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第8話:大事な大事なお話


「くだらない……だと?」


 ローラの言葉に信じられないという顔をするラグナ。それはエリーラ達も同じだった。

 王家であるカーディアス家の王子、ロディアスの婚約者候補。普通ならばこんなに素晴らしい話はないというのに、ローラは今、くだらないと吐き捨てた。


「ローラお前……ッ!くだらないとはどう言う意味だ!」


 それに激昂したのはレオンだった。これまでのローラの言葉遣いや高圧的な態度にイライラしていた彼は、困惑する両親に代わってそう言ったのだ。

 しかし、ローラは優雅な笑みのままだ。


「そのままの意味ですわ。レオンお兄様」

「なに……?」

「私にとっては、取るに足らない、つまらない話ということです」


 そう言い切るローラの目が、真っ直ぐにレオンを睨みつける。


「ローラ、それ以上はロディアス殿下への不敬に繋がるぞ。言葉を慎め!」


 そんなローラに、ラグナは頭を抱えそうになりながらそう口にする。だが、ローラは止まらない。


「つまらない事に変わりありませんわ。それに、その婚約者候補の話には私の意思など関係ないのでしょう?」

「なに……?」

「もうこれ以上の茶番は結構ですわ、お父様。正直に言ってはいかがですか?決まっていたのでしょう?()()から」

「ッ!」


 ローラの言葉にラグナが目を見開いた。


「お母様達も、つまらない茶番はやめてもらえると助かります」

「ろ、ローラ?何を言ってるの……?」

「変なことを言うんじゃない!昨日から何なんだお前は!」


 エリーラとレオンがそう声をあげる中、ルイは不安気にエリーラ達とローラをへ交互に見つめている。


「ローラ、いい加減なことを言うな。飛び降りた影響で頭がおかしくなったのか?」

「……そうですね。それは一理あるかもしれません」

「はぁ……では、まだ暫くは療養しておけ。ロディアス殿下には私の方から話して──」

「それは結構ですわ、お父様。だって──」


 ラグナの言葉を遮ったローラに、反射的に全員の視線がローラに向く。その視線を受けたローラは、満面の笑みを浮かべて、言葉を続けた。


 



「ローラ・シュバリエは死にましたから」



 

 

 ガタンッ!と大きな音を立てたのは、ローラ達が囲んでいたテーブルだった。ラグナが勢い良く立ち上がったその足が当たって出た音。その音にビクリとエリーラとルイが肩を震わせたが、ローラは動じなかった。


「いい加減にしろッ!何を言っているんだお前は……!?」

「言葉の通りですわ。お父様。あの日屋敷から飛び降りたローラ・シュバリエは、死んだんです」

「何をっ、お前はこうして生きているではないか!」

「そうよ!何を言っているのローラ!?」

「信じられないのも無理はありません。ですが、もう全員気づいているのでは?昨夜から今までの私の言動は、貴方達の知るローラ・シュバリエではなかったはずです」


 ローラの言葉を聞いて、ラグナ達はハッとする。確かに、彼女の言う通りだ。昨夜から家族全員が感じていたこと、果たしてローラはこんな風に言い返したり、強気な態度を取ったりするだろうかという不気味な違和感。


 目の前にいるローラが、彼らの知るローラとはほぼ別人のように見えるのは、気の所為ではなかった?


「だったら、だったらお前はいったい誰なんだ……?」


 レオンが恐る恐るそう口にすると、ローラの顔から笑顔が消えた。



「ここで言えるのは、私はローラ・シュバリエではない。別人だということだけです」



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