勇者3
「では、まず勇者様方には、自分達の力について自覚してもらいましょう。」
自己紹介が終わったところでリーランド騎士長がそう言いながら岩を片手で持ち上げた。
「ええぇ!!!?」
その光景に俺は思わず情けない声を上げる。
しかしそれも仕方ないだろう。リーランド騎士長が持ち上げた岩は人の体を優に上回る大きさで、明らかに人一人の力で持ち上がるものではない。
「素手でこの岩を割ってください。」
「はぁ?!?!」
リーランド騎士長が続けて言った発言に俺は続けて情けない声を上げる。
というか矢那さんはなんで何も言わないんだ。
矢那さんの方をチラリと覗き見るも、全く驚いてる様子はない。むしろ少し退屈そうにしている気さえする。
「いやいや、そんなの無理でしょう。」
リーランド騎士長が地面に置いた岩を軽く撫でる。実は中身が発泡スチロール的な予想を簡単に打ち砕くしっかりとした質感だった。
「いいですから、ともかくやってみてください。」
リーランド騎士長は笑顔で全く引かない。
仕方なく俺はなんとなくで正拳突きのような構えを取り、岩に向かって思いっきり拳を
(あ、怖い)
打ち付けられるわけもなく、手が怪我をしない程度の力でコツンと小突く。
当然岩はびくともしていない。
「ま、普通岩は素手で割れませんよね。」
リーランド騎士長がそれを見てニコリと言う。
「なんだったんですかこのやり取り!?」
「では聖女様もどうぞ。」
「続けるの?!」
リーランド騎士長の奇行に俺は混乱した。
なんなんだ、無理って言いながらやらせるこの仕打ち。
矢那さんは前に出たものの、無理と言われているのにやる気になれるはずも無く特に構えたりするわけでもなく、無造作に触るだけの動作で岩に手を
(いや、違う。)
無造作なのは身体の動きだけだ。足腰や腕、どの部分を見ても力を張っている所は一つもない。
だが、矢那さんの身体の内側から圧倒的な力を感じた。
それを比喩する言葉が見つからない、それは初めて感じた感覚であり、自分自身困惑しているからだ。
それでも、確信を持つ事ができる。今彼女の手には膨大なエネルギーがあり、あんな岩ぐらい容易く破壊する力があると。
俺の感じた通り、矢那さんの手が岩に触れた瞬間岩は粉々に砕けた。
もし今の力を感じていなければ、矢那さんが軽くタッチしただけでイワが吹っ飛ぶ奇妙な光景に見えたことだろう。
だが俺にはそれを容易く実現するだけの力の存在が感じられた。
一度認識すると、なぜ今まで全く感じることが無かったのか疑問に思うほどの存在感だ。今なら目を閉じていても彼女がどこにいるのか答えられるだろう。
「矢那さん…。その、力…。」




