プロローグ
初投稿です。未熟なため色々と拙いところがあると思いますが、どうぞよろしくお願いします。
窓から光が差し込んできた。カーテンが閉まっているため部屋は薄暗いが、差し込んできた朝日が部屋の主を照らす。
部屋の中には一人の男が机の上に打っ伏して寝ていた。机の上には開きっぱなしの古めかしい本があり、ペンや紙が散乱していた。
男は朝日に当たると、もそもそと動き目を覚ました。
「ふぅぁぁ~」
男は欠伸をしながら伸びをすると、眠たそうに目をこすった。
「このまま寝ちまったのか」
男は周りの状況を確認すると、欠伸を噛み殺して立ち上がった。
そして、男はそのまま窓まで行くとカーテンを開けた。窓から入る光が薄暗い部屋を照らしていき、男の姿がはっきりしていく。
男の容姿は黒髪黒目で、見た目は十八歳前後の少年だった。顔立ちは整っているが、現在は寝癖がつき目も眠たげに細めている。
少年は眠たげに細めた目で壁に掛かったカレンダーを見ると、何かを思い出したように呟いた。
「ああ、そういえば今日は学園祭の最終日だったな」
少年が言った通り現在は少年が通っている学校の学園祭の真っ最中であり、今日がその最終日だった。昨日も学園祭だったにもかかわらず、何故この少年が忘れていたのかというと、原因は机の上に置かれた本にある。
「こいつの研究も中々面白くなってきたところだったのにな」
少年は最近、机の上にある本の解読に夢中になっていて、昨日も学校から帰ってくるなりすぐ、机にかじりついていたのである。
少年は散らかっている机を見て溜息をつくと、椅子に座り片付けを始めた。
「まあ、明日は代休だし、続きは明日やるか」
少年はそのまま片付け終えると、椅子に座ったまま伸びをして背もたれに寄り掛かった。
すると突然、机の引き出しが開いて何か白いものが飛び出した。
その白いものは机に着地すると、その正体が明らかになった。それは白い毛につぶらな瞳、少したれ気味の可愛らしい耳を持ったハムスターだった。
「おはよう、ユキ。今起きたのか?」
ユキと呼ばれたハムスターは、少年の方を見ると、コクンと頷いた。そして、机の上にまとめておいた紙の束や本を見ると、心なしかジト目で少年の顔を見つめる。
「おいおい。そんな目で見ないでくれよ。ずっと前から欲しかったやつなんだぜ。熱中しても仕方ないだろう?」
それを聞いたユキは、少年に少し呆れるような視線を向けた。
「こいつを手に入れるの大変だったんだぞ」
少年は本を指差しながら、その本を入手するときの苦労を思い返した。ユキもそのことを察したのか、視線を向けるのをやめて丸くなった。
少年はその様子を見るとユキの頭を撫でた。ユキは気持ちよさそうに目を細めると、そのまま寝てしまった。
ユキが眠るのを見届けると少年も目を閉じた。
しかし、何故だか妙な胸騒ぎがして目を開けるとおもむろに立ち上がった。
少年は隣の棚からカードケースと折りたたまれた羊皮紙を取り出した。そして、その羊皮紙を机の上に広げる。
それには大きな三角形と三つの円を中心とした不思議な図柄が描かれていた。
「さて、始めるか」
少年はケースからカードを取り出した。そのカードはどうやらタロットカードのようで、少年はそのカードをシャッフルすると上から一枚だけ引く。引いたカードを裏返すと、それには魔術師と書かれていた。
少年は魔術師のカードを不思議な図柄――魔法陣の中心に置く。そしてさらにカードを三枚引くと、そのままカードをそれぞれ三角形の角の部分に描かれている円に置いた。
少年はカードを並び終えると、魔術師のカードの上に手を置く。
「――我が運命を示せ」
少年がそう呟くと魔法陣が一瞬だけだが輝いた。
少年は魔術師のカードから手を放すと、他の三枚のカードを裏返した。
「はぁ~。やっぱりか」
どうやら結果に不満があったようで、少年は溜息をついた。
「この占い、よく当たるんだよなぁ~」
少年はカードをケースに戻し羊皮紙を折りたたむと、それをズボンのポケットに突っ込んだ。
「そろそろ支度をしないと遅れるか」
少年は時計を見ながら呟くと、椅子に掛けてあった制服のブレザーを羽織って部屋のドアに向かって歩き出した。少年が歩き出すと、寝ていたユキは目を覚まして少年の肩に飛び乗った。
「今日は何か面倒なことが起こりそうだな」
少年はドアを開けて部屋の外に出る。
「まあ、面倒ごとなんていつものことか」
少年はそう呟いて不敵に笑った。