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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
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行列が無くなり、丘の道に人影が見えなくなったのは20時を回っていた。

橘家に戻ると揃いも揃ってグッタリしていた。

参拝が滞りなく行われているのは皆の力があってこそ。

「理緒君もお疲れ様。」

戻った僕にお茶を淹れようとしてくれた橘さんを慌てて制した。

僕しますよ。ちょっとだけお節つまませてください。

そしたら社務所に詰めてますから皆さん休んでいてください。

「理緒君1人で境内には置けないわよ。」

ああそうか。不便な身体だな。

でも少しの間なら

「ダメよ。と言うか丁度私の順番だから一緒に行きましょう。」


熱いコーヒーをボトルに詰めて甘いお菓子と一緒に社務所に行った。

小室家の両親が居て

「結ちゃんと理緒君?絢はどうしたの?」

「寝てます。」

「まったくあの子は。叩き起こしていいのに。」

「ダメですよ。綴ちゃんいない分頑張ったんですから。寝かせてあけでください。」

そんな会話があって、2人で社務所に入って腰かけてすぐ。

「理緒君とも話がしたかったから。」

僕に話?

「昨日の事よ。」

昨日?

「え?何もう忘れてるの?理緒君が藍ちゃん泣かして絢ちゃんとほら。」

それ僕に話しちゃって大丈夫なんですか?

「大丈夫って言うか聞いてほしいの。理緒君にとっても大事な事だから。」


大晦日、泣いて怒った藤沢藍を小室絢が神社の裏で2人きりで話しをしていた。

「やっぱり昨日の夜何かあったんだな?」

「何もありませんよ。何も無いから腹立つんですよ。」

「どういう事だよ。」

「母親が帰国しているのに一緒に過ごそうともしないで」

「当たり前のように私を誘って神社の手伝い。」

「結構酷い事言ってるのに意に介しもしないで」

「挙句私の事を「好きだ」とか言いやがる。」

「こっちは本気で惚れないようにするの大変なのに」

「何だってあんなに爽やかに真正面から人の目見据えて「好きだ」とか言えるんだ。」

「何なんだあいつ。何なんだよあいつっ。」

「姫様の手伝いだからって神社に来れば体調悪くなるの判ってるでしょ」

「原因だって対策だってはっきりしていなんでしょ」

「なのにどうしてそんな事するんだっ」

「ハガなのか。バカなんじゃないかっ」

藤沢藍が本当にそんな言い方したのか?

「バカはお前だ。」

「何で本気にならないんだ?」

「できるわけないでしょ。」

「どうして。」

「指輪の問題が片付けば私は帰らなくちゃならないんですよ。」

「いじゃん別にに。何だったら理緒の奴呼んで一緒に住んだら?」

「何を」

「おまえ、一体誰に遠慮しているんだ?」

「中途半端が一番辛いぞ。」

「本気でぶつかってそれでダメなら諦めもつくだろ。」

「諦めもあっさり着くけど本気になりすぎて次が中々見付からないんだけどな。」

「絢さん振られたんですか?誰ですかその大馬鹿野郎。」

「私の事はいいんだよ。お前はどうなんだ。」

「どうって。じゃあ聞きますけどあの人の取り巻き連中の中で誰が一番可能性あると思います?」

「取り巻き連中って。お前も含まれてるくせに。」

「可能性は皆にあるよ。」

「そーゆーのいいですから。あの人は誰に惚れていると思います?」

「皆に惚れてるよ。ってか聞き方がおかしいぞ。」

「判りました。絢さんから見て、御厨理緒に恋しちゃってるのは誰ですか。」

「お前と、桃。あと何て言った?双子の髪の長い方。」

鏑木リナ。

「まあそうでしょうね。蓮ちゃんも葵ちゃんもそこまで本気じゃない。カナさんはちょっと判らないけど。」

「リナの事は良く知らないけど桃は手強いぞ。」

「高校生に言う台詞じゃ無いけど既成事実作るとか早めに強引な手段を取る事を進めるね。」

「あ、お前の家って金持ちじゃん。付き合うとヒモになれますよとか言ったら。」

「知らないんですか?理緒君お金持ちなんですよ。」

「うそっ何で。ただの高校生だろう。」

「亡くなったお父さんの保険金とかおばあさんの遺産とか母親の報酬とかで」

「預貯金が億単位であるって紹実さんが自慢してましたよ。」

「マジで?すげぇっ何だそれ。今度奢ってもらお。あ、それで前におごってくれたんだ。」

「いやいや、あの人そのお金には一切手を付けて無いって紹実さんが呆れてましたから。」

「はあ?何それ。アイツどうしてるの?」

「そんな事はどうでもイイんですよ。とにかくあの人お金には困っていないから」

「と言うか私じゃ無くて私の親のお金じゃないですか。どっちにしろダメでしょ。」

「お前も偉いな。」

「それはともかく、理緒を1人の男子高生として見た場合どうだ?」

「どうって。判りませんよ。あの人が魔女ではなかったら出会ってもいないし。」

「だよな。理緒が魔女でなければお前はアイツに見向きもしなかったんだ。」

「それは」

「まあ聞け。お前は理緒か魔女であるって一点に惚れているのか?って聞きたかったんだ。」

「違うよな?」

「お前さっき泣きながら全部言ったよな。お人好しなアイツが好きなんだよな?」

「お人好しを本気で好きになると、辛いぞ。」

「基本的に誰にもイイ顔するから、恋人になっても辛い。」

「恋人になれなくても、当たり前のようにイイ顔して来やがる。」

「諦めたのに、やっぱり惹かれちゃうんだ。」

「それにな、さっき本気になれって煽っておいて何だけど。」

「本気になるならそれなりの覚悟だけはしろよ?」

「覚悟?」

「指輪の問題が片付いたとしても、理緒は日本中いやもしかしたら世界中の魔女から慕われる。」

「慕われる?なんですかそれ。」

「なあ姫。聞いてるんだろ?」

「・・・聞いてないよ?」

「まったく。いいから来いよ。」

「いやー盗み聞きすつもりは無かったのよ?御神籤運んでいたらちょっと声が」

「いいよもう。なあ姫。理緒の奴この街で収まっていられると思うか?」

「うーん。多分無理ね。」

「市野萱紬の息子。市野萱友維の兄。同時に三原縁の息子。三原紹実の弟。」

「こんな濃い魔女を誰が放置する?」

「あ。」

「何か心当たりある?」

「え?いや。」

藤沢藍はこの時、僕(の唇)を狙って現れた魔女達を思い出していた。

全国各地から「最強の魔女」になるべく現れ、騙され帰された魔女達。

真実の理由を知り、彼女達は僕と連絡先を交換している。

委員会の件が片付けば、その報告はするだろう。

「アレの事だ。「困った事があったら連絡してください」くらい言うかも知れない。」

日本中の魔女達が、御厨理緒を頼りにしている可能性がある。

「もしそうなったらお前も日本中、いや世界中飛んで廻るか?」

「それも楽しいかも知れないってちょっと思いました。」


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