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【SF短編小説】千の記憶の果てに ―魂の共鳴者たち―  作者: 霧崎薫
千の記憶の花束

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第5章 魂の覚醒

 真夏の夜。

 凪と詩音は、学校の天文台にいた。


 夏の大三角が、頭上に輝いている。

 望遠鏡を覗きながら、二人は星々の物語に耳を傾けていた。


「きれい……」


 詩音が呟く。

 その横顔が、星明かりに照らされて神々しい。


 その時、新しい記憶が蘇る。


 * * *


 古代バビロニア。

 ジッグラトの頂で、二人の天文学者が星を観測していた。


「この星々は、私たちに何を語りかけているのでしょう?」


 詩音の前世が問いかける。


「永遠について」


 凪の前世が答えた。


「星の輝きは、魂の光なのかもしれない。時を超えて、永遠に続く光」


 * * *


「凪、見て!」


 詩音の声で現実に戻る。

 流れ星が、夜空を横切っていた。


「願い事は?」


 凪が尋ねる。


「秘密」


 詩音は微笑んだ。

 その笑顔が、千年の時を照らすよう。


「でも、きっと叶うと思う」


 詩音は、凪の手を取った。


「だって、私たちの願いは、いつも一つだから」


 星々が、二人を見守るように瞬いている。

 その光の一つ一つが、前世での出会いを語りかけているよう。


「ねえ、凪」


 詩音が、望遠鏡から目を離して言う。


「私たち、きっと星の間から来たのよ」


「どうして?」


「だって、こんなに強く惹かれ合うなんて」

「この地球だけの話じゃない気がする」


 凪は、詩音の言葉に深い真実を感じた。

 確かに、二人の絆は地球という実験場を超えている。


 それは、宇宙の根源にある何か。

 魂の本質的な共鳴。


「私もそう思う」


 凪は、詩音を抱きしめた。

 夏の夜風が、二人を包み込む。


「私たちの記憶は、星の数ほどある」

「でも、それ以上に大切なのは、今この瞬間」


 詩音が、凪の胸に顔を埋める。

 その温もりが、永遠の約束を語りかけるよう。


 天文台の古い時計が、深夜零時を告げる。

 新しい日の始まりを。


 そして、その瞬間。

 驚くべき光景が広がった。


 星々が、まるで意識を持ったかのように瞬き始める。

 そして、青白い光が二人を包み込んでいく。


「これは……」


 凪の声が震える。


「実験を超えた真実」


 詩音が答える。

 その瞳に、星々の輝きが映っている。


 光の中で、新たな記憶が解き放たれていく。

 しかし、それは前世の記憶ではない。


 未来の記憶。

 これから紡がれていく、永遠の物語の記憶。


 その夜の日記には、凪の新たな発見が記されていた。


『今夜、私たちは星々と対話した。

そして気づいた。


私たちの絆は、実験という枠組みをはるかに超えている。

それは、宇宙そのものに刻まれた真実。


星々は証人として、私たちの物語を見守り続けてきたのだ。


そして今、新たな章が始まろうとしている。

それは、過去でも未来でもない。

永遠という名の現在。』


 窓の外では、星々が静かに輝いていた。

 それは、永遠の愛の証のように。

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