勇者5
「と、まぁこのように。お二人には素晴らしい力があります。」
リーランド騎士長はそう結論付けた。
曰くイジメをしていたのではなく、俺達の中にある魔力を自覚させることが目的だったらしい。
「勇者様も聖女様も既にお分かりのことだとは思いますがー」
リーランド騎士長は苦笑しながらそう言う。
「この様に、魔力を込めれば普通では不可能なことも可能になります。例えば。」
リーランド騎士長は砕けた岩の破片の一つ、拳サイズぐらいの物を拾い上げ、横に投げる。
幾ばくかの魔力が込められていて、その速度はプロ野球選手の投球のように速い。
しかしリーランド騎士長はその岩に"回り込んで"キャッチした。
更に驚くべきなのは、それだけの速度で動いた騎士長を俺の目はしっかりと捉えていたということだ。
「この様に魔力を使えば、単に筋力が上がるというだけに留まらず、様々な恩恵を得ることができます。例えばスピードであったり、動体視力であったり。そしてー」
リーランド騎士長は今度は岩をアーガス教授に向けて投げつける。無論、速度も先と同等レベルだ。
「ふん。」
しかしアーガス教授はそれを避けもせず、キャッチもせず、ただ鼻を鳴らしただけだった。
しかしそれが合図のようにアーガス教授の前に水晶の壁が出来上がり、岩を弾きとばした。
そして、目的は果たしたとばかりに水晶の壁は粉々に砕けて消え去る。
「魔力を正しく使えば、この様に様々な事象を引き起こすことが可能になります。」
リーランド騎士長が説明する。どうやら、あの壁はアーガス教授の魔力で作られたものだったらしい…いや、それ以外説明つかないけど。
「やるわね…。」
隣で矢那さんが呟く。どうやらアーガス教授、なかなかのやり手らしい。
リーランド騎士長は一応アーガス教授に謝罪の言葉を述べてから俺たちに向き直る。
「お二人には魔力を使った身体強化と術式の修得をしていただきます。しかし、一つ注意してください。絶対に本気を出さないでくださいね。」
…なんですと?




