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『僕のペットは魔獣らしい。ついでに畑も作ってます』  作者: キトン


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第18話:大農業革命(※まずはバラ園を更地にします)

 タロウが「この国の食べ物、全部俺たちが作るよ」と堂々の宣戦布告をしてから数日後。


 王都には、穀倉帝国グランベルから派遣された『農業視察団』が到着していた。


「フン。一人の農民が、国の食料をすべて賄うなどと……あの男のハッタリを暴きに来た」


 視察団のトップである農学者は、鼻で笑いながら王城の大庭園へと足を踏み入れた。その後ろには、農業魔導師と土壌鑑定士が仰々しい魔導具を持って続いている。


「無駄なことだ。この国の土壌は魔力の枯渇で完全に死んでいる。作物が育つ確率は『0%』だ」


 農学者が断言した、その視線の先。


 王城の美しく歴史ある『王家の大庭園(国宝級のバラ園)』のど真ん中で、麦わら帽子の男が愛用のクワを構えていた。


「わ、わしの……500年続く、由緒正しきバラ園がぁぁ……!」


 国王が涙を流してハンカチを噛んでいるが、タロウは気にした様子もなく笑顔で頷いた。


「日当たり最高じゃん。ここ、トマトとキャベツにするね」


「あー、でもちょっと土が固いね」


 タロウはそう言うと、力むこともなく、ごく自然な動作でクワを振り下ろした。


 サクッ。サクッ。


 魔法の光も、派手な爆音もない。ただの農民の、ただの畑仕事の風景。


 しかし——タロウがクワを入れた瞬間に、カチカチだった灰色の地面が、ふかふかで艶やかな『黒色』へと変色していくではないか。


「……待て」


 土壌鑑定士の顔色が変わった。慌てて最新鋭の魔導具を土に向ける。


 ピピピピピ……ピーーーッ!!


『測定エラー。測定エラー』


「バ、バカな!? 魔導具の数値が振り切れてエラーを吐いている! こ、この土……ただの土じゃない、神話に語られる『伝説級の黒土』だぞ!!」


 悲鳴を上げる鑑定士に、タロウがキョトンと首を傾げる。


「え? 何言ってんの。普通の畑だけど?」


「次はうね作りだね。人手が足りないな……アレン、手伝って」


「承知しました」


 無表情の勇者アレンがスッと前に出た。そして真顔のまま、魔王を倒すための最強の聖剣を上段に構え——地面に向かって全力で振り下ろした。


「奥義——『聖光十字斬グランドクロス』!!」


 ズバァァァァンッ!!


 巨大な光の十字が広場を切り裂き、一瞬にして数キロに及ぶ、恐ろしいほど真っ直ぐで完璧な「十字の畝」が完成した。


「魔王討伐用の奥義を……畝作りに使っただとォォ!?」


 農業魔導師が泡を吹いて倒れた。


「よし、種撒き終わり! ピーちゃん、ちょっと温めて!」


 タロウの帽子に乗っていた不死鳥フェニックスが「ピッ!」と鳴き、微かな神炎の熱気を土に送る。ポチ(ケルベロス)が尻尾を振りながら、三つの頭で器用に水を撒いた。


 数分後。


 ——ポコッ。


 漆黒の土の中から、小さな、しかし圧倒的な生命力に満ちた『緑の芽』が顔を出した。


「あ……ああ……ッ」


 農学者団長は、その小さな芽を見て、ゆっくりと両膝をついた。


「死に絶えた土壌に……種を撒いて数分で、発芽した……? 魔力も使わずに……?」


 それは、帝国の魔法農業の常識をすべて根底から破壊する、純粋な『奇跡』だった。


「ありえない……芽が出ただけで、奇跡だ……魔法農業の常識が、すべてゴミになった……」


 視察団のトップは、完全に精神を崩壊させ、土に平伏して咽び泣き始めた。


 ***


 数日後。穀倉帝国グランベルの玉座の間。


 皇帝の机の上に、王都から命からがら逃げ帰ってきた視察団からの、一枚の『報告書』が震える手で置かれた。


『対象:農民タロウ』


『危険度:国家崩壊級』


 報告書の最後には、乱れた文字でこう警告が記されていた。


『警告。彼をただの農民と侮るな。そして、彼に決して【農地】を与えるな。——彼は、ひと振りで国を創る』


 ——帝国との、絶対に負けられない農業(物理)バトルの幕が、静かに、だが確実に上がったのだった。




今回もお付き合いいただきありがとうございます!

タロウの物語、楽しんでいただけているでしょうか?


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