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異世界

 光が止み目をと開けてみると、見たことがない知らない部屋にいた。そこは先ほどまでいた教室とは違い、周りの壁や天井には不思議な模様が描かれていて、床には先ほど教室浮かび上がった魔法陣が描かれていた。


「……何が起こったんだ?」 


 クラスメイトの誰かが戸惑いながら言った。だが、その問に答えられる者は存在せず、状況が理解できずに固まっていた。

 しかし、この状況の中で一人魔法陣を見下ろしている者がいた。


(やはりこれは転移魔術か……)


 真羅はこんな状況の中であるにもかかわらず、魔法陣の術式を解析しようとしていた。真羅は魔術師としての経験で、この状況の原因は下に描かれていたる魔法陣であると理解していた。そして何より、魔術師としての純粋な探究心でこの魔術を知りたいという気持ちが大きかった。


「みんな‼ 大丈夫か?」


 いち早く我に返った勇志が声を出した。自分より周りの心配をするところが彼らしい。


「ええ……何か変な感じがするけど大丈夫よ」


 勇志と同じく我に返った結衣が答えた。周りの者も無事でどうやら、あのとき教室にいた者が全員この場に飛ばされたようだ。


「ここは……どこなんだ?」


 勇志は周りの安否を確認するも、この状況を理解できていなかった。


「……取り敢えず学校ではなさそうだぞ」


 永司が周りを見渡しながら言った。彼が言う通り学校にはこんな場所はない。すると周りをキョロキョロ見ていた、明人が口を開いた。


「なあ、これってよく小説なんかである異世界トリップってやつじゃないか?」


 明人はこの手の小説をよく読んでいたので、この状況をなんとなくそれではないのかと思ったのだ。


「何をバカなこと言っているんだ。今のショックで頭が中二まで戻ったか?」


 隣にいた翔大が哀れむように言った。


「ひでぇ、俺は真面目に言ってるんだぞ!」


「それで真面目に言ってんなら、病院へ行って頭診てもらってこい」


「病院以前にここがどこだかわかんないから困ってんだろ!」


 クラスのムードメイカーと不良がバカなことを言い始めた。そして、そこに天文部部長も参戦した。


「落ち着けよ、二人とも。俺もその手の小説はよく読んでいるが、この状況はそっくりだぞ」


「だからってそんなの信じられるか! オレはお前みたいに頭の中がファンタジーじゃないんだ!」


「ひどっ! つーか、その顔で睨むなよ。いい加減その絵具を落とせ」


 快斗はたまたま持っていた布を翔大に渡した。


「んっ? ああっ! 忘れてた!」


 翔大はもらった布で顔を拭くと、違和感を覚えて布を見下ろした。 


「これ雑巾じゃねえか!」


「心配するな、まだ一回しか使ってない」


「しかも使用済みかよ! ふざけんな!」


 翔大は使用済み雑巾を床に叩き付けた。そして、またギャーギャー騒ぎ始めた。空気が完全にいつものクラスの雰囲気に戻ってしまい、クスクスと笑い声が上がってきた。

 しかし、しばらくすると、この部屋の扉の方から足音が聞こえてきた。


「誰かこっちに近づいてくるぞ!」


 そのことに気付いた勇志が声を上げた。その声を聞いた周りの者は扉の方を向き、緊張が高まった。

 一人を除いて、


(くそっ! これが次元転移ということは分かったが術式が読み取れなくなってやがる。魔術を使えば分かるかもしれないが、こんな人前じゃ使えねぇ!)


 真羅は周りの空気を無視して、まだ魔法陣を見ていた。この魔法陣は中心となっている次元転移の部分は読み取れないように強力なプロテクトが掛けられていた。

 真羅が少しでも情報を得られないかと魔法陣を睨んでいると、足音がさらに近づいてきて扉が開けられた。

 

 扉から現れたのは甲冑を着た者たちで、まるで漫画などで出てくる騎士のような姿をしている。勇志たちは突然現れた騎士たちに驚いて再び固まっていると、騎士たちが二列に並びその間から一人の少女が現れた。

 その少女の容姿はどう見ても日本人ではなく、碧眼に綺麗なプラチナブロンドの髪を持っていて、美しいドレスを纏っている。 

 少女は真羅たちを見ると安心したような顔をして口を開いた。


「よくぞ召喚に応じてくださいました。救世主様方」


 少女がいきなり笑顔で意味の分からないこと言った。

 突然のことで皆理解できずにいると、勇志がこの場にいる者を代表し口を開いた。


「救世主? 一体何のことですか? 僕たちは学校にいたはずなのに気付いたら突然この場所にいたんですけど?」


 この言葉に少女の方が驚くような表情をした。


「そうでしたか……でしたら突然のことで驚いていることでしょう。詳しいことは玉座の間でお話します。私について来てください」


 少女は扉の外を指差した。

 周りの者はどうすればいいのか分からずにいると、永司が勇志に話しかけた。


「どうする?」


「どうするもここにいてもしかたないしついて行くしかないよ」


 勇志の言葉に周りの者は少女についていくことに決めて動こうとしている中、一人だけ。


(この魔法陣は言語の翻訳や通訳の術式が組み込まれているな、それ以外にも魔力増加なんかも入っているな)


 真羅はまだ魔法陣を睨んでいた。状況がやっと進展しようとしているのにそれすら気に留めず、真羅は魔術師の本能のままに術式を読み取ろうとしていたのだ。

 真羅が魔法陣を睨んでいることに、後ろにいた詩音がそれに気付き耳元で、


「真羅君! 戻ってきて!」


「んっ? ああ、なんだ?」


 真羅がやっと魔法陣を睨むのをやめて詩音の方を向く。


「なんだじゃないよ! この状況を理解して!」


 真羅は詩音の言葉に周りを見渡しようやく状況を察した。


「あいつら誰だ? そもそもここってどこだ?」


 すごく落ち着いた様子で呟いた。真羅は魔術師として様々な経験をしてきたため、これくらいで取り乱すことはなかった。


「それを今から説明してもらうんだよ! しっかりして!」


「そうか、悪かったな。つい癖で」


 真羅は今までの行動を思い返して申し訳なさそうにした。


「まあ、今回はいきなりだったしとっさに術式を読み取ろうしたことはいいけど、私たちのことをみんなに知られるわけにはいかないから気を付けてね」


 実は、彼女もまた魔術師なのだ。真羅とは幼い頃からの付き合いで、よく一緒に任務に当たっている。真羅は先ほどのように魔術のことになると、周りが見えなくなるため、詩音はそれを止めるストッパー役になっているのだ。


「ああ、取り敢えず説明してくれるならついて行ってみよう。敵意は感じないし」


「うん、そうだね」


 周りに合わせて二人は少女についていった。

 

 このとき真羅は現在の状況を理解したわけではなかったが、魔術師としての直感で、この先に何か大きな困難が待ち受けていることが分かった。






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