1
「あー…またこの夢見ちゃったな…」
目覚めると、わたしは涙を流していた。繰り返し見る夢は魔族との戦いで命を落とした時のものだ。
ヴァル殿下の悲痛な叫びが今も聞こえるようで、夢の中で何度謝ったことだろう。
ここは大神殿。ソリュード国王都にあって、愛の女神・シェイラを奉るシェイラ教総本山だ。その一角にわたしはいる。
命を落としたわたしは自分の世界に戻ることはなく、そのままこの世界ですぐに転生していた。女神さまが不憫に思われたのだろう。
魔族との戦いの折、大神殿では多くの人間が祈りを捧げていた。その際にレイダートさまの前に光が現れたと思えば、光は赤子の姿に変えたという。それがわたしだ。
今や大神官となられたレイダートさまはレイリアーナと名づけてくださり、父親も同然のような存在。当然ながら、わたしが神子の生まれ変わりだと知っている。
記憶を戻したのは10年前で5歳の時…混乱したわたしは神殿を飛び出して行こうとした。泣いていたヴァル殿下のもとに行くために。
慌てて引き止めようとする人たちを退けるために思わず力を使ったから、神子の力が失われていないこともわかった。
ベッドから降り立ち、部屋に備えつけられている小さな洗面台に向かうと鏡に今の自分の姿が映る。黒髪・黒瞳は変わらず、だが顔立ちは元の面影を残しつつ、こちらの世界のものと言っていい。ちょっと美少女じゃないか、コレ?と内心喜んだのは内緒だ。
でも、女神さま……一言だけ不満を言っていいですか?
どうして身長もこちらの世界基準にしてくれなかったんですか~っ!!!
前世では日本で最後に計った時は身長が150㎝だった。17歳になっても伸びた気配がなかったことから、その数字はそのまま間違いないだろう。
そしてたぶん今もそのぐらい……こちらの女性たちが平均170㎝近くあるのではと思われる中での150㎝……。あ、目から汗が…。
ひとしきり落ち込んだところで、身支度を始める。今日はレイダートさまに相談があり、時間を作ってもらったことを思い出したのだ。ひととおりの用事を終えた後になるが、ヴァル殿下に関する相談なので絶対に聞いてもらいたい。
もう15歳。こちらに召喚された年になったのだから、動き始めてもいいよね。
やる気が出たわたしは自室を後にした。




