めざめのこ
目を覚ます。
なかば悲鳴に近い叫び声をあげて、飛び起きる。
少女は──……尾形美智代はバクバクと高く弾む胸を押さえて、ぱらりと額を撫でた前髪を感じる。
布団の上に何かが落ちている。
それをつまみ上げると、耳鳴りとともにそれの詳細が伝わるので、思わずそれを投げ捨てる。
「起きたか」
男の声。何処かで聞いたような声。
それはすぐに分かった。
「お兄さん」
「おはよう、美智代」
まるでわからなかった。目の前にいる兄──真介はまるで数年経ったように大人びている。
「何かが変……」
「わかっちゃったか。何年経ったんだろう……3……4年かな。そのくらい経った。わかるかい、美智代」
「何があったの?」
真介は混乱する美智代に今まであったことを話してみせた。すると、ますます混乱させた。
「どういう事なの……」
「額面通り受け取ってくれて構わないよ」
「児静教って……?」
「変な団体さ。宗教だって話だけど、宗教に失礼なくらいには信心なんかないおかしな団体。お前はその組織の幹部に形を変えられてしまったんだ」
「形を!? じゃ、いまなんで……」
「じゃじゃん!」
真介は地面に突っ伏して目鼻口から血を垂れ流している大男を指してみせた。
「私よりよっぽど重傷ではない……?」
「この人は寒河江卓也って言って、現在世界最強の祓い屋さんだ。魂を弄るのがとても上手らしいんだ。ある程度の情報が集まったから、君を治して貰えることになった」
「そんな簡単に」
「ね。簡単にね。俺の努力はほとんど意味をなさなかったけど、祓い屋になったから彼にお近づきになれたわけで……その点を言っちまうと、意味はあったと言えるね」
卓也が起き上がる。
「久しぶりにやったから疲れちゃったよ」
卓也はふわふわと笑いながら、少女に「身体はちゃんと動かせるかい」と訊ねる。
その優しげな雰囲気に騙されて、「はい」と答えた。
「ならよかった。ムフフ、よかったね! 尾形くん、妹さん良くなって」
「マジっすよ! マジでありがとうございますやわ〜! 寒河江さん、マジありがとうございます!」
「ムフフ、それはよかった」
卓也は立ち上がると、出ていこうとする。
ので、それを止めるものが現れる。
両親である。
「もうお帰りになられるので? 夕飯でもどうです、外にお待ちになられてるお連れの方々も……」
「構いやしませんよ。今日は家族水入らずにしちゃわないとでしょ! ムフフ、後日またお伺いしますよ」
その日は、卓也の言った通りに家族水入らずという事になった。真介は美智代の好物をつまみながら、卓也の動向を追ってみれば、精神の病院で罪悪感で狂ってしまった美智代の友人たちのケアをしているらしく、ふよふよの笑顔を向けながら落ち着かせている。
「お兄さん」
「ん? なんだい、美智代」
「お兄さん、私が寝てる間に女の人ができたでしょ」
「えっ、どうしてそう思うんだい」
「勘よ! 女のね」
「まいったなぁ……否定も肯定もしないよ」
「なにそれ! 嫌なところは変わらないのね!」