「甍に沈むタンク」
「詳しく言えないこと」
ネットならではのことって、あるのです。詳しく言えないこと。詳しく言うと、住まいがバレちゃうから……
「甍に沈むタンク」
家から出た道路が好きで。正確に言うと、そこから見える景色が。ちょうどいいところなんですよ。
まっすぐに伸びた道路の突き当たりの家の屋根瓦のうえに、青空が見えるんですがね、その甍と空のあいだに、タンクが見えるんです。タンク……なんていうんでしょう、あれ。水道局かなにかの鉄塔みたいなやつ……?
家の門を出て、二三歩歩くと、甍に沈んで見えなくなるんです。ああ、出掛けたくないな……なんてね、タンクが沈むと、思ってしまったり……なんてこともなく、出掛けていくのですけど……
たまにしか注意が向かない、ちょっとした景色。今日も気がつくこともなく、晴れた空なんかちゃんと見もしないで駅まで行きました。道中、唯一心をとめた覚えがあるのは、枯れたまま放置されている、蜂の巣のような紫陽花くらい……
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特になにもしないまま、していてもそれにきづかぬままに、日々は過ぎていきます。今日はこの辺で終わりにしようと思います。
令和元年十月二十三日 梶生モットシボ郎




