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第26章 「合体審判獣を掃討せよ!」

 合体審判獣こと鵺キマイラはマトモな理性も意識も持ち合わせておらず、ただひたすら本能のままに暴れ狂う事しか能の無い獰猛な野獣だった。

 この結論に到達した時、私の背筋を寒い物が駆け巡ったね。

 既に理性なんて完全に失っているから、あの合体審判獣が何らかの知的な行動を取る事は二度と再び出来ないだろう。

 ましてや高度で綿密なテロ作戦を企てる事なんて、もう夢のまた夢だね。

 下手すりゃ夢を見る事も出来なさそうだけど。

 だけど理性をなくしたという事は、見境も遠慮も無しに暴れ続けられるって事なんだ。

 それも自分のダメージもスタミナの消費も全く理解していない訳だから、リミッターの吹き飛んだフルパワーで破壊の限りを尽くすんだよ。

 こんな奴を市街地に出してしまったら、きっと洒落にならない事態になっちゃうね。

 まあ、ここいら辺りだって郊外とは言え住宅地が近いんだから、気を付けなくちゃいけない事に変わりはないんだけど。


 一つだけハッキリしているのは、この獰猛極まりない合体審判獣の暴挙を食い止められるか否かは私達の双肩に掛かっているって事。

 全く、厄介な事になっちゃったよ…

「ここでコイツを食い止めるぞ!たとえ私達だけでは仕留められなくとも、増援が来るまでの時間稼ぎ位なら出来るはずだ!」

 面食らったのも、ほんの一瞬。

 直ちに落ち着きを取り戻したマリナちゃんは冷静沈着にリーダーシップを発揮し、私達をテキパキと纏め上げていったんだ。

「やるしかない…って事だね、マリナちゃん!いいよ、やってやろうじゃない!」

 マリナちゃんの檄が心に火を着けたのか、京花ちゃんったらヤル気全開だね。

 そういう京花ちゃんの主人公気質な所、私は大好きだよ。

「心得ました、マリナさん!」

 さっきまでの不安そうな面立ちからは一変。

 その上品で可憐な白皙の美貌をキリッと引き締めた英里奈ちゃんは、ウォーミングアップとばかりにレーザーランスをブンブンと振り始めたんだ。

 そうして個人兵装を自由自在に取り扱っている勇ましい姿を見ていると、「英里奈ちゃんって、戦国武将の末裔なんだな…」って改めて実感しちゃうよ。

 だったら私も負けてはいられないね。

「上牧みなせ曹長、北加賀屋住江一曹!破壊と殺戮しか能の無い凶悪怪獣に、私達の正義の怒りを見せてやりましょうよ!」

 どうやらマリナちゃんに触発されちゃったのか、私も機動隊の曹士2人を相手に発破をかけていたの。

 何しろマリナちゃん達3人は少佐で、准佐の私は尉官だもの。

 今この場で私の部下と呼べるのは、江坂分隊から来てくれた上牧みなせ曹長と北加賀屋住江一曹の2人だけだもんね。

「はっ!承知しました、吹田千里准佐!」

「この北加賀屋住江一曹、誇り高き江坂分隊の名に恥じぬように、死力を尽くして戦い抜く所存であります!」

 だけど曹士の2人は、実に美しい敬礼と張りのある凛々しい声で准佐の私に応じてくれるんだ。

 この子達のためにも、頼もしい上官として頑張らなくちゃね。

 そう意気込んでいたんだけど…

「貴官も存分に注意されたし、吹田千里准佐!」

「はっ!承知しました、和歌浦マリナ少佐!」

 サッと背筋を伸ばして、ローファー型戦闘シューズの踵を鳴らして。

 そうして私は、一分の隙も無い人類防衛機構式の敬礼姿勢を取っていたんだ。

 上官モードから間髪入れずに部下モードになっちゃったよ。

 もっともマリナちゃん達が相手だと私は部下になっちゃう訳だから、それも致し方無いんだけどね。

 私も一日も早く少佐に昇級して、この遊撃服の肩に金色の飾緒を頂きたい所だよ。

 とはいえ今の段階でこんな事を言いだすのは、ちょっと時期尚早かな。

 目下の緊急事態が解決していないのに先の事を考えるのは、昔から死亡フラグとされているもんね。

 まずは目下の課題である合体審判獣の足止めに専念しなきゃ。

 先の事を考える前に、今を切り抜けないと!

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― 新着の感想 ―
いよいよ戦闘も(おそらく)最終段階。 ふんどし締め直していかんとね(`・ω・´)
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