表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Kiss of Witch  作者: かなみち のに
103/141

103

まあいいか

炎に包まれながら「これで楽になれる」と目を閉じた。

刹那

「起きろっ」

と頬を叩かれた。結構痛い。これは現実か?

紹実さんだ。友維もいる。

今度はどうやって。

「なに?」

今度はどうやって僕を殺すの?


何処からどこまでが夢なのか結局判らないままだった。

ただ全てが夢では無い事はその後皆との話で理解した。

僕は学校へ通い、日常を過ごしていたらしい。

日常を過ごした僕は、どうやら本物ではないらしい。

はっきりとした事は判らないが、僕は僕では無かった。

線が繋がり始めたのは、僕の意識が混濁している様子を友維が見て

グレタを呼んでからだった。

友維はグレタが「夢を操る魔女」だと知っていた。

同時に「グレタがそんな事をする筈がない」事も知っている。

だが指輪を狙ったのだとしたら?

留学したのも、留学先をこんな田舎の街にしたのも指輪が目的だとしたら。

疑惑を抱えたままグレタに会いに行った。

勿論魔女3人を引き連れて。

いつもと違う友維の表情に戸惑うグレた。

「理緒が、お兄ちゃんが。」

「トトが、リオがどうかしたの。」

友維の泣き崩れたその顔を見て、グレタは来てくれた。

「リオ、私が判る?」

グレタ。本名はマルガリータ・ストロベリーだっけ。

「美味しそうだけど違うわ。」

「リオ、貴方には借りがあったわね。返してあげる。」

実際には「夢を操る」魔法なんてない。

正確には、「眠りの質の調整」。彼女が「医療系の魔法」と言ったのは睡眠心理療法。

夢を見やすい睡眠と、そうではない睡眠。

彼女の一族は、早い話睡眠導入剤を調合できる。

成分や分量で質を調整し、たくさんの夢を見させる状態にする事ができる。

事前に対象に「イメージ」を与え、見せたい夢へと誘導する。

「リオ。今度起きると現実の世界に戻るわ。」

「リオの近くには素敵な魔女達がいる。皆貴方の味方よ。」

「いいわね。皆リオの味方。皆リオが大好き。」

「だから起きたら、笑顔で挨拶するのよ。」

グレタはずっと傍に居てくれた。

彼女だけではない。

紹実さんも、友維も。3人の魔女も。

だから僕が目覚めた時、魔女が工房の中で

机に突っ伏していたり、ベッドの脇で突っ伏していたり

一体何事かと慌ててしまった。

「おはようリオ。」

グレタ。

おはよう。グレタ。

えーっと。何がどうなってるの?


記憶を遡る。

イヤな夢を見て、眼が冴えて、何故か神社へ向かって。

境内でウトウトしていると佳純ちゃんが走って来た。

「それ以降は全部夢だから。」

はい?

「起きたんだって?」

ゾロゾロと工房に現れたのは知った顔ばかり。

桃さんと鏑木カナ、リナ姉妹。

小室さんに橘さん。佳純ちゃんもいる。

碓氷先生と利根先生。

友維の母親と紹実さんの母親。

3ヶ月程前まで代理の担任だった吸血鬼まで。

いくらなんでもこの工房には多すぎるだろうと友維がブーブー言い出して

母屋の広間に場所を替えた。


2人の母親が帰ってきたって事はいよいよ本格的に日本の委員会と戦うの?

率直な質問だった。欧州での作業に一区切り付いていよいよ

「何言ってるの。」

「理緒の事心配して戻って来たんじゃない。」

「あなた3日も寝たままだったのよ。」

蓮さんは前にもそんなような事言ってたな。もう騙されないぞ。

「今度は嘘じゃないわよっ。」

そうなの?

全員頷いた。

何だ。てっきり日本の委員会とかいうの潰すのかと。

「潰すわよ。」

「ぶっ潰す。」

何かやけに気合入ってるな。

「理緒君をこんな目に合わせた連中許す筈無いでしょ。」

「今まで波風立てないようにしていたけどもう我慢の限界よ。」

「紹実さん。」

「紹実ちゃん。」

「ええっ私かよっ。」

「紹実ちゃんが言ったんですよ。騒ぎ起こすような事するなって。」

縁さんが笑った。小室さんも橘さんもだ。

「紹実がそんな事言ったの?よく言えたわね。」

「母さんまで何を。」

「らしくないね。」

「私は理緒が心配で。」

「判ってるわよ。ありがとう紹実ちゃん。」

友維の母は理解している。紹実さんがあまり表立って行動しないのは

紹実さんが居ない間に僕が狙われたら。

「ずっと先輩らしくないと思ってましたよ。」

「何の為に3人も護衛を付けたと思っているんですか。」


紹実さんは1人の少年と約束した。

「何があってもお前を守る。」

だがその約束は果たされなかった。

少年は別の者に助けられた。

紹実さんが駆け付けたのは、少年がボロボロになった後だった。

いつもいつも。その少年が傷付いてから駆け付けた。

「今度こそ間に合わないかも知れない。」

「橘。小さい頃お前とも約束したよな。」

「でも私はその約束を」

「紹実お姉ちゃん。」

橘さんは紹実さんを抱き締めた。

「お姉ちゃんはいつも最高のタイミングで私を助けてくれた。」

「覚えてる?私と同じ事を言った子がいるでしょ。」

「うん。憶えてる。何だよお前らそんな事まで話してるのかよ。」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ