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魔女と精霊

やっと書く時間が取れた……。


「なあ、シンラ。お前は、“魔法”ってやつをどう思う?」


 結社の本部にある一室で、俺は魔術の師である、この妙齢の美女――魔女に訊ねられる。


「“魔法”、ですか? 魔術ではなくて?」 


 質問の意図が理解できず、俺は訊ね返す。


「ああ、魔術ではなく魔法だ。お前の考えでいいからを言ってみろ」


 師匠は不敵な笑みを浮かべて、豪奢な椅子に座りながら妖艶に足を組む。


「はあ……俺の勝手な自論でよければ……」


 師匠の意図は分からないが、取り敢えず俺は、自分の思う魔法というものについて話し始める。


「魔法とは、魔術が魔力に術式という指向性を持たせて理に干渉する技術に対し、魔法は術式ではなく、魔力に想念のみを込めて指向性を持たせるものです」


 師匠は笑みを湛えたままだが、黙って俺の話を聞いている。


「この考え方では、魔法とは魔術の原型であり、魔術はこれを応用、発展させたもの……いや、時代に適した形にしたものといえるでしょう」


 俺は淡々と自論を語っていく。


「人間を他の動物に変えたり、物に命を与えたりと、魔術で行うには複雑な工程を必要とするものでも、神話や御伽噺で出て来る魔法では、杖を振るだけでその現象を引き起こせています」


 具体的な例を出して説明する。俺の思う魔法とは、理を解して起こす“神秘”ではなく、願いと想いで起こす“奇跡”のことだ。


「しかし、想念のみで神秘を体現させるには、霊力(マナ)が神代の頃のように濃密でなければ成立しないため、現代においての魔法とは、実現不可能な“喪失神秘(ロストマジック)”に分類されています」


 俺が自論を話し終えると、師匠は不敵に微笑んだまま口を開く。


「ふむ。では、実現させるにはどうする?」


 この言葉に、俺はやっと師匠の意図を理解する。


「不可能と言いましたが、この奇跡を起こす方法がないわけではありません」


 俺も師匠と同じように不敵な笑みを浮かべる。

 今思えば、もともと無表情が基本だった俺がよく不敵な笑みを浮かべるのは、この師匠の影響なのかもしれない――いや、確実にそうだろう。


「方法はいくつかありますが、最も現実的なのは、精霊に力を借りることです」


 そう言うと俺は、御遣いの中で最も魔術に長けたディアを呼びだす。


「……」


 俺の隣に現れたディアは、彼女にしては珍しく、目を鋭く細めて師匠を警戒していた。彼女に限らず、他の四人の精霊たちも、師匠を敵視している。


 ――――何故だろう?  


「まあ、ディアは疑似精霊なので、自然の精霊ほどではありませんが、神威(シンイ)を代用して、魔法といえるような奇跡(モノ)を行使できます」


 精霊は霊力(マナ)の塊のような存在であり、この世に現界する際は肉体を持たず霊体の状態で存在している。しかし、それが原因で、霊力(マナ)の薄くなった現代では生息することができず、この世から姿を消してしまったのだ。そのため、現在で本物の精霊の力を借りるには、異界から召喚するぐらいしか方法がない。


「俺も彼女たちの力を借りれば、同じようなことができます。 ディア、頼む」


「うん」 


 俺はディアの力を借り、術式を編まずに頭にイメージを(えが)き、掌に炎を生み出す。すると、師匠の笑みが、不敵なものから朗笑に変わる。


「ふっ。合格だ」


「何が合格なんですか? そもそも、こんなのに正解なんてないでしょう」


 俺は掌の炎を消し、問い質すように師匠を軽く睨みつける。


「まあな。でも問題はそこじゃない――」


「――不可能だと思われていたものを、どうやって可能にするか。ということですか?」


 師匠の言おうとしたを、俺は先読みして言ってしまう。


「……ああ、そういうことだ」


 師匠は一瞬だけ驚いたように固まったが、すぐに嬉しそうな笑みを浮かべて、俺の言葉を肯定する。


「正直、魔法の方はどうでもいい。あんなの神代の頃のものだ。現代では大したことはできないし、そもそも人間が使うものじゃない。何故なら――」


「――神々が使うものだから……ですよね?」


 俺が再び先を読んで答えると、次は師匠の目が鋭く細められる。


「ほう……続けてみろ」


「……はい。 神霊は、人よりも高次の存在で、その存在は想念や概念といったものに近いものです。そのため、神は人より高次の視点でものを見られるので、魔法の行使には適しているでしょう。

 まあ、神霊の類は、それぞれ何かを司っているので、その司っているものによって、行使できる魔法は変わってしまいますがね」


 概念や想念といったものが神格化した神ならば、その司るものにまつわるものに長けているのは当然だろう。例えば、知識を司るディアが、魔術に長けているように。


「大規模なものだと、魔法というより“権能”といった方がいいかもしれませんけど……」

   

 最後に曖昧なことを言うと、俺は話を終える。

 生憎、俺は神様ではないので、細かいことまでは分からない。

 

「くくっ、合格だ。そのあたりは教えてなかったんだがな。お前、神と()り合ったことあったか?」


「そうですね。先月、師匠に悪霊討伐と唆されて、神霊の(たぐい)のモノと殺り合いましたね。それも、邪神や悪神に分類されるモノと……」


「はははっ、そうだったか?」


 俺の苦労も知らず、師匠は可笑しそうに腹を抱えて笑っている。


「笑い事じゃありませんよ。不完全な状態で顕現していたからなんとかできましたけど、完全な状態だったら殺されてましたよ」


「ははっ。でも、無事生還できたのならいいじゃないか」


 師匠は特に反省する様子もなく笑い続けるため、俺は思わず溜息を漏らしてしまう。


「いやぁ~。いつ間にか、我が愛弟子も立派になったな」


 ひとしきり笑うと師匠が過去を思い返すように、しみじみと目を瞑る。


「よし! 褒美に愛でてやろう。こっちに来い」


 そう言って師匠は手招きをするが、その二人の間にディアが割って入り、俺を守るようにして立ち塞がった。


「……だめ。(よこしま)なモノを感じる」

 

 師匠を威嚇するように、ディアは魔力を滾らせる。


「ほう。私と戦う気か? いくら神霊に近い存在でも、まだ生まれて数年のお前では、私には勝てんぞ?」


 それに対して、師匠は挑発するように嘲笑を浮かべ、妖艶な仕草で唇を舐める。

 その姿を見たディアは、珍しく不機嫌そうに眉を顰めて、ボソッと呟く。


「……若作りババア」


 ――ピキッ。


 師匠の眉間に青筋が浮かぶ。


「ははははははっ。 小娘が言うじゃないか……お前に礼儀というものを教えてやろう」


 楽しそうに笑い声を上げるが、目は一切笑っていない。膨大な魔力の上昇により、周囲の物理法則が崩壊し、周囲の物がポルターガイストでも起きたかように飛び交う。

 この年齢不詳の師匠に歳の話は禁句だ。マズイ、ディアが(ころ)される。いくらディアが高位精霊でも、数百年――いや、下手をすると千年以上の時を生きた、この大魔女には勝てない。


「おい、シンラ……こいつを借りるぞ。まあ、壊れるかもしれないが、それは許せ」


「いや、やめてくださいよ。ディアはまだ、生まれて数年しか経ってないんですから。 師匠も大人げないですよ」


 ここで取り乱してもしょうがない。俺は冷静に師匠を宥める。


「ディアも心配しなくても大丈夫だ」


 これでも師匠とは、物心ついた頃からの付き合いだ。機嫌の取り方ぐらいは心得ている。


「お若いからといって、むやみに暴れられると困ります。少しは自重してください。貴方が美しく輝くべき場所は、この場ではありません」

 

 取り敢えず、美しいや若いという言葉を混ぜれば、師匠の機嫌は良くなる。まだ俺が子供の頃なら、気が済むまで撫でさせれば、大人しくなったのだが、この年になるとこちらが困る。


「むっ……確かにこんな所で魔術をぶっ放すはマズイな。はははっ」


「そうですよ。ディアも戻ってくれ」


「……わかった」


 俺の言葉に師匠は機嫌を戻したようで、誤魔化すように笑う。すると、部屋に満ちていた魔力が霧散して、飛び交っていた物が床に落ちる。

 ディアも不満そうだが、素直に俺の中に戻っていった。


「それで、師匠。今回、俺をなんで呼んだんですか?」

 

「あれ? い――」


「――言ってません」


 師匠が言い終わる前に、力強く否定する。

 緊急の問題が発生したと、同僚には聞いたが、師匠からはまだ何も聞かせれていない。


 ――――緊急の案件を伝え忘れるとは……最強の魔女も歳には敵わない(ボケてしまった)のだろうか?


「おい……今、凄く失礼なこと考えてただろ?」


「――? 何を言ってるんですか?」


 俺はただ師匠の身を按じているだけなのだが。

 いや、俺より遥か高みにいる師匠に、こんなことを思うのは返って失礼か。


「なんか烏滸(おこ)がましいことを思ってすいませんでした」


「………お前ってホント、純粋だよな……」


 何故か師匠が、まるで孫でも見守るような優しい眼差しで見つめてくる。しかしそれは、どこか悲哀を漂いさせていて、まるで嘆いているようにも見える。


「はあ……そうですか? 自分ではかなり汚れてると思うのですが……」


「いや……お前は純粋だよ」


 師匠は何を言っているのだろうか? 

 俺は任務で様々な裏の仕事を行っている。それこそ、法を犯すようなことや道徳を踏み躙るようなことでも、何の躊躇いも罪悪感もなく行ってきた。そして、その過程で多くの人間を手に掛けてきた。同じ魔術師だけでなく、何の罪もない一般人までもだ。

 

 そんな俺が純粋なわけがない。自分で言うのもなんだが、性根が完全に腐っているだろう。


「だからだよ」


 俺の心を読んだのか、師匠は全てを見透かすような双眸で見据えてくる。


「お前は何色にも染まらない。(しろ)にも(くろ)にも染まらず、ただ己が信じた道をひたすら突き進む……それがお前――魔術師、神威真羅(かむいしんら)だろ?」


「……」


 俺はそれを否定の肯定もできず、ただ黙って師匠を見つめた。

 彼女の言葉を否定すれば、魔術師としての道を否定してしまうようなものだ。しかし、だからといって、肯定してしまえば、自分が人間ではないと言っているのと同じだ。

 

 人間は生まれながらに“原罪”を持っている。

 それは歳を重ねていくごとに大きくなり、人を黒く染め上げていく。だが人は、それと並行して、道理を理解していき、理性を成長させ、己を白で塗り替えていく。

 しかし、真羅にはそれがない。彼はどちらにも染まらず、生まれた時(・・・・・)から魔術師(おのれ)の道を歩み続けている。何の迷いも疑問もなく、本能的に、ただひたすら……。

 

 

「ふっ、話がズレたな」


 しばらく沈黙が続くと、師匠が可笑しそうに笑い声を漏らした。

 どうやら、ただ単に俺をからかっていただけのようだ。


「今回、お前には、ある任務をやってもらいたい」


「任務、ですか……」


「ああ、実は、『黒の祭壇』の連中が妙なことを企んでいるようでな」

 

 『黒の祭壇』とは、死霊魔術を専門に扱う死霊術師(ネクロマンサー)たちが立ち上げた魔術結社で、何かと悪い噂が絶えない組織だ。『魔導連合』にも加盟していないため、よく教会の連中と衝突していると聞いている。


「噂なら聞いたことがあります。なんでも、かなり危ない儀式を行おうとしていると」

 

「ああ、だからそこに潜入してその全貌を暴いてこい、ソーマ。 これはお前の師としてでなく、『神秘の記録』の魔術師、マギステル・ウィッチとしての命令だ」


 師匠が――いや、『神秘の記録』幹部、神話(ミュートロギア)(クラス)の大魔術師。大魔女、マギステル・ウィッチが俺に命じてくる。その姿は、先ほどまでのふざけた雰囲気が消え、幾多の魔術師や怪異を屠ってきた最強の魔女の覇気を纏っている。


「分かりました。魔術師、ソーマ。その任務、承ります」


 俺もまた『神秘の記録』の魔術師として応えた。

 

 だが、このときの俺はまだ知らなかった。

 この先で、地獄を目にしてしまうことを……

 

 







 ふと、意識が覚醒する。

 重たい目蓋を上げると、視界には夕焼けに染まった美しい空が目に入ってきた。


「あの時の夢か……」


 空中で寝転がっていた真羅は、夕陽を眩しげに眺めながら呟いた。


「生霊事件……生霊か。そんな生易しいモノではなかったけどな」


 ――――胸くそ悪いことを思い出したな。


 真羅は心底不快そうに顔を歪める。


「そういえば、向こうでも魔法っていう概念はあったな……」


 生霊事件が印象に残り過ぎていたため、魔法のことを忘れていたようだ。


「まあ、この世界ほど霊力(マナ)が濃ければ、御伽噺に出てくるような魔法でも可能かもな」


 今度は楽しげに笑い始める。この男は過去を引きずらないのだ。 


「ん?」


 ふと何か気配を感じて立ち上がると、真羅の目の前にエルマが現れる。


「ああ、無事に終わったみたいだな。ご苦労さま」


「ふふっ。こちらは随分と派手にやったようですね」


「まあな」


 真羅は悪びれもせずに、自身が作ったクレーターに着地する。


「他の四人はどうした?」


「ふふ、すぐに来ますよ」


 エルマがそう言うと、上空から複数の人影が下りてくる。


「……来たな。みんな、お疲れさん。大丈夫だったか?」


 真羅が振り返ると、そこにはエルマにどことなく似た四人の少女が立っていた。

 

「うん!」


 無邪気に笑う少女――“(あか)の御遣い”ルビア。


「はい。問題ありません」


 クールにお辞儀をする少女――“(あお)の御遣い”フィル。


「おう。楽勝だったぜ」


 好戦的な笑みを浮かべる少女――“(きん)の御遣い”ラムル。


「……ん」


 無表情で佇む少女――“(くろ)の御遣い”ディア。


「ふふ。これで“御遣い”が揃いましたね」


 背後で微笑んでいる女性――“(みどり)の御遣い”エルマ。

 

 彼女たちは、真羅が生み出した最初の精霊。始まりにして最高の疑似精霊。

 その力は今や聖霊すら凌駕し、神霊にも匹敵する。しかし、その在り方は人に近く、経験を積み重ね、成長していく精霊――“五色(ごしき)の御遣い”。

 それぞれが異なる(モノ)を司り、常に真羅の傍らで彼を守護している。


「そういや、シン。なんで“神威(シンイ)”をぶっ放したんだ?」


「……ん? ああ、あれか」


 ラムルの何気ない問いに、真羅は今思い出したとばかりに、先ほどまで敵がいた所に目をやる。


「向こうが隠してることに勘付いたんだ。だから少しだけ見せてやった」


 真羅は自嘲の笑みを浮かべ、「俺もまだ未熟だな」と溜息を吐く。

 しかし、それは聞き捨てならないと、フィルが声を上げる。


「“神威”を見抜かれたのですか? “神威”は人に――いや通常の生物が認知することなどできるはずが……」


「ああ、見抜かれわけじゃない。ただ“何かある”と感じただけだろう。まったく、戦士の感ってやつは厄介だよ」


 ――“神威(シンイ)”とは、神威(かむい)家の者が秘めている固有(なぞ)の力である。

 千年以上続いていると伝わる神威家だが、その起源について明確な記録は残っておらず、判明していることは、かつて人外の“魔”と交わったことと、この“力”を秘めているということだけだ。

 そして、この“神威(シンイ)”だが、かなり特殊な性質を持っていて、本人の意思次第で如何なる特性でも帯びさせることが可能であり、魔力のように術を編むことや、先ほどのように物質を消滅させることもできるのだ。しかし、何故か神威家の直系の者にしか発現せず、現在この力を秘めているのは、彼を含めて三人しかいない。


「仮に見抜かれたとしても、初めに殴ったときに時間差で発動する忘却の魔術を仕掛けておいたから、あのまま逃げたとしても俺のことなんかすぐに忘れただろうよ。まあ、どのみちヤツは消滅したから、気にする必要はないさ」

 

「そうですか……」


 まだ納得しきれていないようだが、フィルは軽く会釈をして口を噤んでしまう。しかし、それを見ていたルビアがおかしそうに笑い出した。


「もう~。フィルは心配性だなー。シンくんがそんなへまをするわけないじゃん」


「はあー。貴方が能天気すぎるだけですよ」


「えー。そんなことないよー。だってバレてもそんな問題ないじゃん」


「……」

 

 楽天的なルビアに対し、フィルが呆れ気味に溜息を吐く。しかし、ルビアの言葉を否定することができず、そのまま押し黙ってしまう。


「ふふっ。まあまあ、二人とも。終わったことを気にしてもしょうがないわ」


「だな。つーか、よかったのか、シン? 異世界の魔人なんてレアな研究資料を消しちまって」


 エルマが二人を宥め始めると、興味を失ったラムルが真羅に訊ねてくる。何気にシャルアのことを実験動物としか捉えていない彼女だが、真羅も真羅でその程度のものとしか認識していないようで、特に気にする様子もない。


「ああ、問題ない。あんなデカブツあってもジャマだし。それに――」


 突如、不敵な笑みを浮かべると、真羅はおもむろに舌を出した。


「――もう、アレの(じょうほう)は手に入れたからな」


 晒された彼の舌には、複雑怪奇な魔法陣が刻まれていた。不気味に輝くソレは、まるで生き物のように流動していて、先ほどの返り血を啜っているようにも見える。


「そーか、なら問題ないな」


 真羅の舌を見たラムルは納得したようにヘラヘラと笑い始める。当然、実験動物(シャルア)の扱いのことなど歯牙にもかけていない。


「ねー、シンくん。この後どうするの?」


 周囲をぶらぶらしていたルビアが退屈に堪え兼ねたようで、つまらなそうに真羅に訊ねてくる。

 この精霊たちの思考は、真羅に創り出されただけあって基本的に彼と似通っているのだ。


「ん、そうだな……まずはここから離れた町で魔導関連の情報収集を――ん?」


 突如、真羅が話を打ち切り、真剣な表情で森の奥を見据え始める。


「どうし――ん?」


 突然話を中断した真羅を、不思議そうに見ていたラムルも、何かに気付いたようで、目を細めて森の奥を睨みつける。彼女だけでなく、他の四人もその異常に気付いたようで、同じ方に視線を向けていた。


「これは……。みんな、予定変更。森の奥に行こう」


 いつになく真剣な様子の真羅に、五人も無言で頷くと、霊体化して彼の中に戻る。


「まったく……何でこんなのを放置してるんだ。こっちの方が、魔人族なんかよりよっぽど危険だろうが」


 呆れるように愚痴を吐くと、真羅は地面を蹴って森の奥へ向かった。


 後に残ったのは、巨大なクレーターだけで、魔物の死体も魔人の亡骸も全て消え失せていた。

 


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