第9話:終焉の黒竜降臨。そしてポチの列に並ぶ(※順番待ち)
その日、王都は静かなパニックに包まれていた。
「報告します! 終焉の黒竜が……まだ上空にいます!!」
城の塔の上からの叫びに、王城の空気が凍りつく。
終焉の黒竜。
神話に語られる世界滅亡の象徴。
その災厄が、なぜかここ数週間、王国上空を旋回し続けているのだ。
「なぜ攻撃してこない……」
「わ、分かりません……ただ、ずっと……」
兵士は震える声で空を指差した。
「何かを、必死に待っているように見えます……!」
王城は絶望に包まれた。
(世界の終わりを……待っているのだ……)
そして、その時。
黒竜の黄金の瞳が、ついに一点を捉えた。
森の奥。
ログハウスの庭。
そこに立つ、一人の男。
——タロウ。
はるか上空で、黒竜の巨大な尻尾がぶんぶんと揺れた。
ついに、我慢の限界だった。
(もう待てぬ!!)
次の瞬間。
黒竜は巨大な翼を畳んだ。
そして——隕石のような速度で地上へと突っ込んだ。
ゴォォォォォォォォッ!!
空気が裂け、雲が弾け飛ぶ。
「黒竜降下ァァァ!!」
「終焉が来るぞォォォ!!」
王都は完全にパニックになった。
一方その頃。
ログハウスの庭では、タロウが畑を眺めていた。
「今年のトマトいい感じだなー」
その瞬間。
ドゴォォォォォォォォォンッ!!
巨大な衝撃と共に、大地が揺れた。
「きゃああああ!!」
セシリアがクロエにしがみつく。
「ま、魔王が……メテオを召喚した……!」
クロエは顔面蒼白だった。
土煙の中心に、巨大な影が立ち上がる。
神話級の存在。終焉の黒竜。
その圧倒的な巨体を見て、クロエは震えた。
「終焉竜……」
だが。
次の瞬間。
黒竜はタロウの目の前まで歩くと——
ゴロン。
完璧なヘソ天になった。
巨大な腹を空に向け、尻尾をぶんぶん振る。
ドゴォォォン!
ドゴォォォン!
尻尾が振られるたび、地面が割れる。
クロエ
「…………」
セシリア
「…………」
タロウは少し考えてから言った。
「……撫でてほしいの?」
タロウがそっと手を伸ばし、黒竜の巨大な鼻先を撫でる。
すると黒竜は——
バサァッ!!
歓喜のあまり巨大な翼を羽ばたかせ、凄まじい風圧で森の木々を薙ぎ払った。
『キュゥゥゥン……ッ』
完全に犬だった。
世界滅亡の象徴は、タロウの手に擦り寄りながら甘えた声を上げている。
その時、横からスッと、三つ首の冥界の番犬が進み出た。
【左】『新入り?』
【中央】『撫で待ち列は後ろだぞ』
【右】『順番守れ』
キャンキャン! と吠え立てる先輩ペットたち。
すると、終焉の黒竜は——スッと立ち上がり、前足を綺麗に揃えて、ポチたちの後ろに『ちょこんっ』とおすわりをした。
「終焉の黒竜が……“おすわり”してる……」
クロエが呆然と呟く。
「世界観どうなってるの……」
セシリアが頭を抱えた。
俺のスローライフは、今日も平和だった。
(ペット:ケルベロス三頭+終焉の黒竜)




