そして始まりへ
俺、真田純一は絶賛帰宅中だった。
奇跡の大逆転を決め、沸き立つクラスの打ち上げにも参加せず、ただただ一人家に向かって歩いていた。
その理由は当然
「はぁ…。ほんとなんで俺はあんなことを。」
絶賛自分の恋にトドメを刺した分際でそんな気になるわけがなかったからだ。
回想しようにも走り出してからのことはほとんど覚えていない。
必死で走っていたとしか。
走る前に感じていた一種の無力感も今は無く、
本当、訳がわからん…。
「けど…。」
もし、こうなるとわかっていたら、自分は手を抜いていただろうか。
勝てる勝負をわざと負け、クラスを敗北に追いやり、自分の片想いを守っただろうか。
いや、きっとそんなこと自分にはできなかっただろう。
プライドとかじゃなく、クラスのためとか、ましてあのチャラ男なんかの為でもなくーー。
そして、足元に闇が広がっていた。
「え…?」
あまりの事態に理解が追いつかない。逃げなければ、と思ったのは既に腰辺りまで体が飲み込まれてからだった。
足に力を入れるが全く動かない。そもそもこの闇の下に俺の足はまだ存在しているのだろうか?そんなことを思うほど、闇は不気味だった。
「誰か!?」
助けを呼ぼうと叫ぶが、視界に人の姿はない。そもそもいたとしてどうやって助けるというのか。
遂には首まで飲み込まれ、一切の身動きができなくなる。
覚悟を決め…られるはずもなく、ただただ迫る終わりから目をそらすために瞼を閉じる。
やがて、瞼越しの光さえ消え、落ちていく意識の中に浮かんだのは太陽のような、自分の手で終わらせた、初恋の少女のことだった。