1話
特殊能力ーー。
親からの遺伝だったり、窮地に立たされるなどの外的要因から発現する能力。
当時、能力者は珍しかった。ところが、10年前のある事件により当時の小学生が被害者となり、能力者が急増したという。
どんな事件だったかは、思い出したくない。
「ちょっと真白! 小池真白ーっ!」
「えっ……と何?」
「何?じゃないわよ! ぼーっとしないでよ。警察に迷惑かけるじゃない」
「……あ、ごめん」
現在、俺は高橋灯火と警察の手伝いをしていた。
厳密には、俺と灯火の所属する『生徒会』が警察の手伝いをしている。
「いい? 相手はナイフを所持してる。さらに、能力者よ」
「ん……」
電柱の影から相手を伺う。20代男性といったところか。
此処から相手までの距離は80m。俺の能力効果範囲内だ。
「とりあえず牽制がてらに投げナイフでも移動させ……」
……あ。
「あのーそこのお兄さん? 右手に持ってるのはナイフですか〜?」
ゆるふわ黒髪ロングの女性が、俺らがマークしていた相手に話しかけている。
あ、あ、あれは……!!
「ちょ、真白!? ……ってげっ!」
俺は電柱の影から飛び出す。後ろでは灯火の「げっ!」という声が聞こえる。
「おいおい、ねえちゃん。いい度胸してんなァ…死にてぇんだなァ!!」
「だれもそんな事言ってませんってばー」
あああもう! 空気読まなすぎ!!
男が女性に向かってナイフを振り下ろす。それに合わせて、俺はナイフを瞬間移動させた。
「はい、ストップ!」
移動させたナイフで相手を牽制する。相手を牽制したまま、女性の方を向く。
「さすが、真白ちゃん。私が話しかけてからまだ1分も経ってないよ?」
「お願いだから作戦外のことをしないでくれるかな姉さん。それとちゃん付けはやめて」
先ほどのゆるふわ黒髪ロングは姉・小池黒姫。かなりズレている姉だ。
−−パァンッ
突然の乾いた銃声。音のした方を向くと、そこには拳銃を持った灯火がいた。
「私は言ったわよね、相手は能力者だって」
男はナイフを硬化した腕で叩き落とそうとして撃たれ、悶えていた。
◆
警察に男性を引き渡し、灯火から説教を食らったあとのこと。現場に人影が見えた。服装的に学生…青年だろうか。
それよりも、ここらへんは確か立ち入り禁止にしていたはずだ。それに、規制を解除した覚えもない。
これは注意してやらねば。
「あの、まだこの周辺の規制は解除されていないんですが」
後ろを向いていて表情は分からないが、反応はなし。ちゃんと聞いてるのか?
「あの、聞いてます? この周辺の規制は−−」
「……聞いてる」
……はい? 今こいつなんて言った?
聞いてる、だと?
「だったら出てくれませんか? そうゆうの、困るんで」
「……わかった」
そう言って俺が瞬きをした瞬間。その青年はいなかった。
あらすじにも書いてますが、更新ペースは亀さんです。