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エピローグ第3章 「昇級試験への新たな誓い」

 私のウッカリで英里奈ちゃんは困惑しちゃうし、京花ちゃんは悪友ムーブをしてきて茶化してくるし。

 何とも変な空気になっちゃったなぁ…

 そんな微妙な空気を変えてくれたのは、二杯目の生中を一気に飲み干したマリナちゃんだったの。

「要人の影武者に憧れるのも良いがな、ちさ。まずは喫緊の課題を乗り越えるのが先決だろう。佐官への昇級試験、もうすぐなんだろう?」

「あっ…」

 そう、そうだったね。

 アポカリプス残党の掃討作戦やら報告やらでバタバタしていてそれどころじゃなかったけど、私は少佐への昇級試験を控える身だったんだ。

 昏睡状態で入院している間に同期の友達に階級を追い抜かれて部下として振る舞う事を余儀なくされた私だけど、全てはこの試験の結果にかかっている訳だね。

 このまま准佐としてマリナちゃん達の命令に従い続けるか、或いは少佐に昇級してみんなと肩を並べるか。

 私としては、是が非でも後者になりたい所だよ。

 そうすれば私は、三年前の「黙示協議会アポカリプス掃討作戦」で負った手傷と本当の意味で決別出来ると思うんだ。

 昨年の牛頭鬼ミノタウロスだの、今回の合体審判獣だの。

 ここ最近はアポカリプスの忘れ形見とやり合う機会が多かったね。

 もしかしたら、今後もまた残党や模倣組織が現れるかも知れないなぁ。

 仮にそうだとしても、みんなと同じ少佐に昇格した後ならポーカーフェイスで対応出来ると思うんだよ。

 それは要するに、私の中で気持ちの整理がついているからなんだ。

「私達三人は先任少佐として待っててやるから、次の昇級試験はバッチリ決めて来いよ。それで来年度からは、四人仲良く少佐として同じシフトに入ろうじゃないか。」

「私も信じて御待ち申し上げております、千里さん。この年末年始、千里さんは昇級試験の御準備に全力を尽くされていたのですから。」

 マリナちゃんも英里奈ちゃんも、良い事を言ってくれるね。

 京花ちゃんに茶化されて千々に乱れていた心が、今じゃ風のない日の狭山池の湖面みたいに穏やかじゃないの。


 そして此の頃になると、先程に私の心に波紋をもたらした張本人の態度にも変化が生じていたんだ。

「悪いね、千里ちゃん。さっきは散々に茶化しちゃって。だけど千里ちゃんの昇級を願う気持ちは、私だって同じだからさ。」

 面目なさそうに頭をかく京花ちゃんの照れ笑いを見ていると、もう起こる気もしないよ。

「分かってるって、京花ちゃん。そんな些細な事、私が何時までも引き摺る訳が無いじゃないの。これから佐官に昇級する人間が、そんな小さい事に拘っていたら始まらないよ!」

 仮に京花ちゃんが頭を下げなかったとしても、私は今回の一件を水に流すつもりだったよ。

 どうでも良い些細な事を何時までも引きずってネチネチと詰まらない事を言うのは、防人乙女にとって恥ずべき事だからね。

 だけど私は信じていたの。

 私の知っている京花ちゃんは、自分なりにキチンとケジメをつけられる子だってね。

 そして京花ちゃんは、私の期待を決して裏切らなかったの。

 だからこそ、たとえ京花ちゃんが悪友モードに入ったとしても険悪な関係にはならないんだ。

 少し時間を置けば、こうして必ず落ち着いてくれるからね。


 だから私も、スッパリと気持ちを切り替える事が出来たんだ。

「あのね、店員さん!もう一回、生ビールをピッチャーで欲しいんですよ。乾杯出来るように、ジョッキも四人前で!」

 さっきの一件を水に流し、そして私の昇級試験合格を祈願する。

 次の乾杯は、そういう名目でやる事になるだろうね。

 その次の飲み会の乾杯は、私達の合格祝賀という名目で行いたい所だよ。

 佐官の証である金色の飾緒を、この遊撃服の右肩に揃って付けてね。

 だからこそ、次の試験では全力を尽くさなくっちゃいけないんだ!

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― 新着の感想 ―
完結までお疲れさまでした。 チサトちゃんからしたら迷惑な事にまた残党とか模倣犯とか横の繋がりがあった組織とかとも相手にしなきゃいけないだろうけど(ォィ)なんにしても、今回の事件が気持ち的にひと区切り、…
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