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候補3・4 春秋姉妹

ここまでが人物紹介編です

 

 午後の授業も終わり、帰りのホームルームを終えてさてこれから部活でも行こうかと思っていると、晴海が近づいてきた。


「明〜、部活行くでしょ?一緒に行こー」


「りょーかい、でも昼食い損ねたから購買よってもいいか?」


「いいよー!!じゃあ私も部活前のお菓子でも買おうかなー」


「太るぞ?」


「もう、明デリカシーなさすぎ!!」


 ぷくっと頬を膨らませそっぽを向いたが、次の瞬間にはまたこっちを向いて笑った顔を見せてくれる。

 俺たちの間には幼い頃からの絆のようなものがある。

 相手がなにを考えているかなんて顔を見ればだいたいわかる。

 今のだって俺が冗談で言ったということをさっと理解した晴海が、それに乗っただけ。

 こういうやりとりをやっていれば、そりゃ俺たちがクラスメイトから夫婦なんて呼ばれるのも頷ける話しだ。

 まぁ付き合ってはいないのだけれど。


「じゃあ行こっか!!」


 俺はカバンを肩にかけ、晴海と共に教室を後にした。


 ◇◆◇◆


「あきらセンパーイ!!」


 購買で定番の焼きそばパンを買っていた俺の腰に小動物のように小さい女の子が抱きついてきた。

 そのまま顔をグリグリと押し当てる姿は犬が飼い主に甘えているかのような仕草だ。


「……みんな見てるから離れてくれるかな美春……」


「えーー!?こんな可愛い後輩が先輩を見つけて一目散に駆けつけて抱きついてきたのにその反応はおかしいですよぉー。普通だったら「もう可愛い奴め、今日はなにが食べたいんだい?先輩が奢ってあげよう」くらい言うんじゃないですか??」


 そう言いながら腰から離れず上目遣いで話してくるのは、倉崎 美春(くらさき みはる)

 髪をピンク色のリボンでツインテールでまとめた、低身長の1つ下の後輩だ。

 そして弓道部の後輩でもある。


「いやそんなこと言わないし、なんなら奢りもしないぞ?今月新しい矢を買ったから金欠なんだよ……」


 弓道で使う矢は割と高い。

 安くても6本セットで1万円くらいはする。

 しかしこないだ俺が買ったのは某有名スポーツメーカーが作っているカーボン矢。

 臙脂色のシャフトに惹かれて買っちったぜ!!

 お値段6本セットで約3万円!!

 高校生の財布で買える金額じゃない!!

 お年玉と小遣いをために貯めてようやく手に入れた俺の宝物だ。(まぁ矢って消耗品なんだけどね……)

 だから今俺は本当に金欠なのだ。


「ちぇー、まぁ知ってたけどさー」


 俺の腰で残念そうな顔を浮かべて唇を尖らせる。

 しかし美春は一向に腰から離れようとしない。

 そろそろ離れてくれないと……


「ねぇ、倉橋?そろそろ明から離れてくれるかな?明も困ってるからさ」


 と、明らかに背後からゴゴゴという効果音をさせている引きつった笑顔の晴海が言った。


「あー、晴海先輩もいたんだ、ちわーす。でも今私お取り込み中なのでまた後にしてくれますかー?ねぇーあきらセンパイ」


 そこで俺に振るのはやめていただきたい。

 理由は簡単。晴海を見ればわかる。

 あれは確実に怒っている時の顔だ。


「明ー、迷惑だよね??ちゃんと後輩に言ってあげないと……分からないみたいだから」


 怖い怖い怖い……!!

 目に光がなくなっている。

 完全に何人かヤッている目だ。


「きゃーこわーい!!あきらセンパイ助けてー!!」


 美春はそう言って俺の背後に周り、晴海を牽制する。

 そう、俺を挟んで女の子2人が火花を散らしているのだ。

 是非やめていただきたいものである。


「いいから早く離れなさい!!」


「いーやーだー!!」


 ああもう!!

 掴み合いなんてするんじゃない!!

 そして俺を巻き込むんじゃない!!

 上着のボタンが取れる!!


「はいはい2人ともそこまでね」


「はうっ!!」

「って!!」


 背後から現れた女子生徒によって頭にチョップを食らわされた2人は頭を抱えてしゃがみ込んだ。

 容姿は美春とそっくりだが、身長は美春よりも10センチ以上は高い。

 同じツインテールだがこちらも美春よりも長い。

 現れたのは美春の姉で俺たちの同級生倉橋 秋葉(くらはし あきは)だ。

 ちなみに学校ではこの姉妹は美春の春と秋葉の秋をとって春秋姉妹と呼ばれている。


「助かったよ秋葉……」


 俺が礼を言うと


「別にあんたのために喧嘩を止めたわけじゃないから。自分の妹と友人が喧嘩してたから止めただけなんだから。あと周りにも迷惑になってるし」


 そう言ってそっぽを向いた。

 しかし俺は知っている。

 本当は俺を助けてくれたのだと言うことを。

 なぜなら彼女はツンデレなのだ。

 あんまりデレてはくれないのだけれど。


「お姉ちゃん……痛いよぉ……」


 頭をさすりながら涙目でそう訴える美春であったが


「かなり力は抜いてあげたのだけど……」


「ううー、お姉ちゃんの力は普通の女の子の3倍以上はあるゴリラ女子なんだから人を叩いちゃダメだよぉ」


「へー、まだ足りなかった……そう言いたいわけね。いいわ、今度は手を抜かないから覚悟しなさい」


 どうして美春はいつもいつも姉のヤる気スイッチを起動させてしまうのだろうか。

 もう秋葉は完全に鬼の形相を浮かべてしまっているじゃないか。

 こうなったらしばらくは止められないかな。

 そう思った俺は、こそこそっと晴美に近づき


「おーい晴海、今のうちに道場に行こう。秋葉の怒りがこっちに向く前に」


 耳元でそう言うと、晴海は頷き俺たちはこっそりと購買を後にした。

 俺たちは早足で道場へと向かう

 背後から全力で謝る美春の声が聞こえたが、聞こえないフリをしておこう。


 そしてその後の部活で頭に漫画のような2段のタンコブを作った美春と普通の顔に戻った秋葉が現れたが、俺はそっと見ないフリをした。


 さてこの姉妹に関してもおそらく俺を殺すであろう近しい女子生徒の1人だろう。


 秋葉は小学校からの同級生。

 あまり同じクラスになることはなかったが、晴海の友達ということでよく一緒に遊んでいた。


 中学に上がると晴海の提案で3人で近くの弓道場に通い始めた。

 互いに切磋琢磨し、中3になった頃には俺たちはそれなりの成績を収めていた。

 そして同じ高校の弓道部に所属して今でも互いに高め合っている。


 去年は3人とも惜しいところでインターハイ出場を逃したが、今年こそはと意気込んで練習をしているわけだ。


 美春は、彼女が高校に入学してくるまではほとんど関わり合いがなかった。

 何度か秋葉についてきて、遊んだことがあるものの、そこまで親しい間柄というわけではなかった。

 しかし高校入学と同時に、俺たちのいる弓道部に入部した。

 以前なんで弓道部に?とかいたことがあるが、「えー、あきらセンパイがいるからに決まってるじゃないですかー」と言っていたが、まぁいつも通り俺をからかっているのだろう。

 おそらく姉がいるからだろう。


 とまぁそんなこんなでこの春秋姉妹も俺に近しい女子生徒と言えるわけだ。

 おそらく俺に近しい同じ学校の女子生徒は、晴海、冬場先輩、美春、秋葉の4人だろう。

 ……本当に俺はこの4人に殺されることがあるのだろうか。

 自意識過剰かもしれないが、俺は間違いなくこの4人とは良好な関係を気づいていると思う。

 殺される理由など今のところない。

 つまり未来の俺が何かしらこの4人の誰かに対して何かをやらかすと考えるのが妥当だろう。

 そしてそれは相手の性格や容姿を変えることで回避ができる。

 しかしそのチャンスはたった2回。

 ミスすれば即バッドエンド直行だ。


 俺はその日の夜、4人について少しまとめてみることにした。

 名前、性格、容姿、関係性などなど……

 その結果見えてきたこともある。

 おそらく俺を殺す可能性が一番高いのは……


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