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怪奇エンバー  作者: モッズコート
黒煙を突き抜ける蝙蝠
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禍蝶園 3

 その日より梶崎由紀雄は、激務の日々。

 祓い屋総本部という謎の組織から金が貰えるのは嬉しいところだが、「児静教」についての情報を掻き集めるというのは疲労だけでなく危険も伴う。

 怪しいカルトについて調べていると、そういう悪いものが寄ってくる。


「コイツは児静教じゃないや」


 そういう場合、寒河江卓也や真介をはじめとした各地の祓い屋が対応してくれる。


「しかし、あんた頑張るなぁ」


 長崎の調査をして絡まれている際、湯浅(ゆあさ)久徳(ひさのり)という祓い屋が守ってくれた。


「尾形という祓い屋に頼まれたので」

「尾形って尾形真介かい」

「知ってるんですか」

「ギターを持った祓い屋は噂になりやすいんだ」

「ギターを持った祓い屋?」


 その言葉が妙に引っかかった。


「やっぱり祓い屋じゃないからこっちの話題には疎いなぁ。たまにね、現れるんだな。俺は叔父から聞いたんだが、昔から何かを成す祓い屋ってのはギターを持ってんだ。逆になんにもなんねぇゴミみたいな祓い屋はトランペットを持ってるらしい」

「祓い屋ってのは音楽家なんですか?」


 今日は快晴。10月と言えどもじわじわ熱い。額に浮かんだ汗をハンカチで拭いながら、湯浅久徳を追う。


「そういう傾向にあるんだよ」

「なるほど……」

「警察呼んでくるからな、そいつら動き出したら躊躇わずタマ狙うんだよ。殺される前に殺せ」

「ぶ、物騒だなぁ……」

「そういう世界だよ」

「なるほどなぁ〜……」


 警察が熊でも捕まえに来たような格好でやってくると信者は大暴れをかましながら連行されていった。


「日常の裏じゃこんな事が起こってるんだなぁ」

「そうさ」


 茶をいっぱいごちそうになる。


「怪異なんてもう世間に公表したほうが早いだろうに。記事のひとつでも書いてやろうか。へへへ」

「やめなよ。俺たちは子供たちが夏や冬の夜中にテレビの前でこわくって 震える世界が作りたいんだぜ。恐怖が不謹慎になっちまったら脳のシワも減っちまうだろうよ」

「なるほどなぁ……偉いなぁ、祓い屋にはたくさん会ったが、みんな方向性は違えどみんな本当に世界を愛しているような面をしていたよ。祓い屋ってのはみんな善人ばかりなんですかね」


 梶崎由紀雄のその言葉に、湯浅久徳はすこしの間もあけないで小さく笑みを浮かべた。


「昔からこうだった訳じゃない。ほんの少し前まで祓い屋総本部は詐欺師の集団だったんだぜ。総本部長も制御できないくらいの腐敗があったんだ。だから組織を離れて個人でやるやつだっていたんだ」


 湯浅久徳は「俺もそうだった」と言う。


「じゃ、いまの総本部はどうしてこうなったんで」

「寒河江卓也のおかげだよ。あのバカタレが癇癪おこしてクソな上層部全員ぶちのめしてくれたんだ」

「寒河江卓也……会ったことあるよ。物腰の柔らかな、ふわふわ笑う優男だった。彼って強いのか」

「強いなんてもんじゃねぇ。現代最強だよ。……お前、めを瞑って耳を閉じて五感のほとんどが聞かない状況で決まった砂粒に弾丸を当てられるかい?」

「そんなの無理ですよ」

「奴にはそれができちまう。百景種って言ってな。認知能力・共感性能力・把握能力……もろもろが普通の人間より数百倍優れてるんだ」

「百景種……」

「弥生時代に至る所にいた人間さ。所謂古代人間。怪異が増えてきた現代において血が騒ぐとそうなるらしいね。良くは知らないけんど」

「ほー……」



梶崎さんは小太りの中年です。

決して顔のいい人ではないです。

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