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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
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それにしてもどうして?

あのまま祖母の実家から地元の高校に通っていても。

「お祖母様は自分が長くないことを知っていたから。」

「もう1つは少しまわりくどい方法なの。」

「それに、理緒にはあまり気分のイイ話じゃないから。」

どういう事?

「簡単に言うと理緒は囮。」

またか。

「また?」

いや今朝碓氷先生から僕は他の魔女に対する囮だって言われたから。

「じぉあ聞いてるわね。理緒を魔女に襲わせる理由。」

いやそれを聞く前に帰らされて。

「その指輪の存在を魔女に知らしめる。そうね、指輪を手に入れたら最強の魔女になれる。」

「そんな程度の噂を魔女達に広める。」

どうして?

「魔女の所在を突き止めて警告するの。委員会が魔女狩りをするってね。」

「同時にその委員会に対して理緒の指輪が別物だと認識させられる。」

面白い案だ。魔女を守りながら、僕の指輪も守れる。

「噂が広がれば魔女に狙われる。だから3人の護衛を付けた。」

でも僕らはそれを知らされていない。警告しようがないよ。

「先ずはあの3人の力量を計ろうとしたの。」

双子の鏑木姉妹はつまりプロレスだった?

「いえ彼女達は事実を知らないから後でちゃんと教えてあげてね。」

所在の判らない魔女にどうにかして「魔女狩り」の可能性を知らしめる方法としての噂。

高校入学に合わせるように物語が動き出したのではない。

裁判の終わりと、指輪の所在との繋がりが

このタイミングになっただけだ。

だからこそ、僕は祖母の死後すぐに紹実さんの元に預けられた。


碓氷先生が話してくれたのだろう。

帰宅した3人は揃って慰めの言葉を掛けてくれた。

僕自身はむしろ晴れやかだった。

最低だと思っていた父が家族を愛して「そうしていた」事。

挙句僕に大金まで残してくれたのだ。恨む理由は消えた。

僕が強がってそう言っているのではないことを判ったうえで慰めてくれた。

とても嬉しかった。でもだからこそ本当に皆は今回の事に納得しているのだろうか。

そもそも彼女達はどの程度の事まで知っているのだろうか。

「知らないわよ委員会なんて。」

「貴方の指輪が狙われたら守りなさいって条件だけですから。」

「相手の事まで聞かなかったな。」

そんなんでイイのか。

僕なんかを守らせるために3人の女子高生が傷付けられるかも知れない。

「しつこいわね。それに事情を知ったからには今まで以上に守るわよ。その指輪。」

「そうですよ。魔女狩りなんてさせまんからね。守りますよ。その指輪。」

「誰か本体の事も守ってやれよ。」

「本体?ああ。理緒君ね。指輪の付属として守ってあげる。」

ヒドイ。


事実この後、彼女達は何度も魔女同士の壮絶な戦いを繰り広げる。

その全てに勝利し、「ほら、後は貴方が説明しなさい。」と押し付けられ

「真実」と「警告」を与え、皆一様に納得してくれる。

それにしたって、3人より強い魔女が現れないなんて言い切れないじゃないか。

そしてとうとう、奪われてしまう。あろうことか白昼堂々の学校内で。

入学式に僕を助けてくれた宮田桃。

あの日の借りはまだ返していない。

僕が借りを返していないのは

あの日以来、どうにも僕を避けているからだった。

宮田桃は、彼女の通う道場の先生から

「指輪を守れ」と言われている。事は知っている。

詳しい事情はきっと知らない。

魔女達も、積極的に彼女に関わろうともしない。


その日、日直の僕と宮田桃。

音楽室の鍵を職員室まで受け取り向かうと

既に宮田桃に渡したと言われ慌て向かった。

宮田桃は特に何かの準備わしているでも無く、ただ待っていた。

ドアを開けると、宮田桃はただ立って僕を待っていた。

静かに顔を上げ、僕を睨み、

ゆっくりと静かに近寄った。

事後、それは躊躇だと判るのだが本当にゆっくりと一歩一歩踏み締めるよう歩み寄り、

さらにゆっくりと両手を伸ばし、僕の頬を挟む。

まさかと思う間も無かった。

彼女は目を閉じ、自分の唇を僕の唇に合わせた。

1秒も無かったと思う。

と、ドンッと結構強めに突き飛ばされたので壁にぶつかった。

え?ええっ?

キスされた。ファーストキスを奪われた。


「最強だな?」

何?

「これでアタシが最強なんだな?」

宮田桃は何を言っている?

「お前にキスすると最強になれるんだろ?」

何だそれ。何なんだその素敵な設定。

何か恐ろしい勘違いをしている。

恐ろしいのはこの後か。

あ、あの。僕にキスしても最強になんてなれないよ?

「あ?何だそれ。」

誰に何を聞いたんだ?

彼女は急に(今更?)真っ赤になって袖で口を拭いながら

「どーしてくれんだっ。アタシ初めてだったんだぞっ。」

僕だって初めてだ。

「じゃあ何だ、アタシはただお前にキスしただけなのか?」

そう、だね。

ドガッ(僕が蹴られた音)

ええっ

「忘れろよっ。誰にも言うなよっ。」

授業の予鈴が鳴った。

クラスメイト達が音楽室に集まる。

「ちょっと。勝手に何処か行かないでって言っているでしょ。」

神流川蓮に怒られた。

踏んだり蹴ったり。いや、詰られたり蹴られたり。


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