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屋根裏の猫

作者: 九重九十九

ゴトッ、ゴトッ!

(あいつ、また屋根裏部屋に入ったな!)

俺には小さな弟がいる。小さなといってと、小学校中学年というヤンチャ盛りな年頃だ。

つい先日、何処からか家の至る所で猫の鳴き声がきこえるという事件というほどでもないがが我が家で起こった。真っ先に疑われたのが弟が家族に内緒で猫を拾ってきたのではということ、しかし、弟はこれを否定。

なら、次に疑われるのは俺ということで、両親は俺の部屋をガサ入れしにやってきた。俺は「猫なんて知らない、だから部屋に入ってくるな!」と言ったのだが、あいつらは全く聞く耳を持たなかった。押入れの中や机の引き出しの中まで荒らされて、いままで見つかってなかった秘蔵のコレクションの存在を両親に知られてしまった。結果的には俺の猫に対する疑いは晴れたのだが、それに引き換え俺は大切なものをうしなったようなきがした。

話を戻そう。

弟でもなく、俺が拾ってきたわけでもないとしたらあとはどうなのだろうか、そういう話になってくる。

そして、まだ見ていないところに猫がいるのではという話になるのはある意味当然だったと言えるだろう。ならば、そこは何処か?

答えは屋根裏部屋だ。

ウチには屋根裏部屋なんてものは無いのだが、屋根裏にある空間のことを屋根裏部屋というのだから仕方がない。

俺の部屋をガサ入れされた翌日、親父が冬物の布団なんかを入れている押入れから屋根裏部屋に入った。

(そもそも、俺はこんなところから屋根裏に入れるなんて知りもしなかったので、最初見たときは本当に何をしているのかわからなかった)

俺と弟は、未知の屋根裏部屋について数年ぶりに意気投合して話し合っているうちに、親父が屋根裏部屋からでてくる。親父の手には、見るからに弱っている黒色の猫がいた。

弟が興奮したように親父に近付く。

「トーチャン猫おったんか!」

「近付くな、お前は動物の毛がダメなんだから」

「その猫どうするん?」

「どうもせん、外に逃がしてくるに決まってるだろ」

親父は弟にそう言って、外に出て行ってしまった。車の音がしたから俺は(遠くまで捨てに行くのか)なんて思っていたのを覚えている。

その日以来、当たり前だが猫の声は聞こえなくなった。

だがしかし、その日から学校から帰ってきた弟の姿が見えなくなることが多くなった、最初俺は不審に思ったが、屋根裏からゴトゴト音が聞こえることから、弟の姿が見えない時は屋根裏部屋に入っているのだろうと決めつけた。

動物の毛がダメなくせに、自分から埃っぽいところに行くなんてバカなやつだとも思ったが、あいつに口出しする必要性もないので放っておいた。


親父が猫を捨てに行って一週間がたった。

弟の屋根裏生活も日に日に騒がしくなっていった。

今日なんかいつもよりもゴトゴト入っている気がする。これはもう、夕食の時にでも一言言ってやらないといけない。そう決意した。


その日の夕食でのこと。

「おい」

「なんなニーチャン」

「お前最近屋根裏でうるさくしすぎだぞ」

俺の一言で目の色を変えたのはお袋だった。

「アンタ屋根裏に入ったんね!」

「入っちょらんよ! 前に入ろうとした時に怒られたから、それから入ろうとしたことはないって! ニーチャンも適当なこと言わんといてな!」

お袋は普段は優しそうなのだが怒ると怖い、親父もお袋には逆らえないほどと言っておけばだいたい伝わるだろう。

「だいたい、僕は学校から帰ってきたらすぐリョウ君とこに遊びに行ってるから屋根裏に入れるはずがないんやん」

「嘘つくな」

「嘘やない! カーチャンも知ってるでしょ?」

「そうね、確かにその通りだわ」

どうやら本当らしい。

「なら、俺が最近聞いているあのゴトゴトした音はなんなんだよ」

「もー、食事中に怖いこと言うのやめてくれる? お父さんも何か言ってください」

「案外、猫がまた戻ってきたのかもな」

そういった親父の目が線の細い猫の目みたいに見えたのは見間違いだったと信じたい。

でも、よくよく考えてみると俺の親父は全く冗談を言うような人間では無かったはずだ、もしかしたら、親父は猫に取り憑かれて……なんて、そんなことを思ってしまった。

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