死神は戦いに加勢することになった
※他作品のリスペクトが垣間見える話になってしまっています。
寝不足気味の今日この頃。
昨日は夜遅くまで封印の勉強をしていた。
いくら今日入れて11日はあるとは言え、本腰入れてやらなければ命に関わる。
しかし、結局見つからなかった。
「ち~~~~っす」
「……よう、撃沈男」
「うわぁ~~~~、それを言うなぁ~~~~!!!」
分かりやすいやつだ。
東は朝から机を抱えておいおい泣き出した。
「騒々しいのは嫌いだ。屋上でも行ってくれ」
「屋上はヤッコさんのテリトリー……」
「……」
ヤッコさん、すなわち山渕の『滅却士』のことだが、今日は学校に来ているらしい。
ホームルームまで時間がある。挨拶でもしてこよう。
「あぁ、何処行くんですかぁ?」
「お前はここでクラスメイトの相手でもしていろ、死神女」
後ろから興味深々に着いてこようとする
「“死神女”じゃありませんですぅ! 私は」
「“極悪”死神ファーディアス=ブロウクラウ。3サイズは上から」
「うわわわわぁ~~~~、そのネタはNGですぅ!!」
こういう言い回しでうろたえるところ、この時代のことにかなり馴染んでいるようだ。
それまた妙な話ではあるが……
「来ても殺されるだけかもしれんぞ?」
山渕とはそういう人物だ。
相手が死神なら尚更だ。
「?」
しかし、首を横に傾げながらも俺の後についてくるのをやめない。
どうも変な生き物になつかれてしまったようだ。
朝の屋上。
今日は晴れているため朝日が少し温かい。
と、いきなり突風が吹き荒れ、何かがこちらに急速に接近してくる。
俺はそれを横に跳んで避ける。
背後にいた死神女は何が起きたか分からない様子。つまり手遅れ。
ガキン――――――
「何者?」
死神女の前に刀をかまえている女子生徒。
黒縁メガネに、長髪をポニーテイルにしている地味といえば地味な風格。
相対する死神女は、蔵で初めて会ったときに持っていたあの馬鹿でかい鍵で山渕の持つ刀を防いでいる。
死神というのは伊達ではないということか。
双方、似た見合ったまましばし時が流れる。
「……お前、“魔”?」
「はい? なんのことですぅか?」
「……」
山渕は刀を鞘に収めて空中で霧散させた。
滅却士の武器はすべて必要に応じていつでもどこでも取り出せるようになっている。
死神女のあの鍵も同じようなものなのだろう。
「否、少々異物。……十三河式神?」
抑揚のない機械染みた口調。そして、鋭い目つきで俺を睨む。
この女子生徒が山渕灯という。
睨んだのは事実だが、目つきがきついのはメガネが合っていないから。
いい加減買い換えればいいものを。
「いや、それならわざわざ学校にいないさ。」
「近況。“魔”の続出。襲来!」
「……」
山渕が何もない方向へ構える。
そして厭な感じの空気が流れる。堕気があたりを覆いだしたのだ。
「ちっ、死神女!!」
「は、はい?」
「加勢しろ!」
「え……あ、はい~」
『退魔士』は『滅却士』のように決まった武器はない。
状況に合わせて使い分けている。効果はあるが破壊力にかけるというわけだ。
今来る“魔”は早坂先生に憑いていたものとは比べ物にならない巨大な力の塊。
そして、その力が実体を現す。
「ぐぉおおおおおぉおおおおお!!!!」
「うわわわ、大魔鬼じゃないですぅか!?」
死神女は慌てふためいている。
『大魔鬼』とは読んだ字の如く、大きな鬼の形をした『魔』である。
しかし、目鼻口といった顔や髪の毛、角などはなく、巨人のシルエットがそこにあるだけ。
「魔、滅却開始!」
山渕は滅却用の剣を出現させ、鞘から引き抜く。
現れたのは白銀の刀身ではなく、ベースが黒で宝石や模様の浮き彫りが施された装飾刀だった。
本来こういったものは儀式用として使われる物だが、魔が相手になると魔除けに使われる。
「滅!!」
山渕が巨大な魔目掛けて跳躍、そのまま刀を振り下ろす。
しかし、その刀は巨大な右腕で防がれてしまった。
「ぐおおおおおおおおおお!!!!」
大魔鬼はそのまま山渕を押し返す。
もともと体の大きさが違い過ぎる。
あっさり向こう側のフェンスに叩きつけられた。
「あわわ、あんな刃のない武器で倒せるんですぅか?」
また変な語尾で喋る死神女。この場にはとてもふさわしくない。
「だから加勢しろといったんだ。大魔鬼の討伐はお前ら死神の専門だろ?」
「う……はい、頑張ります」
「努力はいらん。結果を出せ、死神」
「広貴さん、手厳しいですぅ~……」
おそるおそる死神女は前に出て、巨大な鍵をブンブン振り回して地面に叩きつける。
「め……芽吹けぇ、銀桜!!!」
鍵が霧散する。それと同時に大魔鬼の周囲に銀に光る花びらが出現する。
大魔鬼はそれに驚いている様子だ。
「集結!!」
両手をパチンと合わせる。
それに呼応する形で、銀の花びらが大魔鬼に集まっていく。
あっという間に銀色のシルエットと化した巨人は、断末魔をあげながら消えていった。
「……50点」
「えぇ!? 何がですかぁ??」
花びらが鍵の形に集まって消えた。
やはりいつでも何処でも使えるように異空間に置いておけるようだ。
「さっきの戦闘だ。タイムは5秒。これは満点にしてやってもいいが、技が目立ちすぎ」
「はぁ」
「それに、力の解放時が“某少年紙の死神漫画のパクリ”」
「あぅ……それは」
「死神ならもっとアレンジを加えて華麗に美しく、そして何よりも目立つな」
つまるところ、さっきの戦闘の眩しすぎる光やら爆発音やらで生徒たちが屋上に集まってきていたのだ。
「どう説明するつもりだ、極悪死神?」
「あ、それなら心配いりませんですぅー!!」
自信満々に腕組みをして制服の内ポケットからじゃじゃ~んと何かを取り出す。
それは小さな小瓶で中に透明の液体が入っていた。
「忘却香ですぅ~。これをこうやってささっとまけばあ~ら不思議ですぅ~♪」
蓋をあけてそのまま空に放り投げる。
まくというより、ぶちまけるという表現が正しい。
すると、
「あれぇ? 俺ら何やってたんだっけ?」
「あ、ホームルーム始まっちゃうじゃない!」
「こらぁ、教室に戻らんか!!」
生徒たち(先生も含む)は時間だけを気にしていそいそと教室に戻っていった。
「……80点でギリギリ合格にしてやる」
「わぁ~いですぅ♪ って、なんで広貴さんに採点してもらってるですぅか!?」
頭にクエスチョンマークを浮かべながら考える死神。
そんな悩める彼女の頭をワシャワシャと撫でてやる。
「わわわ、な、なんですぅか?」
「ご褒美だ、ありがたく受け取れ」
そういって、フェンスに吹っ飛ばされた山渕のところに歩み寄る。
「……授業、受けてけ」
「不覚、重症、屈辱、敗走、未熟、訓練必須、故、帰宅、当面山滞在」
ひたすら単語をブツブツつぶやくこの戦闘マシーンはどうやら勉強する気がないらしい。
「だからお前は馬鹿で弱いんだろ?」
「……理由教授希望」
「ちょいと昔に言われたことがあってな、『人間一人では何もできない』だとよ。」
山渕はしばらくうな垂れていた。
「守りたいものを作れ。それが人として強くなれる一番の近道だ」
「否、我人非ず。滅却士」
「はいはい。おい、死神女?」
さっき撫でてやったことで乱れた髪を直していた奴は、我にかえった様子でこっちを見た。
「なんですぅ?」
「山渕を保健室に連れてってやってくれ。一応レディーなんでな、俺が連れて行くわけにもいかんだろ?」
死神女は最初は渋ったが、すぐに肩に手を回して連れて行った。
その姿を見ると、右足と左手首が折れていることがわかる。
まったく、無茶するもんだな、滅却士ってのは。
「騒がしかったけど、何かあったのか?」
東はあの状況下で何が起きたのか気づかなかったようだ。
「東、お前は本当に呪術士になのか?」
「おう、正当なる東家の次期頭首……って、まさかデカいのが出たとか?」
「当たりだ。さっき山渕を保健室に連れて行かせた」
ことの一部始終を伝える。
その間、東はうわぁとか、げげっのような感情豊かなリアクションをする。
本当に山渕とは正反対の性格をしている。
時刻はあっという間に昼食時間となる。東には伝えることはすべて話した。
今日は食堂に行こう。
「お、おい、ヤッコさんの見舞い行かなくていいのか?」
「……なんだ東? 気になるなら傍にいてやればいいじゃないか?」
珍しいこともあるものだ。
山渕という人間はどんなに心が寛大な人からも好かれないタイプだ。
そんなやつを東が気遣うとは……
「べっ、別に気になりは……するけどよぉ~」
わかりやすいやつだ。まぁここは“協力者”ということで付き合ってやろう。
「わかった、行こう。おい、死神女?」
教室で大声でそいつを呼ぶ。
本来ならこういう呼び方は人前で使うとよくないが、早くもこいつの名前に“シニガミサマ”というあだ名が付いていた。
理由は単純。今テレビアニメとして放送している、とある番組に超美形の死神が登場するとかで、名前がファディスとかいうらしい。
名前が似ているからとそういうあだ名がたった一日で定着したそうな。
テレビの力は恐ろしい限りだ。
「なんですぅか?」
そいつはまさに弁当を食べようとしていたようで、うんざり気味だ。
「付いて来い。そっちの方が効率がいい」
「はぁ……何処に行くんですぅか?」
「保健室だ」
効率がいいというのは、この死神女が面倒ごとを起こさないように監視するため。
……あの蔵に封じられていたのだがら一応、悪霊である。
退魔士として、魔の監視は当然の行為である。
「それでどうして保健室なんかに行くんですぅか?」
「……こいつがどうしても行きたいそうだ」
「うえ!? お、俺は“協力者”として……そういや」
「はい?」
東は昨日ふられたにも関わらず、死神女に話かける。
「『死神』って本当?」
「はい。正真正銘の死神ですぅ~ブイ!」
とニコニコしながらピースをする。
そう、さきほど事のいきさつを説明したときにポロっと言ってしまったのだ。
まぁそんなことを問題視することもあるまい。
大体、喋ったところで信じる人間はよほどの変人か、狂人しかいない。
「……馬鹿やってる暇があったらとっとと歩け。昼休みは短い」
『はぁ~い。』
妙のシンクロしている東と死神女は無視して保健室に入る。
カーテンが閉まっているのは一箇所。そこに山渕が寝ている。
「あぁ、いらっしゃ~い」
奥から耳障りなくらい甘ったるい声がした。保険医の渡辺敏子先生である。
ちなみにここは店ではない、保健室だ。
しかし、彼女が今のようなことをぬかすと未成年の入ってはいけない場所のように感じてしまう。
例のごとく(?)、東がアタックして撃沈させている美女なのだが、俺は興味がない。
「山渕さんならぁ寝てるわよぉ~」
「……そうですか。東、俺は戻る。行くぞ、死神女」
「え? あ、ちょっと待ってくださいですぅ~」
手を上げて東にサインを送っておくことも忘れない。
GOOD LUCK!
洋画の登場人物が言っている気持ちが分かった気がする。
「おいおい、お前何のために来たんだよ!?」
予想通りのツッコミどうも。
「なに、俺はきっかけを作ったまでだ。あとはお前次第というやつだ、グッドラック!」
再度繰り返す形になってしまったが、現実には一回目だ。
「貴様、親指立てるポーズが似合わな過ぎだ! このムッツリクール野郎!!」
ちなみに俺は学校で、東が今言ったとおりのイメージで通している。
東は言葉の割には顔が少しほころんでいるところ、作戦は成功。
この見返りは高くつくぞと視線だけで訴え、その場を去る俺だった。
「あのぉ~……」
「なんだ、死神女?」
「あのあの……」
「東のことなら気にするな。いつものことだからな」
廊下を歩きながらの会話。
改めて、紫髪の女と一緒にいれば周囲の目が気になる。
これも慣れていくしかないだろう。あと少しの辛抱だ。
昼休みもあと7分くらい。ゆっくり歩いても授業には間に合う。
「いや、そうじゃなくてですぅね……」
「なんだ? 腹が減ったなら諦めろ。昼飯を食う時間はもうない」
「いや……そうじゃなくて」
「ならなんだ?」
いじっかしいのは嫌いだ。「とっとと答えろ、この極悪死神!!」と怒鳴ろうとしたところ、奴の顔が妙に赤いことに気づいた。
数秒後、頭の中の豆電球が点灯した。
「お手洗いならあそこだ」
「あぅ~~~~~、どうして妙なところに気をつかうですぅか、広貴さんはぁ~~!!」
と、気づいた。
保健室を出たあたりから手をずっと握りっぱなしだったのだ。
「……ほう、死神でも照れるんだな?」
「ううう~~~~、どうしてそんな平常心をたもてるんですぅかぁ~~!!!」
煙が吹き出んばかりに怒鳴る死神女。
別にこいつといても恋愛感情など湧いてこいと脅されても湧いてこない。
だから別に焦りもしない。
「焦っても仕方ない。ここまで周囲の生徒に見られてしまったのは事実。不可抗力かつ、不本意ではあるが今度は首輪にでもしておこう」
つまり、今回の反省点はこの死神女をどのようにして引っ張るかだ。
今日の経験から、やはり手をつなぐのはいろいろメンドーだということが判明。
ではどうするか。
思いついたのは、首輪をつけて犬のように暴れる死神を押さえるのだ。
「あの~、話があさっての方に向いてますぅけど……」
「おっと、つまりお前は俺と手を繋ぐことを嫌うというわけだな?」
「広貴さんって天然ですぅかぁ~?」
そんなこと、生まれて初めて言われた。
それと、
「平安から生きている割には妙に現代な言葉を使うんだな?」
「……」
それから死神女は黙り込む。諦めてくれたらしい。
まぁこれも俺の作戦ではあるのだが……
「……『死神とは元来、この世に迷える魂をあの世に誘うソウルコンダクターである。ここ数世紀、彼らはこの世で穢れた霊気、“魔”を吸収してたびたび悪霊として生物に悪影響を及ぼしている。その“魔”の出現により、死神の仕事が大きく変化した。つまり、“魔”にあてられた魂を浄化するということが追加された。』か」
我が家の書庫にいる。
先日、親父が鍵をよこした、“開かずの書庫”ではなく、普通に解放されている書庫である。
今読んだのは『幻魔との戦い方~入門編②~』の死神とは?という項目の序文。
ようは、死神の基本知識を学んでいるわけだ。
封印となると、大きく応用が必要なので特性を頭に入れておくことが必要となる。
ここで出てきた“魔”に対しては、すでに何回か封印に成功している。
あとはそれとは全く違う“魔”、つまり『死神の封印』を完成させれば俺もはれて真の『退魔士』なれるわけだ。
しかし、前例が“あいつ”しかいない。
つまるところ、平安時代までの資料は一切残っていなかったのだ。
「そもそも、死神は“魔”じゃない……ならあいつが何故退魔士の蔵の中に封印されていたんだ?」
「それはぁ~、広貴さんのご先祖さまが“禁断の恋”におちたからですぅ~」
「……そうか、不法侵入は罰金30万円以下が世の摂理だったはずだ。自首すれば少なくとも5万の減額はかたい」
「あうぅ~……もっと普通のリアクションしてくれませんかですぅ~。例えば、『そんなの信じられるか~!』とか『うわぁ~そんなことがぁ~~~!!』とか」
少なくとも2番目のリアクションは俺にとっては無理がある。
そんなことを言うのはよほど単純なやつだろう。
まぁそれはいいとして……
「どうしてお前がここにいる、死神女?」
いつもややこしいところに現れてくれるこの問題児。
紫髪が薄暗い書庫でもはっきりしているところ、蛍光効果でもあるだろうかと思った。
いや、そんなことはどうでもいいか。
家の周りには結界が貼ってあるため、監視の必要がない。
よって一人になれるときはそれを堪能をしているというのにこいつは……
「広貴さんは何をしてるんんですぅか?」
「……見ての通りだ。お前の封印方法をそろそろ見つけておかないと命に関わるんでな」
「?」
首を横にかしげた様子を見ると、マジでわかっていないらしい。
やはりこいつは本気で俺の命をとるつもりはないらしい。
しかし、試験時間というのも存在はしている。つまり一ヶ月。
問題ない。
こいつと一ヶ月、いやそこまで長引かせることもあるまい。
早急に発見して封印する。それが今俺がやるべき最良かつ、最優先事項である。
「『死神には二つの種類があり、それはソウルイーターとソウルブレイカーである。』」
要約すると、魂を吸収してあの世に送るか、魂を根本から破壊するのにわかれるということだ。
もっとも、この本はかなり新しいものらしく、数世紀前はこんな種類は存在しなかったそうだ。
「死神は“魔”を倒すとともに、“魔”を力に変えることもするんですぅよ?」
「ようはそれが“ソウルイーター”とかいうやつらなんだろ?」
「はい♪ 私もそれですぅ~」
謎が一つ解けた。
ようはこいつ、“魔”を吸収していたがために退魔士が“魔”と勘違いをして封印されたのではないだろうか。
しかし、死神の封印なんて前例がないのによくもまぁ封印できたものだ。
…………前言撤回、こいつなら呆気なく罠にかかり、速攻で閉じ込められたに違いない。
なら俺にだって簡単にできるはずだ。
もしかすると、一番厄介ではあるが、一番手こずらないのではという矛盾した考えが浮かばんでもなかった。
「『中には愚かな死神種族も存在し、前例がない死神の封印を行い、成功させた例がある。』」
「てへ♪ 私のこと載ってますですぅね?」
「……そんなもんは掲載されていない。ば~か!」
「う、うわぁぁああ~~~んですぅ! 広貴さんが苛めるですぅ~~!!」
泣きながら去っていく死神女の背中を見えなくなるまで(約3秒)見ていた俺。
最近……いや、平安時代の死神は扱いやすいと思った今日この頃だ。
当物語は進撃のナニガシが騒がれる数年前の作成物です。
どちらかというとハ●ヒに影響を受けていた時期です。
メガネ娘の口調はティ▲マトーではなく、風◆がモデル。




