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村の会合

村の回りは暗闇に覆われ、冷たい空気の中を僅かに風が草木を揺らす音だけが響いている。

30家ぐらいの小さな村の中心、そこには集会場があった。

集会場といっても、少し大きな物置小屋みたいなもので、中には季節毎に使う祭典道具があるだけだ。

今、その家屋の床には幾人もの村人が3列の輪状に向かい合って座っていた。

全員の表情は暗く固く、下をただじっと俯く者ばかりである。


「皆の衆、夜分にご苦労じゃ。」


暗い空気の中、中央の近くに座っている老人達の一人、村長のリーガルがゆっくりと口を開いた。

既に70歳を超え、長く伸びた髪と口髭は真っ白であり、しわだらけの痩せた老人である。


「皆も知っての通り、先日の昼間、貴族様から徴兵の知らせがあった。したがって、儂らの村からも15人の兵を出さなければならない。」


村人の全てがその内容を既に知ってはいた。しかし、改めて村長の言葉を聴くことで、それが現実であることを再度痛感し、より一層暗い表情を浮かべる。その空気は葬式よりも重たい。


「それでじゃ・・・これからその15人を選ぶ。村の風習に乗っ取り、まずは志願するものを募る。」


その言葉に、場の空気は硬直した。まるで一切の音が消えたような静かさである。当たり前だ、好き好んで死にたい人間などいるはずがないのだから。

ではどうして『志願』なんてものが風習にあるのか・・・それは・・・


長く続く沈黙の中、志願者など現れないだろうと思われたときだ。

村長の近くの老人が口をきった。


「どうやら、いないようじゃて。はっはっは!誰も自ら死にたいなど思わないのも当然じゃ。され、儂の爺さんがそうしたように次は儂らの番かのう。すでに、動きが鈍くなった身、村のお荷物になりつつある身じゃ、皆喜んで見送ってくれよ。」


言い終えると、老人はスっと細いシワだらけの腕を挙げる。

その言葉と動作を村人の全てが表情を崩して見つめる。

そして、最初の老人をきっかけとして他の声が続く。


「はっはっは!ついにロードンに先を越されたか。お前さんとは小さい頃からの仲だ。死ぬときも一緒とわな。まぁ、悪くはない人生だ。」


「そうだの。儂らはどうせあと数年の命。いや、2、3年後には寝たきりかもしれんしな。だったら少しでも故郷の為になりたいものだ。この身、皆のために捧げよう。」


「あぁ、勿論儂もついて行くとも。同じ村のよしみだ。最期は一緒だ。」


続くように周りの老人たちが手を挙げていく。その度に、周りからはすすり泣く音が増えていく。

老人達を犠牲にして若者が助かる。それは理にかなっているものではある。将来がある者と、命が短い老人。どちらが村にとって、集団にとって重要かなど比べるまでも無い事実だ。

だからこそ、村には『志願』という風習があるのだ。

ただ・・・


『こんな、こんな事が本当にあっていいのか、命の価値を決めるなんて・・・・』


アークは歪む視界の中、強く自分の拳を握り締め、周りの光景を睨む。

彼らが帰ってこないのは経験から知っている。しかし、だからといって、僕に出来ることなど・・・


『ほう・・お前は助けたいのか?お前の家族でも無い、あの老人達を。』


突然声が響く。それは最近聴き慣れた低い男の声。その言葉に僕は回りに聴こえないような小声で、強い意思を込めて答える。


「当たり前だ!誰が人の死なんて望むものか!」


『なるほど。お前は近しい人間が死ぬのが許せないと言うことか。しかしそれは自己欺瞞だな。・・・・まぁ良いだろう。これも逸興だ。私とお前は既に一蓮托生の身。その結果の果てにあるものが何か興味もある・・・』


「・・・?」


声が何を言っているのか、アークには理解できなかった。

頭で響く声との会話の中、周りの志願者は既に13人になっていた。その数は村の老人達の上限であり、ここからは比較的若い者が手を挙げていかなければならない。そして、『志願』が無い場合には『話し合い』がなされ、それでも決まら無い場合には村長が決めることとなるはずだ。


だがしかし、そこまで話し合いが続くことは無かった。

なぜならば、1つの腕が挙がったからだ。

周りの誰もが目を見開き、間違いではないだろうかと驚いてじっと見つめる。

そして誰かが言った。


「お、おい!お前正気か!そんな・・・お前が・・・」


場に居る村人の誰も彼もが一人を見つめていた。

何故か全員がアークの方を見ているようである。

アーク自身も視線に気づき、左右や背後を振り向くが手を挙げている人はいない。

しかし視線はやはりこちらを見ている。

嫌な予感がし、アークの額から汗が流れる。彼がゆっくり自身の頭上を見ると、そこには自身が挙げた腕があった。


「えっ!?なんでっ・・・・」


一番驚いたのは何故か、アーク自身であった。

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