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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
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学生の本分。とやらを僕と桃さんはみっちり教え込まれた。

魔女3人の相手がどれほどなのか

「もう懲りた」と桃さんが零した事で判るだろう。

だがそのお蔭で2人とも無事に平均点以上を叩きだした。

3人は揃いも揃ってほぼ満点なのは人間業ではない。

「何かの魔法なんじゃね?」

「委員長はどうなるのよ。」

「実はお前も魔女だろっ。」

「本当に魔女だったら良かったのに。」

「面倒なだけよ魔女なんて。」

「判ってませんね。委員長はずっと理緒君の傍にいた」

「なーに言ってるの。貴女たちを見て素敵だなと思っただけですよ。」

本当に面倒なだけだと思う。

魔女達はただそれだけで忌み嫌われる。

藍さんも葵さんも、あの紹実さんでさえ幼い頃は辛い思いをしてきた。

そして今まさに、魔女達は狙われている。

「魔女狩り」だなんて言葉だけだと思っていた。

何かの比喩でしかないと思っていた。


僕は何とか魔女役を回避する事に成功したが

最初からそのつもりはなく「からかっただけ」と呆れられる。

グレタに関しては全員一致して「魔女役以外ない」と決まり

衣装を纏った彼女は完璧に「本物」だった。

委員長が魔女役に決まってとても喜んでいたのと対照的に

桃さんは最後まで抵抗を試みた。

「理緒君が桃ちゃんの魔女姿見たいって言ってたわよ。」

「って言ったら「じゃあやる」って言ってたわ。」

蓮さんの言う事は何処まで本当なのかさっぱりだ。

配役は鏑木姉妹と桃さんが魔女役。僕と葵さんがその他。

友維とグレタ、委員長が魔女役。藍さんと蓮さんがその他で決まった。

各公演は大盛況だった。

藍さんと蓮さんが子供達を「浮かせ」て

悲鳴にも近い喝采を浴びる事になったり。

それぞれの会場では魔女達の姿を見た幼稚園の関係者から

保護者達に臨時のメールが回り、劇終わりで撮影会まで催されたり。

後日園児達からたくさんのお手紙をいただいて

それを読んだ委員長が感動して泣いてしまったり。

(「私も大きくなったら魔女になりたいです」と書いた子もいた)

子供達も、幼稚園や保育園の関係者も、

グレタも委員長も、渋っていた桃さんでさえも

「楽しかった」と言ってくれた。

でも皆は?

あのくじ、イカサマだよね。

「去年やったからね。」

やはり配役は3人による演出だった。

素敵な魔女達だ。ゲストに主役を譲って自らは脇で

「あんな恰好で人前に出たくないだけですよ。」

「そうね。藍ちゃんが魔女役辞退する事になったのは計算違いだったわ。」

「まだ言いますか。」

お蔭で皆が喜んでくれた。3人ともありがとう。

「くっコイツまた。」

それにしても、クリスマスに魔女が現れるのも日本じゃ珍しいだろうね。

それとは逆に(?)ハロウィン魔女の恰好をする者は何故か「余所者」と言われてしまう。

3人は去年も今年もこの街のハロウィンに「魔女色」が全く無い事に驚いていた。

「だって関係無いじゃん。」と言い切ったのは紹実さんだ。

ハロウィンと魔女は本来何の関係も無い。

ケルトの民話と「ただ何となく」そうなってしまっただけだ。

紹実さんは幼い頃、ハロウィンになると魔女の恰好をした人々に

漏れなく「いたずら(「嫌がらせ)」をした。

魔女の恰好をした誰かににtrick or treat?と言ってどうして飴が貰えるのか。

いいじゃないですか別にそれくらい。

むしろ魔女に対するイメージアップになっただろうに。

「ホントですよ子供じゃ無いんだから。」

「だから子供の頃の話だって。」

街の大人達は口々に「紹実ちゃんの子供の頃はもう」と言っていた。

この人が何をしでかしたのかは判らないが

本当に危険な行為で住民に迷惑を掛けただけなら

これほどまで愛されてはいない。

魔女達がこの少々特殊な街で受け入れられたのは紹実さんのお蔭だ。

「その代わりに皆がクリスマスに魔女のイメージを付けたんじゃないか?」

この発言は予言になった。

以来この街ではクリスマスシーズンになるとサンタではなく魔女の恰好をした人達が商店街に溢れる。


年末年始。僕は昨年末同様神社でのお手伝いはさせてもらえないだろうと諦めていた。

この数ヶ月のわが身に起きた出来事を鑑みた場合、

「とても愚かな行為」だと考えずにはいられない。

それでも橘さんと小室さんがわざわざ三原家を訪ね

「今年も皆にお手伝いお願いしたいのだけど。」

皆って僕も?

「僕も?って理緒君が来てくれないと他の皆も来られないでしょ?」

それはそうかも知れませんが

「御守り作りは全員来てくれるだろ?」

小室さんの依頼には皆が渋い顔をする。

昨年は体力的にボロボロの状態での作業だったから。

「今年はカナリナにも声掛けたら?」

被害者を増やすつもりか。

「グレタも勿論来るわよね。」

彼女はクリスマスも年末年始も

「日本の両親と過ごす」と帰国していない。

大晦日と元日は他の魔女達と同様それぞれの家庭で過ごす事になるが

小室さんの言う「御守り作り」や30日の大量のお節作りも手伝う事になった。

年明けはきっと巫女装束を纏った魔女達を見る事になるのだろう。

でも何かあったら

「何かあったら。の為にも皆で一緒にいるべきじゃない?」

「言っただろ?皆でお前を守るって。」

不覚にも、小室さんのこの一言で僕は涙を零してしまった。

何度も言われた台詞なのに。

だからこそ皆が「何で今泣くのよ」「私だって同じ事言ったのにっ」と責められた。


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