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第2章 「爆風チェイス!炎のデッドヒート!」

 何しろ私達4人の所属していた部隊が、件の目進塾スクールバスを追跡する羽目になったんだからね。

 作戦の都合上、武装サイドカーや武装特捜車に分乗する羽目になったんだけど、他のみんなの活躍も目覚ましい物だったよ。

「目進塾経営陣に告ぎます!君達が黙示協議会アポカリプスの関連組織である事は、既に当局によって内偵済みです!」

 現場での移動司令部としての役割を担っている、大型の武装特捜車。

 その車体に取り付けられているスピーカーから鳴り響いてくるのは、当部隊指揮官である特命教導隊所属将校・東条湖蘭子上級大佐の御声だ。

 普段の東条湖上級大佐は、上品な美貌と立ち振舞いが凄く魅力的な、御嬢様風の清楚な美人さんなんだ。

「また、君達は既に包囲されています!潔い投降を勧告します!」

 だけど今に限っては、荒々しくて激しく、そして勇ましい口調だね。

「おのれ…、人類防衛機構の犬共め!」

「我々に敗北は無い!」

 もっとも、こういう反抗的な言動しか出来ないテロリスト共が相手である以上、こっちもヒートアップしちゃうのは仕方ないかな。

 まあ、平和を乱す悪と相対したら、決して黙ってられないのが私達「防人の乙女」なんだけど。

「大義を解さぬ愚か者共め!同士よ、我々の覚悟の程を見せてやれ!」

「お任せを、同士!聖戦の炎に焼かれて死ね!」

 アポカリプスの連中がバスから投げ掛けてきたのは、私達への罵詈雑言だけじゃなかったね。

 棒状と球状の投擲物が沢山、こっちにバラバラッと飛んできたよ。

「車体が揺れますのでお気をつけ下さい、吹田千里准佐!」

「えっ…おおっと!」

 急スピンでギュギュッと鳴り響くタイヤの軋みに、摩擦で熱せられたアスファルトの路面が上げる白煙。

 その左右で、行き場を失った落下物が、「ボンッ!ボンッ!」と虚しく破裂していったんだ。

「くっ…そんな物!」

 悪態をつきながら、上牧みなせ曹長は武装サイドカーを自在に操り、落下物を回右へ左へ巧みに回避していくの。

 それにしても、保証の通りだったね。

 車体が大きくスピンする度に、私の乗り込んだ側車もグワングワンと激しく揺れ動くんだから。

「うわうわうわっ…!おおっとと…!」

 路面にタイヤ痕が黒々と残る程の急スピンの次は、豪快なドリフト走行。

 ちょっとしたモータースポーツだね。

「おっ!コイツは…」

 揺れる側車で間抜けな声を上げながらも、私はテロリストが路面に投下した凶器を冷静に認識していた。

 至近距離を吹き抜ける爆風に、お腹に響く炸裂音。

 アスファルトの路面にバラバラと散乱する、砕けたガラスや金属片。

 そして頬を照らす紅蓮の爆炎に、ガソリンの燃え上がる刺激臭。

 いずれも対テロ作戦ではお馴染みの風物詩だ。

 あんまり歓迎は出来ないけどね。

「手榴弾に火炎瓶…全く、よくやるよ!飽きもせず、懲りもせずに!」

 苛立ち2割に呆れ8割。

 そんな微妙な内訳の苦笑を浮かべながら、私は疾走する武装サイドカーの側車で腰を浮かせ、目当ての品に手をかけたんだ。


 ズッシリとした確かな質量と、重厚で硬質な手触り。

 手にしただけで自ずと血が騒ぐね。

「さあ、お待たせ…一緒に頑張ろうね…!」

 そうして囁くように呼び掛けた相手は、私の個人兵装である所のレーザーライフルだ。

「パイナップルの盛り合わせに、モロトフ・カクテル…随分な振る舞い酒を御馳走になっちゃったね!」

 利き手で正しく銃把を握って、もう片方の手で銃身をビシッと構える。

 こうして正しい射撃姿勢を取ると、自ずと背筋がシャキッと伸びるよ。

 まるで爪先から頭頂部に至るまで、鋼鉄の芯を打たれたみたい。

「ここは特命遊撃士流に支払わせて貰うよ!お釣りはいらないからね!」

 そうして覗き込んだ照準に写る標的を見定めたら、後はトリガーを静かに引くだけ。

「撃ち方、始め!」

 銃口から鮮やかに迸った深紅の光芒が、周囲の空気を微かに焦がし、標的目掛け一直線に向かっていく。

 一瞬の輝き。

 一瞬の芳香。

 今この瞬間の為に、自分は生きている。

 こんな風に陶酔しちゃう私を、変わり者だなんて思わないでね。

 個人兵装に銃器を選んだ女の子なら、多かれ少なかれ、大体こんな感じだと思うよ。

 クールに澄ましたマリナちゃんだって、大型拳銃を個人兵装に選んでいる以上は、きっと…

「派手に発砲されていらっしゃいますね、和歌浦マリナ少佐も…」

 御報告感謝しますよ、上牧みなせ曹長。

 貴官も武装サイドカーの運転並びに機銃の操作と、八面六臂の大活躍だね。

 にしても、みんな考える事は同じなのか。

 まあ、手榴弾にしても火炎瓶にしても、敵が投げた瞬間にピンポイント射撃で無効化しちゃえば良いんだからさ。

 東条湖蘭子上級大佐が搭乗されている武装特捜車なんか、機銃で弾幕を張りながら悠然と走っているんだよ。

 半ば人質同然に子供達が乗せられているバスには1発も当たらず、専ら火炎瓶と手榴弾だけを的確に破壊しているんだから、砲手の御姉様方の腕前たるや見事な物だよ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読ませて頂きました。エピソード5まで読みました。作中におけるキャラの個性表現、世界観の設定、サイドカーによるカーチェイスのアクション表現などがしっかりと描かれていました。人類防衛機構に所属…
[一言] 千里ちゃんの台詞がカッコいい( ´∀` ) そしてアポカリプス……怖ろしいことするわ。 防人の乙女じゃなかったら大やけど負ってたかもね。
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