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宮田姉妹。
「ちよっと姉ちゃん。
「何だよこんな朝っぱらから。」
「あ、オメデトウ。」
「あん?ああオメドウ。お年玉なら無いぞ。」
「違うよ。ちょっと神社行ってくるから。父ちゃん達起きたらよろしくね。」
「神社って。アタシ達行くのは3日だぞ。」
「判ってるよ。ちょっと皆の手伝いに行ってくるだけ。」
「何でこんな寒い中好き好んで、ああそうか。でもも忙しくて相手してくれないんじゃないか?」
「いや昨日メールしたら階段の下でプラカード持って立ってるだけって書いてあったから。」
「確認済みかよ。じゃもっと温かい恰好しろよ。アタシのダウン貸してやるから。」
「あと何か食い物とか持って行けよ。コンビニ寄ってくとか。」
「弁当作った。」
「やる事早いな。よしっ」
「何。」
「送ってやる。」
「え?いいよ。寒いし。歩いて」
「妹の恋の手伝いくらいさせろ。」
「なっ何言ってるんだよっ。」
こうしてバイクで現れ
「オメデトウ理緒。桃を頼むぞ。」
こんな会話があった事なんて知らない僕が
え?おめでとうございます。
と答えたってそんなに深い意味になるなんて思ってもいない。
寒かったらそこの焚火で暖を取ってよ。
「ああ。姉ちゃんがダウン貸してくれたから。お前こそずっと立ちっ放しなんだから少しくらい休めよ。」
大丈夫だよ。休み休みだから。あ、明けましておめどう。今年もよろしくね。
「あ、うん。オメデトウよろしく。」
あれ?お姉さん帰ったけど。
「うん?」
あ、いや。
初詣は3日まに来る筈だ。桃さんが態々来たのは皆の手伝いをするためで
お姉さんに上(橘家)までバイクで送ってもらう途中で挨拶に寄った。のだと思ったが。
その後桃さんは僕の隣で一緒に参拝者に挨拶と案内をしてくれた。
お昼近くになって
「あ、弁当持って来た。」
サンドウィッチのお弁当。手作りだ。元旦の早朝から作ってくれたんだ。
一緒に持ってきてくれた水筒には熱いコーヒー。参拝者をそっちのけで公園のベンチで2人で昼食。
午後になると参拝者の中に見た事のある顔を見付けた。
その時は「まさか」と思っていた。結構遠くの人達だったような。
列が進み、案内板を持った僕を見付けた「彼女達」
「あ、こんなとこにいる。」
「お手伝いしてるって聞いたからてっきり御守りでも売っているのかと。」
聞いた?誰に?
僕(の唇)を狙った魔女達。
同時に利根芳乃に襲われた魔女達。
それにしてもどうして態々。
「何言ってるの。あなたに会いに来たんじゃない。」
「半分冗談。」
「そんな事よりあけましておめでとう。」
はいおめでとうございます。
友達同士で初詣何処に行こうかと話になった時に丁度メールが届いた。
誰から?
「碓氷さん。先生だっけ?」
「魔女に縁のある神社だから暇ならどうだって。」
ユカリ?何の?その昔姉が吸血鬼を燃やした事か?
「何それ怖い。」
「あ、列動いたからとりあず参拝してくるね。」
あうん。行ってらっしゃい。
「何か凄いな。」
うん。凄いね。
「いやお前が。」
僕?何で。
「多分アレ、本気でお前に会いに来たんだぞ。」
宮田桃は何を言っている。
その後、元日だけで3組。翌2日は7組の魔女が参拝に訪れた。
結構遠くから来ている人もいる。さっきの子達もそうだ。
参拝を終え戻って来た彼女達に話を聞いた。
結構遠いよね。もしかして泊まり?
「うん。朝一で出て着いたのお昼近くかな。」
「お昼までご馳走になって。皆素敵な魔女ね。」
彼女達は宮田桃を見て
「貴女は魔女ではないわよね。」
「誤解しないでね。キモチワルイとかそんなんじゃないの。」
「むしろ親近感って言うか、自分でもどうしてなのか判らないけど昔から知っている人に再会したみたいな。」
「私もそれ思った。」
街の空気がそうさせるのだろうか。
街の人達の雰囲気がそうさせているのだろうか。
「アタシは、そのー。」
彼女は猫娘だよ。
「猫娘っ。」
「いやんカワイイナニソレ。」
「かわっ??」
「ああっそうか猫なのよ。猫なんだわ。」
魔女達は宮田さんを取り囲む。正体を明かした事で一気に距離が縮まった。
壁が壊れる音が聞こえたほどだ。
明日は朝から公園で屋台が出るから時間があったら寄ってみてよ。
「ええ。そうするわ。」
魔女達を見送ると宮田桃から御礼を言われた。
「ありがとう。」
うん?何だろう?
小室母が橘家から車で様子を見に降りて来た。
「まだまだ列あるわね。あら桃ちゃん。オメデトウ。」
「おめでとうございます。」
「ごめんね理緒君。上もてんてこ舞いで全然休憩あげられなくて。」
休み休みやってますよ。それに宮田さんが助けに来てくれて。
「みたいね。桃ちゃん今日は泊まってくんでしょ?」
「え?いや帰りますよ。姉ちゃん呼んで迎え」
「泊まりなさい。いいわね。」
相変わらず強引な母親だ。でもイヤ気はしない。本当にイヤな事は押し付けない。
だからきっと桃さんも橘さん宅にお泊りしたかったのだろう。
「アタシ姫様んとこ泊まるの初めてだ。大丈夫かな。」
大丈夫って、何?