表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Kiss of Witch  作者: かなみち のに
115/141

115

橘さんの言う「僕にも関する事」と言うのは

おそらくは「世界に飛び出せ」的な言及についてかと思われる。

言われた張本人は

「今まで引き籠り同然」の生活をしていたのに何を言っておるのや。

妹の友維ならともかく、僕にはそれほどの行動力は無い。

(ことわり)(いとぐち)。」

はい?

「覚悟を決めなさい。」

覚悟って、何の。

え?いやあの頭撫でるのは後でいいですから。何の覚悟なのか

「藍ちゃんにするの?それとも桃ちゃん?」

何?

「佳純ちゃんも理緒君に興味持ってるわよ。まあ私としても理緒君なら安心して託せるけど。」

さっきからこの人は何を言っておるのや。

佳純ちゃんの話が出たからちょっとお伺いします。

紹実さんて橘さんにとって具体的にどうだったんですか?

「どうって何よ。具体的って聞いておいて質問がざっくり過ぎるわよ。」

あ、いや。そのーどんなお手伝いをしたのか。

「うーん。お手伝いって言うより本当に恩人なのよねー。」

継ぐ者が集うのはこの街にあの神社があるから。

その象徴として橘結の存在がある。

その力は対象者の庇護に留まらず、「脅威の対象」にもなり得る。

「まだ絢ちゃんと綴ちゃんともトモダチになる前から。」

「紹実お姉ちゃんと縁伯母様が私を助けてくれたの。」

「そうね、今の理緒君の立場と似ているわね。」

具体的とは言い難い回答だった。それでもそれで納得するしかないだろう。

橘さんは語らない。

多分、いやきっと紹実さんのためだ。

僕が知るべきではないと考えての事なのだろう。

昨日、佳純ちゃんに約束したんです。

どんな事があっても佳純ちゃんを守るって。

「えっ。ナニソレプロポーズ?中学生に早くない?」

さすが姉妹だな。

そうじゃなくて僕の命を

「判ってるわよ。でも理緒君のその想いは佳純ちゃんの重荷になるかもね。」

「理緒君が魔女として活躍する姿を見る方が喜ぶと思う。」

「凄い人でしょ。私この人と仲良しなのよフフン。て自慢したいのよ。」

「大丈夫よ。私がいるから。理緒君はなりたい者になりなさい。」

僕は橘結に約束をした。

橘さんに何かあったら、その時は僕も佳純ちゃんのお手伝いをします。

だから、橘さんはいつまで元気でいてくださいね。

僕はその間に、魔女の修行を積みますから。

橘さんは僕の頭を撫で続けながらとても温かい微笑を見せてくれた。

「絢ちゃんが言ってた気を付けろってのはコレかー。」


深夜、参拝客はさすがに居ない。橘さんは隣で眠ってしまっている。

こうして見るとただ素敵なお姉さん(もしくは妹)にしか見えないのに。

どうしてこんなにも不思議な感情になるのだろう。

恋心と錯覚してしまいそうになるが、そうではない。憧れとも少し違う。

純粋な尊敬。

橘さんの過去を詳しく知っているわけではない。彼女が何をしてきたのかなんて聞いていない。

この神社にとってどんな役割があって、「継ぐ者」達にとってどれほどの重要人物なのかも知らない。

それでも僕は、この人を始めて会ったあの日から

ずっとただただ尊敬している。

この無防備な寝顔の隙をついてキスなんてしたら天罰が下って恐ろしい目に合うに違いない。

「キスしようってんなら止めておいた方がいいですよ。」

うわあぁ

社務所の窓の外に藍さんが居た。

「まったく、じっと姫様の寝顔見つめて本当にイヤラシイ。」

いつからいたんだ。と言うかどうして考えている事が判るんだ。

「姫様疲れているだろうと思って交代に来たんですよ。」

「熟睡しているから家まで運ぶの手伝ってください。」

え?ああうん。

藍さんが魔法で運ん

「ほら、本当のお姫様抱っこですよ。」

少し浮かせて、毛布で包んで僕に抱かせた。

静かに、ゆっくり、橘家まで運んで、他の皆も雑魚寝している広間の開いている布団に寝かし付けた。

「理緒君も少し寝てください。」

あ、でも社務所

「もう鍵締めましたよ。人が居なかったら締めてくれって言われたんです。」

うん。そう言う事なら少し寝るよ。実はかなり眠かったんだ。

「1日以上起きてますからね。私ももう眠くて眠くて。」

シャワーも浴びず、着替えもせずそのまま布団に倒れ込んだ。


翌朝、結構早い時間に目覚めてしまった。

どうにも寝苦しいと目を開けると藍さんが僕を抱き枕替わりにしていたので

窒息しかけていたのだった。

声も出せずにもがいていると隣で丸まっていた桃さんが気付いて解いてくれた。

「女に抱き付かれてる男を見てかわいそうにって思ったの初めてだ。」

あまりにシミジミ言うので笑ってしまった。

それでも藍さんは起きない。相当疲れているのだろう。

まだ寝かせておいても構わない時間だろう。

桃さんと居間に行くと大人達は全員朝食を摂っていた。

「もう少し寝ていてもいいのに。」

いえ。充分休みましたから。

「桃ちゃん今日もお手伝いとてくれる?」

「はい。いいですよ。」

「絢ちゃんが着てたやつが合うんじゃない?」

「合うって?」

「巫女装束。」

「はあ?何でアタシが。アタシは境内の掃除とかしますよ。」

「杏は着た事無いんだから自慢できるぞ。」

「え?いやでもそのいいんですか?アタシみたいのが。」

みたいのって何。

つい口に出してしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ