第八話 これから その3
大逃亡の果てに、この最東のキルバート領にたどり着いた。
しかし、キルバート領は、王族に媚びを売る領主で、協力を仰ぐのは得策でないと判断し、森を彷徨っていたらしい。
なんともまぁ。
で、今に至ると。
「なるほど、ご苦労なさったのじゃな」
とお爺さん。
「ええ、一応は死亡で誤魔化せるような気はしますが油断できません。そのため、あなた方に危険が迫るのではと」
セルトさんが顔を上げて話した。
続けて源治郎さんが
「まぁ、色々話しはしたが知らぬ存ぜぬを貫けば、避けられる可能性もないわけではないし、無理に協力は仰がんよ」
「ここまで親切にしてくれたお礼は、残念ながら何もできなんだが」
「危険があるかもしれんのに、これ以上、この件に首を突っ込む必要もないであろう?」
「第三王子の協力が得られるわけでもないしな」
「しかし、その話を聞きますと行く当てがないのでは?」
僕は素直に聞いてみた。
「ああっ、そうなるな」
「脱出後の計画は全く練っていなかったし、この世界に協力者がいるわけでもないしな」
「これからの事を考えても、まずは情報整理と情報収集が必須なわけで、拠点は早急に準備する必要があるな」
と源治郎さん。
「それなら、ここに滞在するのは決定ですね」
「ここは、週に1度しか見回りが来ませんし、見回りに来る兵士は、僕の両親の友人ですので、何かを漏らすようなことはないと思います」
僕はそういってお爺さんを見た。
「そうじゃの、わしらは問題ないがおぬしらはどうする?」
お爺さんも賛成してくれた。
「危険性を酌んだうえで、そのようにご配慮いただけるなら是非ともお願いしたい」
と源治郎さん。
「こちらに召喚されてからというもの、ゆっくりと寝たとこがなくてな」
「幽閉されていた部屋は、毛布1枚渡されただけで床は石だし、逃避行中は木に寄りかかったり洞窟を見つけたりと安眠には程遠かった」
それで疲れて意識がなかったのかな?
「うちも大した寝具はありませんが、洞窟や木よりはましじゃろうて」
「恩に着ます」
そういって頭を下げる源治郎さん。
僕は二人の部屋を用意するため客室へと向かった。
部屋の準備ができたところで二人を案内する。
今日は僕も疲れた。
もう寝よう。
なんか色々あった1日だった。
レナさんに絡まれたところから始まり、逃亡者の異世界人を救出し、とんでもない内容を聞かされた。
はぁ~、普段あまりやる気がなく暮らしていた僕には厳しすぎる1日だったな。
そのようなことを考えながら意識を落としていった。
しかし、この出会いがメルラードと源治郎の今後を大きく変えることをこの時点ではまだ誰も知らない。
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物語の舞台
・この世界に2つある大陸のうち クレメゼン大陸
大陸の中の一国 セイファース国
セイファース国の最東に位置するキルバート領
キルバート領内の最東の町ゼレン
平民・貴族と階級がある
絶対信仰は存在しない
武官(主に 剣士・魔導士)
文官(主に 貴族)
専門職(錬金術師・鍛冶師・木工師・装飾師・調理師など)
組合(商業組合・錬鍛組合・木装組合・調理組合など)
騎士団:王管轄の剣士の組織
近衛兵団・第一師団・第二師団・第三師団
兵士:一般公募の兵士
剣士兵科:騎馬・槍術・弓・歩兵
魔導士団:王管轄の魔術師の組織
近衛兵団・第一魔導団・第二魔導団・第三魔導団
魔術士:一般公募の魔術士
魔術兵科:王宮魔導士・上級魔術士・中級魔術士・下級魔術士
メルラード(メル):錬成士見習い 14歳 成人前(成人は16歳)両親は錬金術師
セレナーゼ(レナ):錬成士見習い 14歳 成人前( 〃 )実家は中級商人
彼我源治郎:異世界人 召喚前は大学教授 48歳
セルト:騎士団第三師団兵士 兵科 歩兵 36歳
ボルハルト:メルの祖父 68歳
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