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魔王さまのくせに童貞疑惑を頑なに否定する

前回の続きです。

読んでいただけると幸いです!


※投稿は基本的に朝の7時を予定しております。

「見ろ、リナリアっ。馴染む、実に馴染むぞ! ふははははははははっ」


 フィルは興奮気味に身をひるがえす。


そして、それを見せびらかした。


そう、先日調達した布の服を。


「そうですか? 質素な洋服に凶悪顔がすごく浮いて見えますよー」


 同じく布の服にスカート姿のリナリアが気だるそうに指摘してくる。


「なにぃ?」


「まあまあ、それは置いておいて。フィル様、手筈はわかっていますよね」


「ん? ああ……」


 軽く流されたのは少し癪だったが、フィルはとりあえず話を進めることにする。


「わかってるよ。とりあえず教会だろ?」


 今、フィルたちは転移魔法陣で再びユーフェミニア大陸のロックレイク村付近まで来ていた。


 なぜこのようなことになっているかというと、それは数日を遡ることになる。


 ……。


 …………。


 ………………。




「俺は村人になる」


 フィルはリナリアに宣言してみせる。


 しかし、言ってみたはいいものの少々問題があった。


 こいつが簡単に頷くとは思えないよなぁ。


「……」


 フィルの言葉にリナリアは黙ったままだ。


 じっと見つめてくる。


「な、なんだよ」


「……」


 無言なのが逆に不気味だった。


「先ほどの女の人ですか?」


 しばし重々しく口を閉ざしていたリナリアがぽつりと漏らすように言った。


「なんだよ。見てたのかよ」


「ええ、途中から。フィル様と初対面であんなにうち解けている人は初めて見ました」


「そうっ。そうなんだよ。シャノン……さん。うん、シャノンさんがしっくりくるな。そんでシャノンさんて言うんだけどよ。なんか今まで会ったやつらとは違うんだよな」



「一目惚れというやつですか?」



「惚れ――っ」


 リナリアの口から出た予想外の言葉に息が詰まった。


 フィルは顔が上気するのを感じる。


 俺が!?


 シャノンさんを!?


「ちょ、おま、ばーかっ。そそそ、そんなんじゃねーっての、ばーかばーかっ」


「この魔王くそ童貞すぎですかー」


「ど、どどど、童貞ちゃうわ! と、とにかくっ!」


 ひとつ咳ばらいをしてからフィルは続ける。


「シャノンさんを見てなんかよくわからないけど“これだ”って思ったんだよ。ずっと胸の中でくすぶっていたものの手がかりになるってな」


「手がかり、ですかー」


 またしても考えているように少し黙るリナリア。


 彼女がおもむろに嘆息する。


「仕方ないですねー」


 そして、観念したように肩をすくめた。


「い、いいのか……?」


「そう言いましたけどー」


「何で? こういうときってお前先頭切って邪魔するじゃん」


「失礼な魔王ですねー。私だっていつもフィル様に嫌がらせしたいわけじゃないですよー」


「全部は否定しないんだな、こいつ」


「ただ――」


 リナリアはそう前置きしてから続ける。


「フィル様、今回は本気なんですよね? それなら私は尽くすだけですよ」


 彼女は否定しなかった。


 それどころかフィルのことを慮り、理由も聞くことなく助力を約束してくれる。


 余計な言葉はいらなかった。


 そこにはただひとつ、揺るぎない信頼があった。


 リナリア、お前ってやつは。


 でもな……。


 少し迷ったが、フィルは思い切って言ってみることにした。


「俺、毎回本気で嫌だったんだけど――」


「いやー、そうなるとこれから忙しくなりますねー」


 しかしその訴えは遮られてしまう。


「おいこら、無視するな」


 揺るぎない信頼があったと思ったが、どうやらそれは気のせいだったらしい。



明日も投稿予定です。

よろしくお願いします。m(__)m

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