第一話『プロローグ』
「どーも!伝説ファミリーです!それでは今日も都市伝説を検証していきたいと思います!」
「今日の検証は『エレベーターで異世界に行く方法』です!実はこの検証、前に一度動画にしようと撮ったんだけど、本当に女性が乗ってきて僕が怖くなって断念したから、動画に出来なかったので今回はお兄ちゃんが挑戦することになりました!その様子をお兄ちゃんにライブ配信してもらおう、という企画です!」
そう言って話しているのは最近動画配信サイトで有名な兄弟コンビの『伝説ファミリー』の二人。
今までの動画は編集してからの投稿だったが今回初のライブ配信との事。
「今回もし本当に行けちゃったときのためにいろんな準備をしてきました!」
そう言ってバックの中を開け中身を披露した。
コッヘル、登山用コンロ、寝袋、乾麺、即席ソース、カップ麺、水分・・・
など宿泊しながら登山するときの持ち物そのままが、大きめのキャリーバックとリュックサックにぎっしりと詰められていた。
「それじゃあ、あんまり物ばっかり紹介してもあれなのでそろそろ行ってきますね!ちなみに行く方法はこんな感じです!」
そう言って出してきたのは行く方法の書かれた紙だった。
①一人でエレベーターに乗る。
②エレベーターに乗ったまま以下の順番に沿って移動する。
(人が乗ってきたら失敗)
4階→2階→6階→2階→10階→5階
③5階に着いたら若い女性が乗ってくる。
(この時女性に話しかけてはいけない)
④1階を押すがなぜか上に上がり始める。
(やめたい場合はここで違う階を押す)
⑤9階を通り過ぎればほぼ成功で10階に降りる。
「では行ってきます!」
…
……
………
「ここまでは順調だね、問題はこの後の5階で女性が乗ってくるかだけど…」
そう言って10階に到着し、5階のボタンを押しエレベーターが下がり中では緊張が走っていた。
5階に着きドアが開くと顔がほとんど見えないくらい髪の長い女性が入ってきた。
(ほ、本当に入ってきた…次は1階だよな…)
1階を押すと突然上に上がり始めた。
(成功だけどやばいやばい…)
緊張が全身を走り冷や汗をかきながら9階を超えもう後戻りもできない状況になり、10階に着いた時女性は見当たらず降りた瞬間あたりの空気が一変した。
あたりを見回しても大都会のマンションで下に誰もいないのはどう考えてもおかしい。
兄は改めて異世界に来てしまったのだと実感した。