らない桃さんを

藍さんが何かとフォローしていた。

「蓮ちゃんの真似をしているだけですよ。」

桃さんはその藍さんに対して「意外とイイ奴」と評価を改めた。

元々勘のイイ子で、1つ言えば3つも4つも返ってくる。

藤沢藍の仕事を先回りして「テキパキ」と動く。

やがて宮田桃に振り回される藤沢藍。

を見ながらニヤニヤしていたら蓮さんに怒られた。

「聞いたわよ。また倒れたんだって?」

倒れた?ああ。うん。まあ、ちょっとね。

「ちょっとね。じゃないわよ。また藍ちゃん泣かせて。」

「今日は桃ちゃん泣かせたんでしょ?」

何で知っている。小室母だな。

「ホンと女泣かせよね。一体何人の女を泣かせてきたのよ。」

意図的に泣かせているわけじゃないから。

「計算で泣かされてたまるかっ。」

ごもっともです。

皆に心配掛けないように頑張ってはいるんだけど。思うように行かなくて。

物事は、僕の関係無い場所で起きている。

僕は結果を知らされ、「今回も無事だった」と安堵するだけ。

一体どれほどの人数で僕に関わりその人生の一部をついや

「へんな事考えるの止めなさいよ。」

蓮さんの指摘に苦笑いを浮かべるしかなかった。

「何よその若い頃のハリソンフォードみたいな顔。」

誰が判るんだ。そんなモノマネしていない。

「ホントに隠し事とか苦手よね。だから皆理緒君を信じるんだけど。」

神流川蓮は何を言いたいのだろう。


1月3日。

早くから橘家を訪れカルタ大会と新年会の準備を手伝った。

三原一家も市野萱一家も揃って新年会に参加する。

僕は「御厨理緒」。

父や母か嫌いなのではない。僕を守って「そうしてくれた」事も知っている。

単に実感が無いだけ。僕にとって、家族と呼べるのは祖母だけ。それだけ。

もっと忙しかったらこんな事考えずに済むのに。

「少し顔色悪いよ。疲れてるんじゃない?」

今日も手伝いに来ていた鏑木カナに心配された。

彼女はいつも僕の体調を気にしてくれている。

ちょっとだけね。でもそんなに顔に出てる?

「うん。出てる。理緒君は流れてくる前に判るよ。」

流れる?

「私、そーゆーの判るの。理緒君魔女だから言っちゃうけど。」


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