次の冒険王
第一話 次の冒険王
「返せーっ!」
日向太陽は、屋根の上を走っていた。
前を飛んでいるのは、大きな黒いカラスだった。
くちばしには、赤い帽子が挟まっている。
「それ、俺のじゃないけど返せーっ!」
太陽は屋根を蹴った。
隣の家までは、少し遠い。
それでも跳んだ。
「うおおおおっ!」
手が屋根の端に届いた。
身体が宙にぶら下がる。
下を歩いていた人たちが悲鳴を上げた。
「太陽! 何してるんだ!」
「ちょっと待って!」
太陽は腕に力を入れ、屋根へ這い上がった。
黒いカラスは煙突の上で、帽子をつついている。
「食い物じゃねえぞ、それ」
太陽が近づくと、カラスは翼を広げた。
「逃がすか!」
飛びかかる。
カラスは帽子を放し、飛び去った。
太陽は勢い余って屋根から落ちた。
「うわああああっ!」
干してあった布団の上に落ち、そのまま地面へ転がった。
「いってえ……」
太陽の顔に、赤い帽子が落ちてきた。
帽子の持ち主である小さな女の子が、駆け寄ってくる。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「余裕」
太陽は鼻血を拭きながら立ち上がった。
「ほら」
「ありがとう!」
女の子は帽子を受け取り、笑った。
それを見て、太陽も笑う。
「どういたしまして」
「太陽!」
怒鳴り声がした。
道の向こうから、冒険者ギルドの親方が歩いてくる。
太陽は逃げようとした。
だが、すぐに首根っこをつかまれた。
「また屋根に登ったな」
「人助けだよ」
「屋根を壊してか?」
親方が上を見る。
太陽が走り回った屋根の瓦が、何枚かずれていた。
「……人助けには犠牲がつきものだ」
「弁償するのは俺だぞ」
太陽はそのまま、ギルドまで引きずられていった。
◇
「俺を冒険者にしてくれ」
「嫌だ」
「まだ何も言ってないだろ!」
「毎日同じ話だからな」
親方は椅子に座り、帳簿を開いた。
「十三歳のガキは学校へ行け」
「父さんは十三歳で冒険してた」
「お前の父親は普通じゃない」
「俺だって普通じゃないぞ」
「屋根から落ちる普通のガキだ」
太陽は頬を膨らませた。
ギルドの壁には、一枚の古い写真が飾られていた。
何人もの冒険者が並んでいる。
中央で笑っている男を、太陽は指さした。
「父さんは冒険王になった」
「そうだな」
「だから次は俺だ」
親方は帳簿から顔を上げた。
「お父さんを探したいだけじゃないのか?」
太陽は少し黙った。
「それもある」
「会ったらどうする」
「殴る」
「英雄を?」
「家に帰ってこなかった親父を」
太陽は写真を見る。
「それから、俺の方がすごい冒険者だって教えてやる」
「ずいぶん先の話だな」
「すぐだよ」
太陽は笑った。
「俺が次の冒険王だからな」
◇
夕方。
太陽が家へ帰ると、母親が夕飯を作っていた。
「また喧嘩したの?」
「してない」
「鼻の下、血がついてるけど」
「カラスとおしゃべりしてた」
「……負けたのね」
「帽子は取り返した」
母親が布巾を差し出した。
「拭きなさい」
「あとでいいよ」
「服につく前に拭くの」
太陽は渋々、鼻の下を拭いた。
「母さん」
「何?」
「俺、冒険者になるから」
「知ってる。毎日聞いてるもの」
「それで……父さんを見つける」
「……そう」
「見つけたら……一回殴る」
「……一回で足りる?」
「母さんの分も入れたら二回かな」
母親は吹き出した。
太陽も笑った。
その時。
遠くで鐘が鳴った。
一度。
二度。
三度。
母親の笑顔が消えた。
町の鐘が、激しく鳴り続けている。
「この鐘……」
外から叫び声が聞こえた。
「魔獣だ!」
「逃げろ!」
太陽は窓を開けた。
空を、巨大な影が横切った。
広げられた翼が、月を隠す。
山の向こうが赤く光った。
「ドラゴン……」
ドラゴンが口を開いた。
炎が町へ降り注ぐ。
遠くで爆発が起きた。
地面が大きく揺れ、食卓の皿が床へ落ちた。
外から、いくつもの悲鳴が聞こえる。
窓の向こうで、隣の家が燃えていた。
「太陽、逃げるわよ!」
母親が太陽の手をつかんだ。
次の瞬間、家のすぐ近くに炎が落ちた。
窓ガラスが砕ける。
「太陽!」
母親が太陽を床へ押し倒した。
熱い風が家の中を吹き抜ける。
「母さん!」
「走って!」
「一緒に――」
「いいから走って!」
天井へ火が燃え移っていた。
太陽は母親の腕をつかむ。
「俺が助ける!」
「太陽!」
燃えた柱が倒れた。
炎と煙が、二人の間を引き裂く。
「母さん!」
炎の向こうから、返事は聞こえなかった。
「母さん!」
太陽は手を伸ばした。
その右手が、急に熱を持つ。
燃え盛る炎の中で、それよりも暗い何かが揺れた。
太陽の手に、小さな黒い火が灯った。
初めまして。
『冒険王 ~The Adventure of...~』を読んでいただき、ありがとうございます。
父親を追い、次の冒険王を目指す少年・日向太陽の物語です。これから、太陽と仲間たちの冒険を描いていきます。
本作は、作者が構想・設定を考え、本文の作成に生成AIを使用しています。投稿前に作者が内容を確認し、必要に応じて修正しています。
続きも読んでいただけたら嬉しいです。




