あのこ
僕とあのこの2人の話。あのこを知った彼はどうなるのか。
これは僕とあのこの話。
最初は全く気付いていなかったんだ。
本当はあのこが僕の側にいたことに。
あのこと出会ったのは病院だ。
僕は長らく喉が痛くて、痰が続いたり、声がかすれたりしていた。僕はあまり気にならなかったが、同僚からこんな世の中だから病院に行けと言われ、しぶしぶ病院に向かったときだ。
あのこと出会ったのは。
一瞬で心を奪われた。
このような気持ちになるのは初めてで、様々な感情が混ざり合った。
加えて、あのこから僕に声をかけてくれたんだ。その場面はとても忘れられない、僕の人生が変わる瞬間だ。
病院を勧めてくれた同僚に感謝した。あいつは僕の恩人だ。僕にあのこを知るきっかけを作ってくれた。本当に感謝しかない。
あのこのことを知ってからは、毎日心が忙しかった。あのことの時間が徐々に増え、付き合っていくことになった。
まさか僕がこんな気持ちになるとは思わなかった。なぜなら僕は40歳。こんな歳でだなんて。年齢は関係ないのかと感じた。
あのこは天邪鬼のようで、一緒にいると驚くことばかりの日々。優しかったり、冷たかったり。僕が何かしたかとあのこに言ったら、とても機嫌が悪くなる。それは本当に容赦がない。
ああ、本当に・・・・・・
あのこは飲むことも吸うこともできないくせに、酒とタバコが好きだ。
あのこらしいと少し納得してしまった。なんとなくそんな感じがしたから。
あのこは「調べなくても知っててよ」なんて。そういうのは苦手なんだよ。
僕の頭の中はあのこのことでいっぱいだ。日々大きくなっていく。あのこは少しメンヘラ気質があって、僕が寝ているにもかかわらず起こしてくるし、仕事中もちょっかいをかけてくる。
時間や僕のことなんてお構いなしに。
ああ、本当に・・・・・・
同僚はそんな僕を心配した。「このままだと身体がもたない、今からでも間に合う。何のためにーー」と。
僕だって別れたいと思ったことは何度もあるが、もう遅いんだ。僕の中であのこが日々大きくなっている。
もうあのことは離れられないんだ。一種の共依存状態となってしまっているのだから。
両親にも僕のこんな状態を知られたら反対されるだろうと思って、あのこを知ってからは連絡も絶った。僕はさいごまで何も考えたくなかったし、決断もしたくなかった。だから僕はあのこと一緒にいるって決めたんだ。
何もせずに、ただあのこと最期まで。
いよいよ限界だ。身体も精神ももう・・・・・・
僕には時間がないと悟った。
両親にももう会わない。もう会えない。40年間お世話になった。連絡を絶っていたが、最期に手紙だけ送ろう。もう連絡もできないだろうから。
僕が死んだらあのこはどうなるんだろう。もう別れることになるのだろうか。
いや、僕とあのこは同じ体だ。僕の体にあのこがいる。一緒にこの世から消えるのだろう。
ずっと永遠に。
だけど、あのこがいつも僕にくれていたものは全て失くなるのだろうか。そうだと嬉しい。あのこらしさは失くなってしまうが・・・・・・
ああ、本当につらい。
もっと早く、おかしいと思ったときに行動するべきだったのか？
そうすればもっと早くあのこと別れることができたのか？
一体いつからあのこは僕に侵食してきたのか？
あのこが・・・・・・
癌が早く分かったとして僕は治療したのか？
もう分からない。ただ早く・・・・・・
早く僕を解放してくれ。
最後までお読みいただきありがとうございます。
結末はどのように感じられましたか。今回、初めて小説を書かせていただきました。コメントなどぜひよろしくお願いいたします。
