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怪奇エンバー  作者: モッズコート
赤い瞳の蜘蛛事変
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本当の俺

 風船が連続で弾けるように、卓也が腕を振るう度に、屍人が弾ける。


 卓也はオウエの頭を掴み、壁に投げつける。

 屍人は肉体を操られ、クッションとして消費される。


 何体も、何体も現れ続ける。


「私には多くの味方がいます。あなたには味方はいますか」

「ひとり……!」


 殴りつければ、屍人が大量に弾け飛ぶ。


「単純な肉体強化系の異理!! 力だけが全てだと驕った阿呆な祓い屋! 頭を使いましょうよ、寒河江卓也さん!」


 屍人は無理矢理融合し大きな腕となり、卓也に襲いかかる。それを全身に受け、跳ね返る。


 声をかけようとする旭だったが、卓也の異様な雰囲気に気圧されて、声は出なかった。


「他人を食い物にする事しか考えてない糞みたいな……この世の終わりみたいなハゲ女……!!」


 体温が上がっていく。汗がこびりつく。

「鬱陶しい」と言い捨て、卓也はシャツとジャケットをかなぐり捨てた。


 怒りがあがるにつれて、背中に蜘蛛が現れる。


「抜いだからなんだと言うんです? 別に私は貴方の身体なんて刺身のツマにも思えませんよ」

「エロ・グロ・ナンセンスはもう嫌いだ」


 屍人たちが襲いかかる。それに今まで以上に素早く反応し、殴り、蹴り、突き飛ばす。


「どうした? お人形遊びはもう終わりか?」

「この……!」


 オウエが腕を突き上げようとすれば、その腕をへし折った。


「慌てる乞食は貰いが少ないんだろう?」

「こ……の……!!」

「慌てるなよ。俺は逃げない」

「そう言って……!」

「どうして俺より弱い奴から逃げないといけないんだ? 変な慈悲の気持ちは要らないんだよ。お前には。お前は人を馬鹿にしすぎたんだから。お前はうんこみたいな地べたを這いつくばる蛆虫になって老いていくんだよ」

「黙れ! さっさと死ぬんだよ!!」

「死なないさ!」


 卓也はオウエの顔面を思いきり強く殴りつけた。


「俺の首に祓い屋の名がある限り」


 蜘蛛が消えていく。


 それと同時に、卓也が醸していた異様な雰囲気が消えていく。


「寒河江卓也さん。終わりましたか」

「見ればわかるだろ。マヌケか? ……じゃない! ごめん、あっ、あーっ、言っちゃった……」

「随分と……それが貴方の本性ですか」

「ウ……ン! 優しい人間になりたいんだけど……俺、岩手の水沢で生まれてさ……俺が育ったところって水沢の中でもあんまり良い所じゃなくて」

「そうですか」


 旭はしばらく卓也の言い訳を聞くことにした。


「でも、水沢はいい街さ! 俺が生まれ育ったところ以外はみんな人が良くてね……」

「そうですか」

「小さい頃から荒んだ生き方をしてたから……君の言った通り……今の俺は『偽物の俺』だ。そして、さっきまでのが『本当の俺』なんだ」

「そうですか」

「本当にひどいことを言ってごめん。俺、君に支えられているのに……いつも道案内とかさ……」

「かまいませんよ」


 旭はギターの弦を弾く。


「ギターの音で聞こえませんでしたので」

「二階堂くん……」

「ちなみに私は女です」

「二階堂くん……」

「それで、寒河江卓也さん。あの建物は残しておきますか。貴方風に言えば……『汚いから壊し』ますか?」

「ウ……ン! そうだね、でも中に人とかいるかもしれないから……まずは中に入ってみようじゃないか」

最近Dr.STONEよみはじめました。

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