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第22章 「混沌の序曲、合体する肉塊達」

 かくして合流を果たした私達だけど、刻一刻と変化しつつ事態にはただただ困惑するばかりだったの。

 何しろ倒したはずの審判獣がスライム状の不定形な肉塊に変化した上に、空中に浮かび上がってしまったんだからね。

 オマケに獅子ドゥンの変化した肉塊だけでなく、新たに2つの肉塊まで飛んできちゃったんだから。

 あんな特大サイズのミートボールのお代わりなんて、オーダーした覚えはないよ。

「あの赤い球体は、御2人が倒された獅子ドゥンの成れの果てなのですよね?」

 幼くも上品な美貌を強張らせた英里奈ちゃんが、宙を睨みながらサッと立ち上がった。

 武装サイドカーに同乗している間も攻撃を試みていたのか、個人兵装のレーザーランスはバトルモードに展開されているよ。

「うん…京花ちゃんとのツープラトンで、今一歩の所まで追い詰めたんだけど、止めを刺そうとした途端、ああなっちゃって…」

「すると向こうの黒いのと白いのは、残りの審判獣の成れの果てだね?」

 私を遮るようにして進み出た京花ちゃんは、上空をキッと見据えながら新たな2つの空飛ぶスライムボールを指差していたの。

 黒いっぽいのが蛇型審判獣の巴蛇(はだ)ヒュドラの変化した肉団子で、白っぽい方が猿型審判獣の無支奇(むしき)イエティの成れの果てかな。

 あそこまでグニャグニャの不定形な状態になっちゃうと、もう色でしか判別が出来ないよ。

「そうか、そっちもか…私と英里が攻撃していた審判獣も、いきなり肉団子状に丸まって空中に浮かび上がったんだよ。そのまま飛び去ろうとするのを追っていたら、お京達とこうして合流したって次第さ。」

 それに応じるマリナちゃんもまた、左手の大型拳銃を起点にして真新しい硝煙の匂いを全身から濃密に漂わせていたんだ。

 どうやらマリナちゃんも英里奈ちゃんも、私達同様にあの2色の肉団子を追跡しながら攻撃を試みていたんだね。

 そして今までの攻撃が全くの徒労に終わってしまったのも、私や京花ちゃんと同じって訳か。

 もしも私が上方落語系の噺家さんだったら「我々同様」って言うんだろうね、こういう場合。


 拳銃などの実弾兵器で銃撃して蜂の巣にしても、光学兵器のレーザーライフルで焼き切ろうとしても、生じた傷口を喰らい尽くすようにして回復してしまう。

 何とも厄介極まる肉塊だね。

 煮ても焼いても食えない相手は、本当にウンザリだよ。

 だけど私達の倒した審判獣から変化した肉塊は、更なる変化を遂げつつあったんだ。

「ああっ…!あれを御覧下さい!」

 武装サイドカーのハンドルを握っていた北加賀屋住江一曹が上げる、甲高い叫び声。

 アイドル声優や女子アナを思わせる、普段の可愛らしい美声は何処へやら。

 悲鳴染みた金切り声に促されるようにして、空中に浮かぶ3つのスライム玉を注視する私達は、そこで驚くべき物を目にしたんだ。

「ほら、見て!3つの肉団子が寄り集まっているよ!」

「おおっ!」

 京花ちゃんが指差す先では、寄り集まった3色のスライム玉が御互いを食い合うようにして寄り集まり、グニョグニョと合体して活発に蠢き始めていたの。

 それはあまりにもグロテスクで、あまりにも悍ましい光景だったんだ。

「何なの、あれは?」

 赤黒い巨大な球体に一体化し、空中で活発に蠢く謎の物体。

 個人兵装は油断なく構えているものの、先の攻撃が芳しくない結果になった事から手を出しかねている戦友達。

「ねえ、誰か答えてよ?何が一体どうなってるの!?」

 その何とも言えない居心地の悪さに耐えかねて、思わず叫んでしまった私。

 質問した私が言うのもアレだけど、答えが返ってくるとは思っていなかったんだよね。


 だけど全く期待していなかった質問の答えは、意外な事にハンズフリーイヤホンから聞こえてきたんだ。

『これまでの情報から総合的に判断した所、あの不定形物質は恐らくキメラ細胞です。油断は禁物ですよ、吹田千里准佐。』

「その御声は…東条湖蘭子上級大佐!」

 特捜車から送信された音声のみの無線通信だけど、自ずと背筋がピンッと伸びて返事の声も引き締まってしまうよね。

 何しろ、このスマホの向こうにいらっしゃるのは、本作戦において私達が所属する部隊を指揮しておいでの、特命教導隊御所属の東条湖蘭子上級大佐殿であらせるのだから。

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― 新着の感想 ―
[一言] うぅむ。 意識が消えて細胞そのものにのみ込まれたってところか。 これはこれで厄介な展開ですね。 私だったら瞬間冷凍して動き封じ込めますね。
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