第1章 「悪夢のカルト学習塾!地獄の洗脳合宿から子供達を救え!」
私達4人が今日の昼間に参加した、大規模な軍事作戦。
それを一言で説明するなら、「黙示協議会アポカリプスの残党が企てた陰謀へのカウンター・テロ作戦」って事になるだろうね。
この黙示協議会アポカリプスって連中は終末思想を教義とする危険なカルト教団で、「審判獣」と呼ばれる強力な生物兵器を従えて悪さをしまくっていたんだ。
とはいえ教祖のヘブンズ・ゲイト最高議長を始めとする主要メンバーは、人類防衛機構極東支部近畿ブロックが2年半前に決行した「黙示協議会アポカリプス鎮圧作戦」で粗方片付けちゃったんだけどね。
ビッグクランチ将軍やオムニサイド教授みたいな私達を散々手こずらせた大幹部達だって、とっくの昔に彼岸の人となっちゃったよ。
幹部クラス最後の生き残りだった牛頭鬼ミノタウロスにしても、こないだ私達が工業地域で倒しちゃったばかりだもん。
人間を怪人化させる凶牛ウイルスで眷属を増やし、堺泉北臨海工業地帯の石油コンビナートを爆破しようという危険な計画を企てていた牛頭鬼ミノタウロスは、厄介極まりないテロリストだったね。
幸いにして爆破テロは未然に防げたし感染者達も回復したけれども、正義感の強い青年警官が犠牲になってしまったという悲しい事実は忘れてはならないよ。
そういう訳で黙示協議会アポカリプスは、既に組織としては行動出来ないはずだったの。
ところがどっこい、厄介な不穏分子は市井に残っていたんだ。
在家の信者の中でも特に先鋭化した連中が存在していたらしくて、「自分達こそがアポカリプスの後継者だ!」と息巻いていたみたい。
石川五右衛門曰く、「石川や浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ」。
市井に残っていた悪の種が芽を出し、危険な咲かせたって訳だね。
公安職の私達としては、本当に困っちゃうよ。
こいつらは「目進塾」という学習塾の経営者を装って、実は塾生達をアポカリプスの教義に染め上げようと企んでいたんだ。
異常な授業内容に気付いて脱走した新米講師の密告で事の真実が明るみになったんだけど、狂信者の塾講師達も素早かったね。
事前に企画していたという強化合宿に託つけて、子供達共々逐電しようとしたんだから。
しかしながら、壁に耳あり障子に目あり。
特命警務隊の綿密な調査と、目進塾の生徒達と同じ学校に通う養成コースの訓練生達による情報提供によって、カルト信者の逃走計画も逃走ルートも全て露見したんだ。
料金所のETCにデータが残るのを恐れてか、狂信者達は一般道路を用いて逃走していたの。
わざと捜査網の検問所に隙を作ったのが効を奏したのか、敵さんったら私達が予想していたルートをそっくりそのまま進んでくれていたんだ。
泉南地方を抜けて和歌山方面に出るルートだったから、泉大津方面を張っていた子達は肩透かしを食らっちゃったね。
そうして、この一報を受けた堺県第2支局の指令部が直ちに和歌山県の支局と連携した所、国籍を偽装した不審な貨物船が拿捕されたの。
強制捜査に抵抗してきた船員の中に審判獣が混ざっていた事から、この貨物船がアポカリプス残党の工作船だって事は直ちに分かったよ。
激しい銃撃戦の末、貨物船に潜んでいたアポカリプス構成員は全滅。
まだ息があった構成員の自白と不審船内にあった証拠から、アポカリプス残党の拠点が太平洋上にある事まで分かっちゃったんだ。
黙示協議会アポカリプスがアメリカに起源を持つカルト教団だったという事実を考えると、海外には残党や模倣集団がそれなりに残っていたみたいだね。
考えてみれば、今回の事件はそうした連中を一網打尽にする良い機会になったのかな。
きっと今頃は極東支部の精鋭部隊と国連軍による連合艦隊が出動して、洋上に浮かぶアポカリプス残党の基地に総攻撃を仕掛けているんだろうね。
こういう重要作戦に参加すれば、自ずと武人として名を挙げる事が出来るんだろうな。
まあ、他部隊の作戦を気にしている暇があったら、自分の戦いに専念しなくちゃいけないのは重々理解しているんだけどね。