表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【SF短編小説】千の記憶の果てに ―魂の共鳴者たち―  作者: 霧崎薫
千の記憶の花束

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/24

第6章 約束の場所

 夏の終わり。

 凪と詩音は、海辺の古い神社を訪れていた。


 朱色の鳥居が、夕暮れの空に映える。

 波の音が、遠くから聞こえてくる。


「ここも、懐かしい場所」


 詩音が言う。

 その声に、千年の記憶が響いているよう。


 境内に入ると、新たな記憶が蘇る。


 * * *


 平安時代末期。

 同じ神社で、二人の巫女が月を見上げていた。


「戦が近づいています」


 前世の詩音が、震える声で言う。


「でも、約束してください」

「どんな時代になっても、必ず出会えると」


「約束します」


 前世の凪が答えた。


「この魂が消えるまで、あなたを探し続けると」


 * * *


「凪?」


 詩音の声で、現実に戻る。


「ごめんね。また……」


「うん。私も見えた」


 詩音は、凪の手を強く握る。


「あの約束は、ずっと守られてきたのね」


 二人は、本殿に向かって手を合わせる。

 夕暮れの風が、二人の祈りを包み込む。


 その時、不思議な光景が広がった。

 境内に、淡い光の粒子が舞い始める。


「これは……」


 凪は息を呑む。

 光の粒子が、人の形を作っていく。


 そこには、二人の前世の姿が浮かび上がっていた。

 様々な時代、様々な場所での出会いの瞬間。


 巫女として。

 姫と侍女として。

 教師と生徒として。

 そして、数えきれない形で。


「私たち、本当に……」


 詩音の目に、涙が浮かぶ。


「何度も、何度も出会って」

「そして、必ず約束を交わして」


 光の粒子が、二人を優しく包み込む。

 それは、千年の記憶が実体化したかのよう。


「でも」


 凪は、詩音をそっと抱きしめた。


「もう、別れる必要はない」

「これが最後の出会い。永遠の出会い」


 夕陽が海に沈んでいく。

 光の粒子が、二人の願いを星となって昇っていった。


 神社の古い鐘が、静かに鳴る。

 その音は、新たな誓いの証のよう。


 帰り道。

 二人は満天の星空の下を歩いていた。


「ねえ、凪」


 詩音が、空を見上げながら言う。


「私たちの物語は、ここで終わるのかな?」


「ううん」


 凪は、詩音の手を取った。


「ここからが、本当の始まり」

「前世の記憶に縛られない、私たちだけの物語」


 夜風が、二人の約束を優しく包み込む。

 星々が、永遠の証人として輝いていた。


 その夜の日記には、凪の新たな決意が記されていた。


『今日、私たちは全ての記憶と向き合った。

そして気づいた。


大切なのは、過去でも未来でもない。

今、この瞬間。


私たちは、もう迷わない。

これが最後の転生。

永遠の愛を紡ぐ、最初の物語。』


 月明かりが、ページを優しく照らしていた。

 それは、新しい章の始まりを告げるよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ