召喚1
「成功か。」
「まさか、勇者だけでなく、聖女までもとは。」
「では、やはり"アレ"も本物ということか?」
「それについては後に回すと取り決めたはず。」
「左様。まずはこの二人のことであろう。」
話し声が聞こえ、目を覚ます。
硬い地面に冷たい感触、飲み込まれた部分の感触すらなくなる闇とは似ても似つかない感触に、少しの安堵を持つ。
どうやら石畳の上で倒れているらしい。
ゆっくり体を起こす(動くことに大きな安堵)。
「おお!勇者様!我らの呼びかけに応じて下さり真の感謝を!」
「勇者様と聖女様に敬礼を!」
先程の話し声と同じ声が、今度は少しテンション高めに響き、同時にチャカチャカとした金属音が鳴る。
声の方を向くと、そこには派手な服、それも昔の貴族みたいな人たちが着ていそうな、を着た男たちがいた。
その周りには、これまた西洋風な鎧に身を固めた兵士たちが王様なんかに向けるような、片膝をついての敬礼を俺に向けていた。
一体、何が起きた?
事態が大きすぎて逆に混乱することが出来ず冷静に考えることはできるが、いかんせん考えるにも情報が少なすぎる。
言葉が通じるってことは日本…なんだよな?
いや、でも兵士っぽい人たちは鎧で顔が隠れていてわからないが、貴族っぽい人たちは明らかにアジア系の顔立ちじゃない。
しかしながら、全く違和感を感じない流暢な日本語だった。
テーマパーク?海外のコスプレ集団?テレビのドッキリ?
「勇者様も聖女様も突然の召喚に混乱されている様子。無理もありません。」
そうだ、勇者?聖女?
あの男たちの目線が俺に向けられてるってことは、多分俺のことを勇者って言ってるんだろう。何故だかさっぱりだが。
じゃあ聖女っていうのはーー
「嘘…。」
後ろを振り返ると、青ざめた顔をした、僕の片想いした少女、矢那はるながいた。